10~20代の“生活&はたらく”を徹底解剖『若年層白書2012』vol.1/若年層のライフスタイル
- 求職者動向
アルバイトを採用する多くの企業が、主要ターゲットとして注目する若年層。実際、アルバイト率の高い飲食、小売をはじめ幅広い業界で、大学生、フリーターを中心とした若年層のアルバイトが多く雇用されており、重要な働き手として活躍している。
そこで、アルバイトレポートでは、15歳~25歳までの若年層を対象に調査し、3回にわたってその結果をお届けすることにした。生活スタイルやアルバイトに対する意識、将来のとらえ方など、若年層の特性を把握することで、より円滑な採用面接や現場でのコミュニケーション、定着率の向上にお役立ていただきたい。
第1回目は、若年層の生活スタイルについての調査結果を報告する。
目次
調査概要
- 調査名:若年層ライフスタイル調査
- 調査期間:2012年4月20日~22日
- 調査エリア:全国
- 調査対象:15歳~25歳の男女で、下記条件を満たす人
- これまでにアルバイト・パート経験がある人
- アルバイト経験はないが、アルバイトをしたいと思っている人
- サンプル数:2,447
※原稿内の「大学生」は、短大生、大学院生を含む
子どもの頃から携帯電話があり、「ゆとり教育」で育った世代
今回の調査対象である若年層は、どのような世代なのだろうか。総務省「人口推計」の2011年における15~24歳の人口割合を参照すると、全人口1億2,779万人に対して、わずか9.7%(2012年4月17日発表「人口推計」による)。また、グラフ1にあるように、1993年からこの年齢層の割合は著しく減少しており、該当年齢帯の人口自体も2060年には2011年のほぼ半分になると予測されている(国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」による)。
今回の調査対象である15歳~25歳は、ちょうど小学生の時に『ゆとり教育』が始まった世代だ。若年層の人材採用に詳しい株式会社じんざい社の柘植智幸氏は、彼らについて、「与えられることに慣れている、結果より過程を大切にするプロセス主義、常に刺激を求める、などといった大きな特徴があります」と指摘する。仕事に対しては「働いているうちに自分のテンションが上がっていくような楽しい仕事や、幸せな気分で働ける職場を求める傾向が強いですね」と言う。
また、「個性の尊重」も重視されてきたため、「自分自身を成長させたい」という思いは強いとも言われる。さらに、子どもの頃からすでに携帯電話が身近にあり、複数のコンピュータ関連機器を同時に巧みに使いこなすところも大きな特徴だ。
こうした世代を採用し、定着させ、戦力化していくには、どうすればよいのか。まずは前提となる彼らの基本的なライフスタイルについて回答結果を見ていこう。
睡眠時間に次いで時間を多く費やしているのは「一人の時間」
グラフ2は、基本的な生活行動の平均時間をグラフにしたものである。
最も長く費やしているのは睡眠時間で、平日は平均6.5時間(高校生6.5、大学生6.4、フリーター6.7時間)、休日は8.0時間(高校生8.1、大学生8.0、フリーター7.9時間)である。次いで多かったのが「一人でくつろぐ」時間で、平日は平均3.4時間(高校生3.0、大学生3.3、フリーター3.9)、休日は5.8時間(高校生5.5、大学生6.0、フリーター5.4)となった。
なお、「仕事先やアルバイト先で過ごす」時間は、フリーターは平日6.1時間、休日2.3時間だが、高校生は平日0.6時間、休日0.8時間、大学生は平日1.1時間、休日1.4時間と意外に少ない。これは高校生や大学生の場合、バイトをしていない人も含まれるため、平均するとこのような数字になる。(ちなみにアルバイト経験がある人だけに絞ると、高校生は平日1.5時間、休日1.8時間、大学生は平日2.3時間、休日3.1時間)
携帯は「適宜」、スマホは「常に」
テレビやパソコンなど、メディアに接触する時間はどうだろうか。数値だけ紹介すると、「よく視聴・使用するもの」として回答が多かったのは、パソコン(89.1%)、テレビ(75.0%)、音楽プレーヤー(57.1%)、雑誌・マンガ(56.1%)で、とりわけパソコンの使用率が高い(回答者全体)。
ちなみに、スマートフォンと携帯電話の利用については、スマートフォン40.6%、携帯電話44.0%とほぼ同率だったが、使う時間帯を聞くと、携帯電話は「特に時間が決まっていない」人が多いのに対し、スマートフォンは「一日中」と回答する人のほうが多いという違いがあった。スマートフォンは携帯電話に比べると、用途を意識せずに何となく閲覧している様子がうかがえる。特に10代女性はその傾向が高かった。
友達としゃべっているときが幸せ、悩みは人生のこと
次に、何をしているときが一番幸せで、悩みごとは何かをたずねた。
すると、日々の生活の中で一番幸せを感じるときは、「友達としゃべっているとき」で40.9%、次いで「趣味のことをしているとき」が30.6%となった。一般に、現代の若者は人とのコミュニケーションが苦手などとも言われているが、共通の趣味を持っていたり、考え方が近しく親しい友人同士であれば、話も盛り上がり、いつまでも喋っていられるのだろう。ただし、常に相手に気を使っていて本心を出さないとも言われる若年層。それだけに、どこまで本心で語り、どこまで満たされているかはわからない。実際、「一人で過ごしているとき」や「寝ているとき」も上位に入っていることから、一人で何も考えないで過ごす時間もしっかり確保することでバランスをとっているのかもしれない。
一方、悩みごとでは「人生のこと」で悩んでいると回答した人が多く、40.3%。次いで「就職のこと(35.8%)」「仕事やアルバイトのこと(34.2%)」が続いている。属性別に見ると、高校生は「進学(57.7%)」、大学生は「就職(48.5%)」が1位にはなるものの、やはり2位には「人生のこと」(高校生36.2%、大学生40.8%)が続いており、漠然と将来について悩んでいる様子がうかがえる。思春期であることも考慮すべきだが、先行きが不透明である現代ならではの悩みとも受け取れる。
また、「SNSなどネット上の人間関係」が10位以内入っている。従来にはなかったネット上の人間関係が生じたことによって、上の世代は感じずに済んだ人間関係の煩わしさが、彼らの悩みごとの1つになっている点も特徴的と言えるだろう。
さらに、悩みごとの第3位には「仕事やアルバイトのこと」、第9位には「仕事やアルバイト先の人間関係」がランクインしている。このことから、仕事・アルバイト先で過ごす時間の多いフリーターはもちろん、比較的短時間しか過ごさない学生も、仕事・アルバイト先での出来事や人間関係が、彼らの日常の関心事において大きな比重を占めていることがうかがえる。一方で、「友達と過ごす」ことが幸せの要素となる若年層は、一度職場で周囲との関係性を築けば、一つの職場に定着しやすいとも考えられる。このことから、若年層の採用・定着を目指す際は、働く環境や人間関係など職場の雰囲気作りが、1つの重要な要素になると言えるだろう。
『第2回 アルバイトに関する「イメージ」と「意識・行動」』記事を見る
若年層白書 全文
成長環境やライフスタイル、アルバイト事情から将来の仕事観まで、若年層の特性をまとめて読む。