「人材確保を目指したオンリーワン戦略が離職防止を導き出す」 – 株式会社 三光マーケティングフーズ

  • 企業採用成功事例

掲載企業DATA:株式会社 三光マーケティングフーズ

本社所在地 〒163-0825 東京都新宿区西新宿二丁目4番1号 新宿NSビル25階
設立 昭和52年4月(創業 昭和50年9月)
資本金 23億9千万円(平成19年6月30日現在)
従業員数 正社員人数545名(平成19年6月30日現在)
年商  247億円(平成19年6月30日現在)
事業内容   飲食店舗の運営・東方見聞録・月の雫・黄金の蔵・電撃ホルモン etc.

01 イントロダクション

近年、企業にとって大きな懸案事項となっているのが、早期離職率の高まり。文部科学省のデータによると、大卒新入社員の約3割は入社3年以内で退職しているという。その一方で採用市場は激化しており、「社員を1人採用するためにかかるコストが増加している」と感じる企業が多くなっているようだ。
この2つの問題点をクリアするために『オンリーワン戦略』を打ち出し、企業と求職者のマッチング率を高めているのが「東方見聞録」や「月の雫」などの飲食店チェーンで知られ、今夏からは新業態「電撃ホルモン」をスタートさせた株式会社三光マーケティングフーズ(以下、三光マーケティングフーズ)だ。では、そのオンリーワン戦略の狙い、内容とは、何なのだろうか。

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02 新人採用で実施したオンリーワン戦略とは?

研修は、ただ話を聞くだけではない実践的な内容

2008年度採用から開始したオンリーワン戦略について、三光マーケティングフーズ営業推進部人財開発チームマネージャーの向山幸代さんに具体的な内容をうかがってみた。
「新卒採用の一次選考という場面では、ほとんどの企業はグループで面談することが多いと思うのですが、私どもは一次選考からリクルーターがマンツーマンで対応しています。その場で、しっかりと会話をすることで会社への理解を深めてもらい、意欲がある方に対しては入社後のキャリアプランについて説明することもあります。だから、1人につき1時間くらい、長くなると1時間半も話していることがあります」

二次選考においても応募者の希望に合わせて、エリアマネージャーや調理SV(スーパーバイザー)に同席してもらい、実体験に基づいた具体的な業務内容について説明。ここでは、会社の良い部分も悪い部分もすべて包み隠さず話すことで、入社してからのギャップを感じることがないように配慮している。また、同席するエリアマネージャーも応募者の性格に合わせて選ぶ念の入れようだ。
「エリアマネージャーにもいろんなタイプがあって、どんどん仕事を与えてスパルタで教育する者もいれば、ゆっくりと着実に教えていく者もいます。一般的に、人間関係が理由で会社を辞めてしまう方が多いので、応募者の個性が生きるようなマッチングを常に心掛けています」

こうした努力の結果、昨年度の新卒者採用では、一次選考から二次選考に進んだ応募者のなかで辞退をしたのはわずか5%。95%の応募者は二次選考に参加している。最終的に内定が出た応募者が入社する割合も向上しており、一昨年にくらべると、劇的に辞退者数が減少することとなった。

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03 戦略は中途採用、アルバイト採用へと拡大する

三光マーケティングフーズ 営業推進部 人財開発チーム マネージャー 向山 幸代氏

そもそもは新卒者採用において、他社と同じことをしていては優秀な人材を確保するのが難しいのではないかという想いから始めたオンリーワン戦略。この動きは中途採用やアルバイト採用にも広がりを見せている。
「私もこの会社に中途入社で入ったのですが、転職活動の際に感じたのは、面接に行っても、きちんと会社の理念を説明してくれる企業は少ないということです。会社の方向性もわからないまま面接を受けることに対して、すごく違和感がありました。そこで弊社では、中途採用者に対してもしっかりと話をするようにしたのです。」

この応募者重視の考え方は二次選考でも変わらず、同じ飲食業界からの転職組、他業種からの転職組など応募者とバックボーンが似ているエリアマネージャーを呼んで面接をすることが多いという。
そして、アルバイト募集に関しても応募者重視の姿勢に揺るぎはない。
「募集要項については、各店舗の特徴をアピールしたり、曜日や時間など、求めている条件をピンポイントで出すことでマッチング率を高めるように努めています。それから、面接の前日には、店舗のほうから応募者に電話をしてスケジュールを確認することでキャンセルされるケースがかなり減少しました」

さらに、これまですべて本部で手配していた求人広告も、各店舗の店長にも関わってもらい、原稿や写真について積極的に意見をもらっている。
「それまでバラバラだった本部と現場をつなぎ、各店舗の想いを募集記事のメッセージに込めてもらうことで、アルバイト採用に対する店長の意識が格段に高まりました。やはり、自分のアイデアや言葉を使っているだけに、応募者の数が増えて良い結果が出たらうれしいですからね。並行して、求人広告を出すにはこれだけの費用が掛かっているのだということも伝えています。そうすることで、採用に対する責任感を強く抱いてもらえるようになりました。アルバイトの定着率が上がっていますし、面接ブッキング1人に対する単価もかなり下がってきましたね。良いスパイラルにはいってきていますよ!」

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04 離職防止の取組みも好調に転化

スタッフの意欲の高さも、精力的な新規出店を可能にする理由の一つなのかもしれない

新卒採用者とじっくり時間をかけて向き合い、話をするオンリーワン戦略は、離職防止にも一役かっている。一般的に、入社後の研修を終えると、新卒者とリクルーターは顔を合わせる機会が少なくなるのだが、いまだに相談を受けることが多いという。
「現場で毎日、顔を合わせている上司には言いづらいことでも、入社前から顔見知りで、少し離れた立場にいるリクルーターには話せることもあると思うのです。それから、本部の人間が直接、店舗に出向いて、仕込みの手伝いをしながら話を聞くこともあります。そんな、新入社員の不安やちょっとした愚痴を聞いてあげられる環境が整備されていることも、離職率の低下に役立っていると感じています」

新卒採用者と、ほぼ変わらないケアをして採用に至った中途採用者も、この半年間の離職率は10%未満。
また、新人アルバイトに対しては、教育担当を常に付けている。
「1日5分で良いので会話をするように奨励しています。『今日、どうだった?』の一言でも良いのです。一番、大切なのはコミュニケーションですからね」

その一方で、人材育成のため開いている「階層別研修」という教育の場も、離職を防ぐことに寄与している。三光マーティングフーズでは今後も教育に力を入れる予定であり、4月からは新たに「三光塾」という教育・スキルアップの場をスタートさせるという。
「以前は、自分に足りないスキルは何なのか。どうしたら店長になれるのか。あいまいなままだったのですが、しっかりとした教育の場を提供することで、昇格するために必要な技術やノウハウを明確にし、入社後も具体的な目標を立てられるようにしています。
それと同時に、独立を目指す社員に対しての講義も行って、社員のモチベーション維持に役立てたいと考えています。今後は、アルバイトから正社員に登用する人数を増やしていきたいので、アルバイト専用のセミナーも行っていきたいですね」

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05 「オンリーワン戦略」と「離職防止」が連関する

オンリーワン戦略はかなりの時間と手間をかけて行われているのだが、実施するにあたり、反対の声は聞かれなかった。「以前は、人材を採用して教育するためのシステムができていなかったのです。面接も人財開発チームのなかでスケジュールが空いている者が担当するという感じ。その後も、営業部長のスケジュール次第で、二次選考が先延ばしになることもあり、スピード感にも欠けていました。思うように人材を集めることができなかった過去を歩んできたので、現場のエリアマネージャーに二次選考に来てほしいとお願いすれば、『良い人材を集めるためなら、構わないよ』と、忙しい仕事の合間を縫って駆けつけてくれました。今では、仕組みができたことを歓迎してくれています」

このように新人採用と離職防止において成功を収めることができたのは、「企業と求職者のマッチングを高めるために、どうすれば良いのか」という課題に対して、知恵と工夫を惜しまない真摯な気持ちがあったからではないだろうか。
「私どもは採用に対して“本気”ですし、そういう気持ちがなかったら、中途半端に採用者の人生に関わってはいけないと考えています。だから、その場しのぎで頭数を増やすというのではなく、入社してからどのようにして個人と会社のお互いが成長していけるのかを考えています」

そして、もうひとつ。インタビューのなかで、向山さんは“どれだけ多くの人を巻き込めるか”が、人財開発チームの腕の見せどころと語った。社員採用に現場スタッフを巻き込み、アルバイト採用に各店舗の店長を巻き込んだ向山さん。顔を合わせ、言葉を交わし、意見をぶつけ合うことで育まれていったコミュニケーションが良い効果をもたらしていることを見逃してはならない。オンリーワン戦略から生まれた社内のコミュニケーションは、こうして離職防止へとつながっているのだ。

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