求職者は仕事に何を求めているのか?
- 求職者動向
何とか良い人材を採用したいと思って採用活動を展開しても、
ターゲットにしている層の実像と採用担当者が持つイメージにギャップがあると希望通りの採用は難しい。
そこで今回は、2010年11月に実施した求職者調査をもとに、
属性別に「勤務開始までの希望期間」「求めている職種」「仕事観」の特徴を比較検討してみよう。
目次
今月のポイント
- フリーター、主婦は納得したうえで決めたいと思っているので、条件や仕事内容をしっかり伝える。
- 高校生は反対に「お金を稼ぐための手段」と割り切っており、なるべく早く就業したいと思っているので、やる気がダウンしないうちに即決採用で決めたい。
調査概要
- 調査名:2010年11月求職者調査
- 調査期間:2010年11月12日~11月18日
- 調査方法:インターネットリサーチ
- 調査対象:北海道、関東(東京、神奈川、千葉、埼玉)、東海(愛知、静岡、岐阜、三重)、関西(大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌山)、九州(福岡)に在住する15-34歳の男女の求職者
- サンプル数:1,895
1.属性別/仕事探しから就業までの希望期間と希望職種
フリーターや主婦は時間をかけて、高校生は迅速さが決め手
アルバイト・パートで働きたいと思っている人たちは、仕事を探し始めてから、どれぐらいの期間で就業したいと思っているのか。全体の平均値を見ると「1カ月以内」がもっとも多くて18.4%。だが、属性別で比較してみると、就業までの希望期間が大幅に違うことが調査で明らかになった。
フリーターに関しては、「1カ月以内」に見つけたいと思っている人がもっとも多く24.3%。また、主婦は「特に希望はない」がもっとも多く28.7%で、「1カ月~3カ月」(18.3%)が続く。【グラフ1の矢印(2)(3)】
フリーターの場合、正社員志向、長期勤務志向が年々強まっていることが以前の調査で明らかになっている(2010年4月15日トレンドDATA参照)。だからこそ、就業までに多少時間がかかっても、じっくり探そうというフリーターが多いのではないかと考えられる。
主婦は家事や育児との両立を重視していることが多く、勤務地や時間の融通を優先せざるを得ないため、条件に合った仕事を、時間をかけて探す人が多いと考えられそうだ。
反対に、短期決戦型なのが高校生。「1週間以内に働きたい」と思っている割合がもっとも多く、約26%となっている。バイトを始めたいと思ったらすぐに決めたいと思っているようだ。【グラフ1の矢印(1)】
また、2011年2月7日トレンドDATAで紹介したとおり、高校生の多くは「自分でもできそうだ」と思える仕事への就業を希望している。ファーストフードやコンビニ、飲食店でのバイトを希望する高校生が多い結果と照らし合わせて考えると、これらの店舗・サービスが彼ら自身にとって身近な存在であり、仕事内容をイメージしやすいため、不安要素が少なく、「応募したらすぐに働ける」と思っているのではないかと推察される。【グラフ2の矢印(1)(2)(3)】
こうした傾向を踏まえ、フリーター、主婦はじっくり選定し、ミスマッチを防いで、よい人材採用に結びつけよう。反対に高校生は「早く働きたい」という意向を汲み、やる気のあるうちに採用したい。
2.属性別/仕事に対する意識
「仕事内容」「社会とのつながり」「お金」と、分かれる仕事観
仕事に対する意識も、属性によって差がある。その違い、それぞれのツボを事前に把握したうえで採用に臨むことが、マッチングの精度を向上させることにつながる。ここでは、各属性の仕事観に関するデータを紹介する。
まず「仕事を通してお金以外のものも得られると思う」が圧倒的に多かったのが、フリーター(81.5%)と主婦(87%)である。ただし、ここで留意したいのは、この2つの属性が指す「お金以外に得られると思っている『もの』」が、それぞれ異なると考えられる点だ。【グラフ3の矢印(3)(4)】
フリーターは「好きな仕事内容」か「興味が持てそうか」に重点を置くのに対して、主婦は「社会とのつながり」の機会としてバイト・パートを考えている側面がある。さらに、「嫌になったら辞めてもいいと思う」は18.3%と低く、「ひとつの仕事を長く続けたい」と思っている割合が高いため、一度仕事に就いたら長く働いてくれる可能性が高い。【グラフ3の矢印(2)】
そこで採用時には、属性別に、下記のようなポイントを押さえたい。
まずフリーターは、雇用条件よりも「お金以外の得られるもの」=「好きな仕事であるかどうか」を重視する傾向が高いので、業務内容の魅力をアピールしたい。
一方、主婦にとっての「お金以外の得られるもの」は、「社会とのつながり」を指すことが多い。そのため、働く時間に融通が利くことや主婦でも長く続けて働けることをアピールすると効果的だろう。
では、高校生はどうか。先ほどのデータにもあったように、高校生は仕事探しから働き始めるまでの希望期間が短い。しかも、下記のデータからわかるように、「仕事はお金を得るための方法と割り切っている」人が多い。それだけに時給などの条件を明確に提示し、反応などを見て、応募対応など採用フローを迅速に進めることが採用のポイントになりそうだ。【グラフ3の矢印(5)】
さらに、「ひとつの仕事を長く続けたい」という意向が、大学生よりも高いという結果が出ていることから、高校生を休暇中“だけ”の短期バイト要員ととらえないようにしたい。長期の採用ターゲットとしても想定し、求人原稿に「高校生、長期勤務可」の旨の記載などを試みるとよいだろう。【グラフ3の矢印(1)】