出前業界のリーディングカンパニー「デリズ」のアルバイト人材育成術 – 株式会社デリズ

  • 企業採用成功事例

掲載企業DATA:株式会社デリズ

株式会社デリズ

本社所在地 福岡県福岡市博多区博多駅南2-18-8
代表取締役社長 井土朋厚
設立年月日 平成14年4月
事業内容 宅配飲食業と、それに付随する出前本の発刊および運営

01 「出前日本一」を目指し、独自の体制確立

人事部 部長 地村圭太氏人事部 部長 地村圭太氏

今までにない独自の出前サービスを創出し、外食産業に新たな風を巻き起こしている会社がある。それが、福岡市博多区に本社を置く株式会社デリズだ。
これまで出前と言えば、ピザやお寿司などの単品が中心だったが、デリズでは、ジャンルの異なる専門店のメニューをまとめたフリーペーパー「出前本」から、各メニューを一括して頼めるようになっている。「電話1本で作り立ての美味しい料理をお届けする」ことにこだわっているため、センターキッチンで一次加工まで済ませた食材を使いながらも、調理は各店舗で直前に行う。配達も原付バイクで20分圏内と限定している。
「鉄板焼肉中洲亭の焼き肉、宮﨑チキン本舗の南蛮から揚げに、全国各地から集めたご当地グルメなど、専門店の本物の味をご自宅へ届けるというのが私たちのコンセプトです」と語るのは人事部部長の地村圭太氏だ。メニューは常時70種類。自社開発はもちろんのこと、自分たちが「美味しい」と思ったお店に協力を依頼し、商品開発担当者が修業に行ってレシピを教えてもらい、自社のメニューに加えていくかたちで徐々に数を増やしてきた。コアターゲットは男女限らず30歳、働き盛りの独身、一人暮らしと想定している。
デリバリーを始めた当初は博多中心だったが、2011年5月には東京進出を実現。現在、博多と東京合わせて13店舗、今後2018年までには200店舗まで拡大する方針だ。

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02 採用のポイントは、経営方針に共感できるか

現在、デリズの正社員は32名。各店舗には1~3名の社員を配置し、15~20名のアルバイトが所属する。職種は「メイク」と呼ばれる調理担当、配達を担当する「デリバリー」、そして、配達や調理時間を調整する「コントローラー」の3つ。アルバイトは最初「メイク」か「デリバリー」を担当し、熟練度次第で「コントローラー」へ昇格もできるようになっている。
地村氏は「実際にお客様のご自宅の玄関まで届けるのはアルバイト。それだけにアルバイトのクオリティーが、当社のイメージを決定づけるほど大切なものととらえています」と語る。
他の外食チェーンなら「あそこは美味しい」となれば、その評判は全国に自然に広がっていく。しかし、デリバリーはなかなか口コミが起こりにくい。博多で美味しいと評判でも、それは遠く離れた東京とは関係ない。「一つひとつの商圏が一本勝負の業界。一人ひとりのお客様から確実に信頼を得ていくためにも、アルバイトの顧客志向が非常に重要です」

「販促力、商品開発力、採用力をアップさせ、圧倒的な差で出前日本一を目指す」と地村さん「販促力、商品開発力、採用力をアップさせ、圧倒的な差で出前日本一を目指す」と地村さん

そのため、アルバイトの採用においては面接の時点で、同社の経営方針に共感できるかどうかのすり合わせを徹底して行う。
「デリズの経営理念は『相互成長』。一人ひとりが自ら起点となり、社会貢献をしていこうと考えています。したがって、アルバイトの面接でも、どんな条件を求めているかといった話ももちろんしますが、それ以外に何のために働くと考えているのか、どんな風に仕事というものをとらえているかを聞き出すようにしています」
アルバイトの目的の大半は生活やお金のためという人が多く、「何のために働くか」などそれまでは考えたこともない人が多いかもしれない。中には「なぜそんなことまで聞かれるのか」と言ってくる人もいるそうだ。それでも、こちらからの聞き方ひとつで、「人のために役に立つことをしてみたい」という気持ちがあるかどうかは引き出せるという。
「面接で線引きをするので、本当にお金のためだけにアルバイトをしたいと思っている人は入らないし、入ってもすぐに辞めていきます。反対に、当社の考え方に共感してくれた人は長く働いてくれます」

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03 約100時間の研修をアルバイトにも実施

「デリバリー」をはじめ、アルバイトは店の顔。社員は深い愛情を注いで育てる「デリバリー」をはじめ、アルバイトは店の顔。社員は深い愛情を注いで育てる

 アルバイトにもデリズの看板を背負って働いているのだという意識を持ってもらうため、入社するとまず経営理念などを学ぶ座学研修を行う。とはいえ、誰かが入社するたびに集合研修を実施するほどの余裕はないので、効率も考えて、各店舗で動画を使用した研修を行っている。動画で社長や人事担当者からのメッセージを伝え、店長がそれをもとにアルバイトに声をかけ、意志や感想を確認するというスタイルになっている。
その上で、現場でのOJTを行う。「メイク」も「デリバリー」も最初は先輩について仕事を覚え、ある程度理解が深まったら今度は先輩に後ろについてもらって指導を受ける。「デリバリー」に関しては、原付バイクでの配達になるので、安全運転講習も年に数回実施している。
「先輩や社員によるOJT研修を延べ100時間ほど受けてもらって、ようやく独り立ちというとらえかたです」
特に「デリバリー」担当は、彼らの対応ぶりでその地域での評判が決まってしまう。だが独り立ちしてしまえば、各自の配達プロセスやお客様に対する接客の様子を誰も見ていない状況になる。
「だから、アルバイトでもセルフマネジメント力が必要なんです。どこまで利他的になれるか、そのモチベーション、気持ちの在り方を育てていくためにもやはり100時間の研修は必要なんですよね」
デリズでは、アルバイトがセルフマネジメントできているかをチェックするため、勤務時間内に何件配達にまわり、オーダーのない時間帯に何枚チラシをポスティングできたか、数字で把握するようにしている。
「できていないからといって叱ることはありません。ただ、数字を見て努力不足を感じるアルバイトに対しては、どうしたらできるようになるか、親身に相談にのり、適切なアドバイスや指導を行うようにしています」

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04 社員の姿がそのままアルバイト教育に

さらに地村氏は「アルバイトは社員の姿を見て育つ。だからこそ、重要なのは社員教育だ」と語る。「社員自身が“やらされ感”ではなく、“出前文化を自分たちで作り上げていく”という意志のもと働いている。その姿を見て、アルバイトは最初は不思議に思うようですが、それがある時から憧れになり、自分も頑張って社員のようになりたいという気持ちになってくれるんですよね。実際、この数カ月の間でもアルバイトから社員になった人が3名います。しかも、自分たちの方から申し出てくれて。それは本当にうれしかったです」
社員にセルフモチベーション、セルフマネジメント力を持ってもらうためには、会社の理念「相互成長」と、社員個人のビジョンをいかにリンクさせるかが重要になってくる。そこで同社では毎年4月、新入社員を集めて福岡の彦山で7日間、集合研修を実施。そこで徹底的に各自が自身を内観しながら会社の経営理念に合致した目標、ビジョンを見出していく。
「営業理念として“元喜連鎖”を掲げているのですが、社員のモチベーションは確実にアルバイトに連鎖していきます。だからこそ最初にまず経営理念の共有を社員に徹底させる研修を実施しているわけです」
その効果は高く、例えば店長になった社員は、店と共に自分自身を成長させていこうという意識を持つ。その結果、アルバイトに対しても深い愛情と責任を持って対応するようになっていくという。
「褒めるのも叱るのも、愛情を持ってするかどうかで受け止め方も違ってきます。ですから、当社社員はその人のことを思って叱る時は叱るし、褒める時は心から褒める。そういう日々があるせいか、どの店舗も社員・アルバイト関係なく仲が良く、互いを支え合いながら業務を遂行してくれています」
また、社員を通じてアルバイトが経営理念を共有してくれるようになった瞬間、そのアルバイトは想像以上の力を発揮するようになる。その変化もまた楽しみの一つだと地村氏は語る。
「ある店舗で、わりと家に閉じこもりがちだった20代の男性が、うちへ面接に来たんです。女性店長と面接し、「ここだったら頑張れそう」と思ってくれたみたいで、アルバイトとして入社しました。その後、日々スタッフと接し、会話する中で、何のために働くのかということを考えるようになっていきました。さらに、当社では現在『デリズお茶碗一杯プロジェクト』という、お客様の注文1件につき、お茶碗1杯分のお米をカンボジアの恵まれない子どもたちに寄付する活動を行っているのですが、その活動にすごく共感し、「自分は発展途上国の貧困をなくすために働きたい」と、自分なりの目標を持って仕事に取り組むようになっていきました。その思考の転換に驚かされたのと同時に、彼をそういう気持ちにさせたのは、やはりまわりのスタッフの日々の姿勢、気持ちだったんだと思います」

「今後はうちで働くメリットをアルバイトにもより強く打ち出していきたい」「今後はうちで働くメリットをアルバイトにもより強く打ち出していきたい」

 現在は社員向けに、デリズ社内大学をはじめ、コミュニティターニング、プロセス尺度報酬制度、チャレンジ目標制度を設けているが、近い将来、アルバイトに対しても、デリズで働くことにメリットを感じてもらえるような制度を確立していきたいと地村氏は言う。
「正直、まだまだ課題の多い会社です。だからこそ、職場としてのメリットをもっと特徴づけ、アピールしていくことで、スタッフ全員のクオリティーの向上につなげたい。それが当社そのものの存在価値であり、今後のカギになっていくことは間違いないですから」

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