従業員満足度を重視し、急ピッチで店舗展開する「串カツ田中」
- 企業採用成功事例
目次
掲載企業DATA:株式会社ノート
本社所在地 | 東京都渋谷区桜丘町2-9第一カスヤビル |
代表取締役会長 | 貫 啓二 |
設立年月日 | 2006年12月 |
事業内容 | 飲食店の経営、FC開発、プロデュース |
01 「串カツ田中」急成長の要因
正社員からアルバイトスタッフまで、同社の人材採用を担当する伊藤氏
2008年の1号店開業から約6年で都内を中心に70店舗まで拡大した大衆居酒屋「串カツ田中」。その店舗展開のペースにはすさまじいものがある。
「串カツ田中」の看板メニューである串カツは、串打ちしたネタに衣を付けて揚げるシンプルな料理。調理スタッフに専門的な技術が不要という業態が、短期間に多店舗化を可能とした要因だ。
店舗を運営する株式会社ノートは、直営店だけではなく、FC(フランチャイズチェーン)店の展開も早期に導入。業務の標準化とマニュアル化を徹底することで、どの店舗でも、同じクオリティの味やサービスを提供することに成功している。
これらの仕組みを活用し、急成長する同店を支えているのが、接客と調理に従事するアルバイトスタッフたちの存在だ。
02 アルバイト確保につながる自由な職場環境
同店を訪れてまず感じるのが、若いアルバイトスタッフたちの元気の良さである。かしこまりすぎず気取らない接客が、親しみやすい雰囲気を生み出している。
「ありがたいことに、アルバイト採用で苦労している店舗は少ないですね。応募者は大学生やフリーターなど若い人が多いのですが、自由な雰囲気がウケているのか、募集をかければ人が十分集まる状況です」と語るのは、同社総務部の人材採用担当を務める伊藤正弘氏。
自由な職場環境が、活気ある店のムードを作り出している
人手不足の現在、アルバイト採用に苦労している企業が多い飲食店業界にあって、急速な多店舗展開でも人材を確保できているという。その理由を尋ねると、「スタッフにとって楽しく働きやすい職場であることを第一に考え、勤務条件や環境の整備を心がけています。週1日勤務からOKですし、服装に関してもTシャツとエプロンは支給しますが、シューズやボトムス、帽子などは自由です。清潔感がある見た目ならば、髪型や染髪の色にも厳しくなく、ピアスも禁止していません」と伊藤氏。
個性やプライベートの時間を大切にしたい若者には、自由度が高い同店の環境が受け入れられやすいようだ。また、「友達が○○店で働いていて、バイトがとても楽しいと聞いたので応募しました」というように、口コミで集まってくる応募者も多いという。
このような環境づくりの背景には、同社が目指す「従業員満足(ES)⇒顧客満足(CS)⇒売り上げ⇒待遇」のサイクルがある。まずはスタッフが笑顔で働けることが前提であり、その笑顔が顧客に伝わり、「またこのお店に来たい」と思う顧客の満足が売上につながるのだ。売上は利益となり、スタッフの待遇が向上。待遇が良くなると、スタッフのモチベーションもさらに向上するという好循環サイクルだ。
「“シフトが自由”“マニュアル化されていて難しくない”“服装や髪型も自由”といった環境が、アルバイトスタッフたちに働く楽しさを感じる心の余裕を生み出しているのだと思います。その余裕が、心のこもったサービスやおもてなしの接客につながり、さらにはお客さまがリピートしてくれる大きな要因になっているのだと思います」
勤続3年以上ならアルバイトでも海外社員旅行に参加できたり、3カ月ごとに昇給のチャンスがあったりと、人事評価や待遇面でもしっかりと長く働ける環境を整えている。約1年前に正社員登用制度も整備し、すでに4名の実績を生んでいる。
03 スキルとやりがいを向上させる「串カツ検定」
同社では、2013年から「串カツ検定」という社内制度を実施している。これは10種類の串カツを揚げるスピードと、仕上がりの美しさを評価するインセンティブ制度。上から師範、初段、1級~3級と5つの等級があり、それに応じて報酬(5,000円~3万円/月)が支給される仕組みだ。正社員に限らずアルバイトも参加可能で、現在は年に2回実施しているという。各店舗から毎回約50名のスタッフがエントリーして、業務を通じて磨いた腕前を競っている。
「ネタの大きさや衣のレシピ、揚げ時間などは決まっているのですが、串カツの揚げ方マニュアルはありません。こればかりは、先輩から教えてもらうほか、横で見て学ぶしかない。調理経験の有無はあまり関係なく、かえって未経験のほうが早く昇級するケースもあります」
スタッフの技術とモチベーションを向上させる「串カツ検定」
まだ最高位の師範を取得者はいないものの、6名の初段取得者が誕生している(2015年2月現在)。背中に「串職人」の金文字が入ったオリジナルデザインのTシャツがその目印だ。「串カツ検定」は店の味を守ると同時に、スタッフのスキル向上とモチベーションアップにつながっているようだ。
また、接客や店舗運営の教育では、現場でのオペレーションを学ぶ前に、アルバイト初日は座学形式で「串カツ田中」の理念や経営方針などを教えているという。単にオペレーションを覚えれば一人前というのではなく、なんのためにやるのか、どういった目的があるのかなど、行動の意味づけやマインドの部分を強調した指導が特色となっている。
「例えばお客さまをお見送りするのも規則で決まっているから行うのではなく、『自分がお客さんの立場ならお見送りされたらうれしいよね』といった指導を行っています」
04 さらなる店舗展開のため、スタッフ教育を強化
2015年は直営店とFC店を15店舗ずつ出店する計画で、計100店舗まで拡大を目指す「串カツ田中」。その出店ペースはますます加速するばかりだ。
さらなる店舗展開のために、スタッフ教育にも余念がない。まずは、同社の業務の標準化を支える運営マニュアルを見直す。現状、オペレーションごとに写真と文章で説明するスタンダードな分厚いマニュアルブックをすべての店舗に1冊ずつ置いているが、より細かいニュアンスがスタッフに伝わるように、動画を活用した新しいマニュアルの導入を検討中だという。
「完成すれば、レシピや調理の仕方、接客なども含めて、デモンストレーション動画を見るだけで理解できるようになりますので、より効果的かつ効率的なスタッフ教育ができるようになると思います」
加えて、アルバイトを含めた新たな人材教育や研修カリキュラムも構築中だという。アルバイトスタッフを中心とする「人材」こそが最大の経営資源である同社では、成長を支える土台づくりも急ピッチで進んでおり、今後の成果が期待されている。