ゲーム要素でスタッフのやる気倍増!“ゲーミフィケーション”活用法

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近年、ディズニーでおなじみのオリエンタルランドや、ANAなどの大手企業が積極的に取り入れている“ゲーミフィケーション”。スタッフが楽しく働ける手法として、熱い注目を集めています。「実は、大企業よりも若手アルバイトスタッフが多い小規模の店舗こそ、ゲーミフィケーションを活用しやすいんです」と教えてくれたのは書籍『ゲームの力が会社を変える』の著者・岡村健右さん。その理由とは!? そもそも、ゲーミフィケーションとは何かということから解説していただきます。

“ゲーミフィケーション”って何だろう?

ゲーミフィケーションは、やる気を引き出すのに効果的な手法です

ゲーミフィケーションは、やる気を引き出すのに効果的な手法です。

一般的な「ゲーミフィケーション」の定義とは、ゲーム以外の分野に“ゲーム的要素”を組み込んで、ユーザーのモチベーションや愛好心を高める手法のことです。

ゲームの世界では、ミッションをクリアしたり、敵を倒したりすることで、キャラクターのレベルが上がり、新しいスキルを得ることができます。こうした経験から、プレイヤーは自分の成長や進歩を実感して、やりがいや達成感を得られるというわけです。

そもそも人間は、何かを学んだり、習得したりしたいという欲求を持っています。ついついゲームにハマってしまうのも、その欲求によるものです。

以上のような“ゲーム的要素”をビジネスに活用することで、スタッフのやる気を引き出し、やりがいを感じてもらおうというのが、働く現場でのゲーミフィケーション。笑顔があふれる職場にしたい、モチベーションを高く持ってもらいたいと考える店長にオススメの手法です。

実は昔から活用されてきたゲーミフィケーション

近年、企業からの注目が集まっているゲーミフィケーションですが、実はまったく新しい概念というわけではありません。これまでにも、ゲーミフィケーションを積極的にビジネスに取り入れてきた職場は数多くあります。最もポピュラーなのは営業職です。

 

営業職向けにゲーミフィケーションを活用した事例

売上をグラフ化する : スタッフの達成度や伸び率を“見える化”する
売上をランキング形式で壁に張り出す : スタッフ同士が競い合いながら、トップを目指す
成果連動型の給料体系 : 受注や売上と連動して報奨金を得られる
表彰制度を導入する : すぐれた働きをしたスタッフを一同の前で評価し、賞賛する

このように、報奨を受け取ったり、他者と競ったり、他者から評価されたりすることで営業担当者のやる気を引き出していたんですね。もしかしたら、みなさんのお店や会社でも、意識せずに“ゲーム要素”を活用しているかもしれません。例えば……、

ゲーミフィケーション活用例

サンクスカード制度 : スタッフが他のスタッフに向けて「ありがとう」の気持ちを伝える。
活用例)1週間で最もお世話になったスタッフにカードやギフトを渡す。
ポイント制度 : 頑張ったスタッフにポイントを贈呈する。 活用例)ポイントが貯まることでボーナスが出たり、昇進できる。
コンテスト制度 : 課題解決を目的に、社内でアイデアを募集する。
活用例)コスト削減を目指し、発案するごとに200円。さらに、実際に削減できればカットできた経費の20%をボーナスとして渡す。

いずれも、スタッフのやる気を引き出す制度として、おなじみのものです。こうしたゲーミフィケーションが、近年になって再び注目されることになった理由は2つあります。

今、改めて注目されている2つの理由

SNSがスタッフの承認の場として機能します

SNSがスタッフの承認の場として機能します

1つ目は、企業が今までより従業員満足度を高める必要が生じてきたこと。アルバイト市場でも、やりがいや達成感を求める層が増えていますね。企業や店舗はこうしたニーズに応えるために、ゲーミフィケーションに期待を寄せています。

2つ目はSNSなどのソーシャルメディアの流行です。これによって、従業員満足度を高める上で欠かせない「承認欲求を満たす」ということが手軽に行えるようになったのです。近年大ヒットしている「ソーシャルゲーム」を例にご説明しましょう。

ソーシャルゲームでは、ユーザーが自分の活躍を多くの人に見てもらえるようになりました。さらに、チームプレイでクリアを目指すため、ユーザー同士の交流も生まれ、ゲームの世界が自分の行動に対して賞賛やフィードバックがもらえる「承認の場」になったのです。

この仕組みは、ビジネスの現場でも活用できます。例えば、社内SNSやFacebookのグループで、店長がスタッフを褒めたりスタッフが仕事の成果を発信したりすることで、活躍を“見える化”します。それに対して、他のスタッフが「いいね!」を押したりコメントしたりして、気軽に賞賛やフィードバックを行うのです。

こうした取り組みを行っていくと、店舗や社内に気軽に褒めあう文化が根付き、店舗や会社がスタッフにとっての「自分を認めてくれる心地いい場所」へと変わるのです。

 ゲーミフィケーションの導入方法

では、具体的なゲーミフィケーションの導入方法を見ていきましょう。中心となるのは、「課題」「報酬」「交流」からなる3つのステップです。

ゲーミフィケーション導入の3ステップ

1)「課題」を考える
ゲームにも「魔王が支配する世界を、人の手に取り戻したい」などの課題があるように、まずは、導入の理由をはっきりさせます。会社の経営理念やビジョン、店舗が目指す理想や目標にそった課題を考えてみましょう!
課題の例)
・ 従業員満足度を向上させたい
・ スタッフのモチベーションを上げたい
・ サービスの質を向上させたい

2)「報酬」を決める
ゲーム世界で敵を倒すと「レベルアップする」などの“ご褒美”にあたる部分です。
(1)で見つけた課題を、みんなでクリアするために報酬を設定しましょう。
金銭的なもの以外に、下記のような心理的な報酬も効果的です。
心理的報酬例)
・ ほかのスタッフたちの前で評価したり表彰したりする
・ 専門的な研修を用意するなど

3)「交流」の場を作る
ソーシャルゲームの「協力プレイ」や「コメント機能」にあたる部分です。

FacebookやTwitter、LINEのグループといったSNS、社内ネットワークなどを使って、スタッフ全員が交流できる場所を作ります。全員が積極的に参加することが、ゲーミフィケーションを成功させる絶対条件。
フットワークの軽い少人数店舗こそ運用しやすいのです。
ソーシャルメディアの活用例)
・ スタッフが仕事の成果を発信し、それについて互いに褒めあったり意見を交換したりする

具体的な「課題」「報酬」「交流」の設定事例

ここで「課題」「報酬」「交流」の具体的な設定事例と、スタッフにもたらす心理効果を見てみましょう。例えば「接客の質を向上させたい」という「課題」であれば、「報酬」と「交流」はこんな風に設計することができます。

課題:サービスの質を向上させたい!

・報酬例:
毎月、お客様アンケートで最も高評価だったスタッフに、昇進につながるバッジを贈呈。加えて、SNSグループ内でも発表。
(接客を頑張れば、昇進するチャンスになる! みんなの前で褒めてもらえる!)
・交流例:
SNSグループ内で接客のコツ、うまくいった事例などを共有する。
(自分が学んだことが他のスタッフの役に立ってうれしい)
投稿に対してコメントなどのフィードバックがもらえる。
(学んでよかった、もっと勉強しよう!)

顧客サービスの向上を目指すなら、アルバイトスタッフに一定の裁量を与えるのも「報酬」として有効です。これは、居酒屋「塚田農場」などを運営するエー・ピーカンパニーが、スタッフに客単価4,000円の1割にあたる400円分を無料でサービスできる権限を与えています。また、料理レシピ投稿サイト「クックパッド」で、レシピを参考に料理を作ったことを報告する「つくれぽ」が、レシピ投稿者の大きなモチベーションとなるように、他者からの賞賛やフィードバックも心理的な報酬になります。「認められたい」という気持ちが人一倍強いともいわれる若者層には、より効果的かもしれません。

スタッフのモチベーションアップにつながるなら、どんなものでも報酬になりえます。どんな報酬を設定するかは、店長の腕の見せ所といえるでしょう。まずは、クリアすべき「課題」に合致した「報酬」を設定する。そして、褒められたりフィードバックをもらえたりする「交流」を通すことで、スタッフのチャレンジ精神はますます高まっていきます。「課題」「報酬」「交流」が循環していくと、新たな「課題」が見えてくるはずです。

ゲーミフィケーション運用は“長い目で”

継続して運用することが大切です

継続して運用することが大切です

ゲーム的要素とソーシャル的な要素が組み合わさったことで、職場はやりがいや達成感を得られる場であると同時に、スタッフ一人ひとりが主人公として活躍を認められ、褒められる場となります。その結果、主体的な行動の促進やモチベーションアップにつながっていきます。

ただし、ゲーミフィケーション運用の効果は、長い目で見る必要があります。いい循環を生む仕組みづくりには時間がかかるため、継続することが大切です。でも、スタッフ一人ひとりが「みんなに認められている」「みんなが自分を必要としてくれる」と実感できれば、職場の雰囲気がぐっとよくなっていくはずです。

すでに述べた通り、ゲーミフィケーションはSNSを使い慣れた若い世代のスタッフにはなじみやすい手法です。また、全員のソーシャル参加が必須ですから、少人数のほうが導入のハードルが低い手法でもあります。コンビニ、飲食店など、若いスタッフを抱える店舗はぜひ、試してみてください。

ループス・コミュニケーションズコンサルタント 岡村健右

岡村 健右 / Kensuke Okamura
ループス・コミュニケーションズコンサルタント
1975 年大阪府生まれ。SEとしてグループウェア開発などに携わり、2007年よりループス・コミュニケーションズにてソーシャルメディア全般のコンサルティングを担当。Facebook、Twitter だけでなく、ソーシャルゲームのアナリストも担当。共著に『ソーシャルメディア・ダイナミクス』(毎日コミュニケーションズ)、『ゲーム産業白書Decade』(メディアクリエイト)などもある。

ループス・コミュニケーションズ
http://looops.net

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