DiSC理論から見る、4タイプの部下を上手に育てる方法

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 前回はリーダー育成の大切なポイントとして「部下を観察し、自分との違いを認め、その部下に合わせた育成を行う」ことの大切さをお伝えしました。今回は部下を分析する際の枠組みとして効果的な「DiSC理論」についてご説明致します。

今回はさっそく、動機欲求に基づく行動パターンをもとに人をタイプ分けするDiSC理論についてご説明したいと思います。そもそもDiSC理論とは、1920年代に心理学者ウィリアム・M・マーストン博士により提唱され、1963年、行動科学者ジョン・ガイヤー博士により、自己分析のツールとして応用されたものです。この理論を用いた人材育成ツールは、全世界84カ国で4500万人以上の利用実績があり、「行動特性分析」のグローバルスタンダードというべき存在になっています。

DiSC理論ではこの人間の行動傾向を「D、i、S、C」すなわち、「D」=主導型、「i」=感化型、「S」=安定型、「C」=慎重型の4パターンに分類します。自分や他者がどのパターンであるのかを理解し、自分と他者の違いを把握することで、意志疎通をより円滑に行えるようになります。リーダー候補者のタイプをこの4パターンに沿って考えることで、より適切な対応を取れるようになるのです。

それではここから、それぞれのタイプについてご説明していきます。

(1)D=主導型(Dominance)タイプ

(1)D=主導型(Dominance)タイプ

からコントロールされることを嫌がり、自分で仕切りたがる傾向があります。意思決定が速く、自分なりのやり方で結果を出そうとし、人に対して言いたいことをはっきり言います。一方で、ルールや細かいこと、また全体のチームワークにはあまり関心がありません。

【特徴】

・結果を直ちに求める
早く成果を出そうとし、何が必要なのかをすぐに考える。
・行動を起こす
悩んだり考えたりするよりもまず行動を起こす。
・挑戦を受けて立つ
困難、プレッシャーにたじろぐことなく立ち向かおうとする。
・意思決定が速い
買うか買わないか、やるかやらないか、意思決定が速い。
・現状に疑問を投げかける
マニュアル化されたやり方、既存のパッケージを当たり前と考えず、自分のやり方、自己流を主張する。
・権限を求める
ひとの指示を受けることや決裁を受けるのを嫌がり、自分で仕切ろうとする。

【適切な関わり方】

Dタイプのリーダー候補には、チャレンジしたくなるような目標を明示してあげることが重要です。「期待している」ということを伝え、次の大きな仕事へのチャレンジを積極的に促すとやる気が高まります。「成果・結果」に重点を置いてモチベートしていきましょう。

(2)i=感化型(influence)タイプ

(2)i=感化型(influence)タイプ

社交的で人と接することを好みます。感情表現が豊かで、周囲を明るくする力を持っています。その反面、緻密さに欠け、仕事の成果や人に対して厳しさに欠ける傾向があります。

【特徴】

・人と接することを好む
自分から積極的に人と関わろうとする
・周囲を明るくする力を持っている
肯定的で、明るいムードメーカー的存在である。
・表現が感情的である
感情表現が豊かで表現に抑揚もある。
・やる気を起こす環境をつくる
「どうせやるなら楽しくやろう」と人に呼びかけることが得意。
・人を励ます
自ら援助を申し立て、人を喜ばせる。
・楽観的
難しいことでも、安易に引き受けてしまうが、あまり後悔はしない。

【適切な関わり方】

「褒められたい」・「受け容れられたい」という気持ちが特に強いので、気付いたことを言葉に表し、褒めてあげると効果的です。態度・服装など褒める対象は何でもいいです。逆に、存在や働きを無視したり、正確で綿密な業務を求めたり、単調な業務を求めたりするとやる気を失いがちなのでその点に注意しましょう。

前回はリーダー育成の大切なポイントとして「部下を観察し、自分との違いを認め、その部下に合わせた育成を行う」ことの大切さをお伝えしました。今回は部下を分析する際の枠組みとして効果的な「DiSC理論」についてご説明致します。

(3)S=安定型(Steadiness)タイプ(3)S=安定型(Steadiness)タイプ

安定した状況を好み、変化を嫌う傾向があるため、例えば、慣れ親しんだ従来のやり方で成果をあげようとします。そのため、新商品や新企画、新規開拓など「新しいもの」への適応は遅くなりがちです。自ら決断し、行動するという積極性には欠けますが、チームワークを大切にし、協調性があり、人に対してとても協力的です。

【特徴】

・マニュアル化された仕事のやり方をする
慣例・決まり・マニュアルを大切にし、間違いのないやり方を実践する。
・忍耐力がある
同じことでも、飽きることなくコツコツと最後まで粘り強くやり遂げる。
・ロイヤリティがある
任務を遂行するため、言われたことを言われたとおりにやろうとする。
・聞き上手である
相手の立場に立ち、相手を受け容れながら話を聞くことが得意。
・安定した仕事環境で力を発揮する
変化の激しい環境よりも、安定した仕事環境で働くほうが力を発揮する

【適切な関わり方】

安定した環境の中で着実な成果を作っていくことが得意なタイプのため、一気にチャレンジさせることは好ましくありません。そうは言っても育成の中でチャレンジさせることは不可欠。そんな時は、具体的な方法や手順・やり方について親身になって相談する姿勢を見せてあげることが重要です。

(4)C=慎重型(Conscientiousuness)タイプ

(4)C=慎重型(Conscientiousuness)タイプ

人がどう感じているかということよりも、データや資料などの「事実」を重視します。物事を分析的、論理的に考える傾向があり、納得するまで細部にもこだわります。自分が考えたやり方や組み立てなどに批判が加えられることに対して防御的になりがちです。

【特徴】

・細部に注意を払う
少しのミスも許さない。隅々までチェックする。
・正確さをチェックする
データ、資料、数値を駆使して正しさ合理性を追求する。
・衝突に関しては巧妙で間接的なアプローチをする
一方では妥協し、一方では人を介したりして衝突を回避しようとする。
・状況や活動に対して系統的、一貫性のあるアプローチをする
一見して複雑な状況に対しても論理性、一貫性を見出して整理します。
・賛否両論をじっくりはかりにかけ分析検討する
一方の意見を鵜呑みにしたりせず、反論もしっかり検討したうえで結論を出そうとする。

【適切な関わり方】

上司のあなたにたくさん質問をしてきますが、それを反抗と受け取ってはいけません。その部下はあらゆることに対して自分の頭で納得することにこだわっているのです。納得した上で動くというのがその部下の持ち味ですので、あなたは適切な根拠を示しながら指示を出していきましょう。

あなたのチームのリーダー候補はどのタイプでしたか?

そして、あなた自身はどうでしたか?

DiSC理論のこの4タイプに沿って、メンバーのタイプを考えることで、どんな対応をしていくべきかのヒントを得ることができます。ただ、この枠組みを活用するうえで注意していただきたい点があります。一つ目が、「どのタイプが優れていて、どのタイプが劣っているということはない」ということ。二つ目が、「そのタイプ分けはその人の全人格や最適な関わり方を決定するものではない」ということです。「この部下はこういう性格だからこう関わればよい」と決めつけてしまっては却ってコミュニケーションを狭めてしまう可能性があります。あくまで、効率的にタイプ分けする分析ツールであるということを肝に銘じ、その限界を知ったうえで、リーダー候補育成に効果的に活用していただければと思います。

【タイプ別リーダー育成編①まずは部下の持ち味を知る】はコチラ

※DiSCはInscape Publishing社の登録商標です。
日本語版商品開発権・総販売代理権はHRD株式会社が保持しています。

佐藤英郎 / Eiro Sato

アチーブメント取締役 佐藤英郎

研修コンサルタント事業に30年以上携わる。電通、キリンビール、LOUIS VUITTON、ネスレグループをはじめとする大中小200社以上、延べ14万人以上の研修実績を持ち、リーダーシップ理論、ビジネスコーチング、DiSC理論、目標達成スキル等を組み合わせたその指導内容は、多くの企業の信頼を得ている。コーチングの世界では最高タイトルである、国際コーチ連盟「マスター認定コーチ」の一人でもある。

・現実行動マネジメント研究所所長
・日本プロスピーカー協会(JPSA)専務理事
・「DiSC」マスタートレーナー
・国際コーチ連盟(ICF)マスター認定コーチ
・全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント
・HRDシニアコンサルタント
・日本選択理論心理学会 会員 など

著書

2003年:『部下をひきつける 上司の会話術』アーク出版
2004年:『気づく人気づかぬ人』アチーブメント出版
2008年:『エイロー式好かれる人の「超・会話法」』アチーブメント出版
2010年:『プレイングマネジャーのための 新図解コーチング術』アーク出版など

 

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