「ES」向上がもたらした、その先にあるもの – 株式会社ルミネ
- 企業採用成功事例
目次
掲載企業DATA:株式会社ルミネ
設立 | 昭和41年5月21日(合併期日:平成3年4月1日 立川は平成4年4月1日 荻窪は平成15年4月1日 ルミネエストは平成18年4月1日) |
資本金 | 23億7,520万円 |
所在地 | 〒151-0053 東京都渋谷区代々木2丁目2番2号 JR東日本本社ビル10階 |
TEL | 03-5334-0550(代表) |
主な事業内容 | ショッピングセンター事業の管理及び運営 |
売上高 | 2,519億円(平成18年度) |
従業員数 | 334名(平成19年4月1日現在) |
Intro 人材不足を克服するために
アパレル業界が長年抱える課題が「人材不足」です。とくに、お客さまと直接対面する販売スタッフは、売上げはもとより、ブランドイメージをも左右する重要な存在。それだけに、いかにいい人材を集め、離職防止を行っていくかは、企業の命題でもあります。
そんな中、大手ディベロッパーの株式会社ルミネ(以下、ルミネ)では「ES」(Employee Satisfaction=従業員満足)という考え方をベースとしたさまざまな施策を行い、人材の育成や確保に大きな効果を上げています。そして、その向上こそが結果として、同社がもっとも重要視する「CS」(CustomerSatisfaction=顧客満足)の向上につながっている、と言います。
では、そのESとはどのようなものなのか。また、それがどのようにCSへと結びついていくのか。具体的な施策を例に挙げながら、紹介していきましょう。
01 ESの向上は、CSの向上につながっている
株式会社ルミネ 営業推進グループ 折戸三沙氏
先述したように、アパレル業界、とりわけ販売職の人材不足は、ルミネが直面した問題でもあります。実際に、そういった不安の声は、ショップ(ルミネのテナント)からも、その先の本部からも聞こえてきました。
「ならば、ディベロッパーとして何かできないか…。店舗を運営していく大切なパートナーであるショップスタッフの、より良い人材の確保が、人は価値を生む存在であるとの理念を持つルミネの役割と考えました」
そして、その具体策の基本となったのが、~ the Life Value Presenter ~〈お客さまの思いの先をよみ、期待の先をみたす。〉というルミネの経営理念。これはまさに、CSの実践ということですが、その実現には顧客と接する「人」、つまりは販売スタッフを重要視しなくてはいけません。そこに、ESの向上という発想が生まれた、とルミネは説明します。
「つまりは、CSの向上を目指すには、ESの向上は不可欠ということです。ブランドが持つ世界観も、ショップが持つこだわりや魅力も、そういった価値は、お客さまに直接伝える人が生み出す、と言っていい。ならば、働く人たちが力を十二分発揮できる職場環境の整備をハードとソフトの両面でやっていこう、ということなんです。
02 より働きやすく、進化するスタッフ設備
公園かと見まがう緑化された屋上もスタッフ専用
フットマッサージも備える女性専用のリラックスルーム
では、ESの向上とは、具体的にどういうものなのか。まずはそのハード面ですが、たとえば屋上緑化。ルミネ横浜店や北千住店、新宿店の屋上には、植物を数多く配した開放的なスペースが広がっています。これは、一般の顧客が利用するのではなく、あくまでスタッフ専用の憩いの空間。ベンチやテーブルセットも置かれています。
また、スタッフ専用レストランの充実にも目を見張ります。ビュッフェスタイルを導入した大宮店、立川店では、1グラム=1円というユニークな価格を設定。メニューの豊富さも人気を呼んでいます。また、女性専用の休憩室を設置した横浜店には、横になれるソファやフットマッサージ機を設置。新宿店のパウダールームでは、メーク直しはもちろん、歯磨き専用の洗面台までもが用意されています。
「女性専用の休憩室では、お化粧して、ときにフットマッサージでリラックスをして。そしてまた現場に向かうというスイッチを切り替え、いわばチェンジルームの役割を担っています。また、違うショップ同士の交流の場になっているという側面もあります。お客さまの反応や好み、人気の品揃えなど、他店の様子は気になりますが、業務中に行き来はできません。こういう場で、お互いが情報交換し、刺激をし合っているようです」
このようなスタッフ用の設備、スペースは年々、各館でその拡充が進んでいますが、ここで見逃せないのは、それらがショップスタッフの声を吸い上げて実現しているということ。館内に置かれている「スタッフの声」BOXもそのひとつ。
また、日々のショップスタッフとのコミュニケーションからES向上のための要望をくみとり実現につなげています。
03 スタッフの育成がESとCSの向上をシンクロさせる
ESのハード面が館内の設備の充実ならば、ソフト面はスタッフという人材の育成システムと言えます。そのひとつが、ルミネに配属されるショップスタッフ向けに必ず行っている「入店前研修」。
多い館では週3回、ルミネ全体では年1000回を超えるとか。販売員はこれを受けないと名札、入館証がもらえません。ルミネの理念、接客の基本的スキル、館内ルールなど、5時間の研修を行いますが、いわゆる紋切り型の研修ではないのが特徴。顧客から寄せられた意見、感想を事例に、より具体的かつ実践的な内容となっています。そういった研修の企画を担当している、同社営業部・営業推進グループの折戸三沙さんはこう語ります。
「本来、接客などはショップ独自に行うものと思われがちですが、5時間もの時間を研修にかけることは、なかなかできないのが実情。逆に、ルミネに配属すれば、基本的なことがしっかり身に付くと、ショップさんから声があがるほど。それから、笑顔の重要性を知ってもらうために、研修では小さな班に分けて、その中でもっとも笑顔の素敵だった人にニコニコマークを進呈しています。私たちはそれを〈ルミネストの卵〉賞と呼んでいるのですが、ショップの店長さんたちは、自分のところの新人スタッフさんたちに、必ず取ってこいとハッパをかけたりするそうです(笑)」
さて、ここで折戸さんの説明に出てきた「ルミネスト」。実はこれ、ルミネのショップスタッフにとっての大きな関心事であり、高いモチベーションにもなっています。ルミネストとは、ルミネ各店での日常的な接客活動をベースに、接客ロールプレイングコンテストで優秀な成績を残したスタッフに贈られる称号。まさにルミネ理念を体現する存在。これを手にしたスタッフは、真のプロとしてのプライドやステータスを得ることになるわけですが、それについては、次でさらに深く見ていきましょう。
04 人が価値を生むことを証明したルミネスト
取り組みは内外で広く共有される。ブロンズ以上の受賞者には専用のネームプレート(写真中央)が送られる
2005年からスタートした「ルミネスト認定制度」。2008年2月現在で2万8000人を数えるスタッフの中から、ルミネ各店で実施される予選会、店大会、ルミネ全店で実施される決勝大会を通じて、接客の優秀スタッフルミネストゴールド・シルバー・ブロンズが、毎年約100名選出されます。
「決勝大会は、持ち時間が5分前後の接客ロールプレイングで評価をします。接客の基本はもちろん、お客様のニーズを引き出し、トータルコーディネート提案が出来ているかに重点を置いています。この大会のための演技ではとりつくろえません。日頃から質の高い接客を実践していないと、大会では発揮できないんですね」(前出・折戸さん)
また、ルミネストの存在は、多方面に良い影響を与えると言います。顧客の声を分析すると、評価の高いショップのうち、その25%は、ルミネストが在籍している店だったというデータもあります。また、ショップ側もルミネストを自分の店から輩出しようと、よりいい人材をルミネに配属させる、といった傾向もあるとか。
「ルミネストがいることで、そのショップ全体の意識も変わり、フロアが変わる。あのショップではこうしている、ウチもこうしよう。刺激と活性化ですね。そしてルミネ全体も変わっていく。実は私たちもルミネストの方々の意識や行動から、営業のヒントをもらっているんです」(前出・折戸さん)
では、ルミネストという発想はどうして生まれのたのでしょうか。
「お客様に商品の良さや価値を伝えていくのは、やはりショップの販売の人たち。そんな人たちのモチベーションを高め、自分の仕事や職場にプライドを持ち、そしてその称号がステータスや自信になっていく。そういう意味で生まれたルミネストは、結果的にルミネ全体を向上させていく、大きな効果があったのだと思います」(前出・折戸さん)
まとめ
ルミネは現在、8期連続増収増益を続けています。流通業界では奇跡と言われるこの数字、それは8年前の同社の転換期である「経営計画を策定し、CSをベースとした大改革に着手した年」と重なります。
そんなCSの追求は、ESの追求なしにはなし得なかった、とも言えるでしょう。人材不足を働く人たちの満足度アップによって解決していく。そのためにディベロッパーとして、ショップをサポートしていく。そのさまざまな施策こそが、ルミネの成長を支え、また人材不足を課題とするさまざまな業界、企業の大きなヒントにもなっています。
ルミネのロゴの上に、顧客に向けたコーポレートメッセージが書かれてあります。
〈わたしらしくをあたらしく〉。これはそのまま、自分たちにも向けられていると、ルミネで働くスタッフはよく感じると言います。ルミネで働くことで、新しい自分を発見する、人生の新しい価値を見出すことができるのだ、と…。