「求職期間」と「求人広告数」と「重視点」3要素で見る応募動向の傾向

  • 求職者動向

一口に応募といっても、職種によってその動き方やポイントは一様ではないはずだ。
では、どのくらい求職期間に充て、その間、何件求人をチェックし、何を重視点として応募を決めていくのか。
また、これら一連の動きに関連性はあるのだろうか。
カテゴリ別、職種別にそのような応募動向の傾向を探り、より効果的な求人の方向性を考えてみたい。

今月のポイント

  • 求職期間は、オフィスワークや営業職、医療・福祉、資格の必要な専門職が長め。一方、講師・インストラクター、軽作業・ラインスタッフ、配送・物流は短い。
  • 多くの職種の約7割がチェックする求人広告数が5社未満と少ない。とりわけ少ないのは講師・インストラクターや配送・物流。もっとも多かったのは営業職だった。
  • 仕事探しの重視点のベスト3はイエチカ、シフト勤務可、そして高い給与。ただし、個々の職種でそれ以外にいろいろ重視点があり、特性となっている。

調査概要

■調査手法:インターネットリサーチ
■調査対象:北海道、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)、東海(愛知、静岡、岐阜)、関西(大阪、京都、兵庫、滋賀)、九州(福岡)在住
かつ 1年以内にアルバイト・パート、契約社員、派遣社員のいずれかに就業した15-34歳の男女
■調査時期:2008年7月
■サンプル数:3000名

1 求職期間

[オフィスでの仕事] 短期、長期、二極化と三者三様の求職期間

オフィスワークに就くのに要した求職期間はどのくらいだったか。結果は、全体的に長めとなった。求職期間が2週間以上だった割合は、全体平均が32%だったのに対し、43%もあった。クリエイティブも、「1ヶ月以上3ヶ月未満」が20%を超え、長めという印象を受けるが、もっとも短い「1日」も20%に達している。1週間~1ヵ月という中間層が少なく、二極化しているというのが特徴だ。
コンピューター・インターネットは、「4日以上1週間未満」が22%で最多回答となり、このカテゴリではもっとも短期傾向が出た。また「1ヶ月以上3ヶ月未満」は17%と全体平均よりは高いものの、「3ヶ月以上」という長期では、今回取り上げた職種でもっとも低い3%にとどまっている。

カテゴリ全体として見てみると、オフィスワークは長め、クリエイティブは二極化、コンピューター・インターネットはやや短期と、全体の共通する特性は見出しづらい。したがって、募集に関しても職種ごとに対応していくことが肝要だ。オフィスワークはじっくり型なので、急募よりは長期で募集することが有効かもしれない。逆にコンピューター・インターネットは短期間で集中して応募から採用までを決めていくプランが望ましい。クリエイティブは採用期間を短期、長期どちらにも順応できるといいだろう。

図1-1. 求職期間(オフィスでの仕事)

[接客の仕事] 営業じっくり探し、それ以外は1週間以内

このカテゴリで、突出して求職期間が長めなのが営業職。1ヶ月以上費やす人が38%と4割近くに達している。全体平均19%のちょうど倍の割合だ。結果、短期は少なく、1週間未満は28%と全体平均の53%を大きく下回った。
対して、同じカテゴリのその他5職種は、総じて短め。短期傾向がとくに顕著なのが講師・インストラクターで「1日」が28%と、目立って多い。アミューズメントは逆に「1日」は7%と少ないが、「2~3日」は31%と大幅に増えている。サービスは「1日」が22%、「2~3日」が21%とこの2つで4割を超えた。
募集期間が短めではあるが、販売は「2~3日」と「4日以上1週間未満」がともに22%で、アミューズメントやサービスよりはボリュームゾーンが数日長めとなっている。フードは「1週間以上2週間未満」も22%と、2週間未満が76%と短期傾向の中でも幅のある結果となった。

カテゴリ全体としては、営業職とその他でハッキリ内容が分かれた形だ。営業職は1週間以上仕事探しに費やした人が73%、1ヶ月以上でも38%ときわめて求職にかける期間が長い。採用する側も、募集期間を長めに設定することが有効。さらにじっくり見比べると思われるので、詳細にもこだわりたい。その他職種はすべて、少なくとも1週間以内に求職活動を終えた人が、過半数を占めている。募集を短期集中型にすることで、効率化が図れるはずだ。

図1-2. 求職期間(接客の仕事)

[体を使う仕事] 2人に1人は3日以内に探す

軽作業・ラインスタッフは、短期傾向が強い。求職期間は「1日」と回答した人が27%、「2~3日」の26%と合わせると、過半数が3日以内に仕事を決めていることになる。さらに、その傾向は配送・物流でさらに強く、「1日」「2~3日」とも軽作業・ラインスタッフより数ポイント高かった。
このカテゴリ全体としても当然、短期で探す人が多いことになる。全体平均では2週間以上を費やした人は32%と、3人に1人はいた計算になるが、体を使う仕事に限れば、軽作業・ラインスタッフで21%、配送・物流にいたっては14%しかいない。募集側も、短期間で募集から採用までを行うよう計画していくことが、重要と考えたい。

図1-3. 求職期間(体を使う仕事)

[資格が必要な仕事] 3割が仕事探しに1ヶ月以上

医療・福祉の求職期間はやや長め、という結果となった。1週間以内に探したという人が41%と、全体平均を12ポイントも下回っている。最多回答は「1ヶ月以上3ヶ月未満」の19%。また「3ヶ月以上」も14%と高かった。その他の専門・技術職など資格を有する職種についても、結果は同様で、1週間以内は42%と半分に満たない。最多回答は「1ヶ月以上3ヶ月未満」で24%に達している。
今回取り上げた4つのカテゴリの中では、もっとも長期傾向が強い。仕事探しに1週間以上を要している人が過半数を超えていて、じっくり求職する特性が見て取れる。採用側もそういった動きに合わせるよう、少なくとも2週間~1ヶ月は募集期間を設けることで、より確かな人材確保につながるのではないか。

図1-4. 求職期間(資格が必要な仕事)

2 チェックした求人広告数

[オフィスでの仕事] 4割前後が5社以上求人チェック

次に、仕事選びのために、内容をチェックした求人広告数はどのくらいあったのか、を見ていこう。オフィスワークの場合、「5社未満」が57%と過半数を占めた。しかし、全体平均では同回答は67%と10ポイントも上回っている。逆に、全体平均を上回った回答としては「20社以上」の15%があり、他の職種と比較すればチェックする求人広告数は多め、ということになる。
クリエイティブは「5社未満」が61%と最多回答ながら、「10社以上15社未満」が25%と、その多さが目立つ。コンピューター・インターネットは、ほぼクリエイティブに近い結果だが、「20社以上」ではクリエイティブより5ポイント多かった。

カテゴリ全体としては、チェックする求人広告数はやや多め、という印象だ。それは、求人を応募者がチェックする確率が高いことを意味する。だからこそ、応募に結びつくような、よりアピール度の高い募集内容が求められるとも言えるだろう。

図2-1. 仕事を探すときに見た求人数(オフィスでの仕事)

[接客の仕事] 両極端な営業職と講師・インストラクター

このカテゴリでは、営業職の「5社未満」がわずか40%だったことが、とりわけ目立つ。今回取り上げた全職種で、この回答が過半数に届かなかったのは、営業職だけ。同時に、「20社以上」が20%に達している点も見逃せない。逆に、明らかにチェックする求人広告数が少ないのが、講師・インストラクター。「5社未満」が88%と圧倒的に高く、「20社以上」はわずか2%しかなかった。
対して、フードと販売は全体平均と、各回答のポイントがかなり近く、特徴としては、ほぼ平均的。サービスは、それより若干「5社未満」の割合が高まり、結果、平均より見ている求人広告数はやや少なめと言えるだろう。アミューズメントはそれよりさらに「5社未満」の割合が増え、より見る求人広告数は少なめの傾向が見て取れる。

これらの結果だが、先の[求職期間]の内容と相関関係にあることがわかる。突出して求人広告数が多い営業職は求職期間も長く、少ない講師・インストラクターは求職期間も短い。こういった関係を把握し、たとえば営業職の募集なら、時期を限定せず長いスパンで行うことでよりよい人材が確保できる可能性が高い。逆に講師・インストラクターは、短期間でも効果的な求人を行うことができそうだ。

図2-2. 仕事を探すときに見た求人数(接客の仕事)

[体を使う仕事] 4社チェックできれば7~8割は決めてしまう

軽作業・ラインスタッフは全体平均と比較すると「5社未満」が5ポイント多く、結果としてチェックする求人広告数はやや少なめ、と言えるだろう。配送・物流はさらにその傾向が強く、「5社未満」が81%にまで達した。この回答が8割を超えたのは、今回取り上げた全職種では、他に講師・インストラクターしかない。ただし、一方で「20社以上」も8%と全体平均とさほど開きのない割合を示している。

このカテゴリに関しては、やはり全体にチェックする求人広告数は少なめ。具体的には、5社未満で決めてしまう層が7~8割存在する。募集に関してもその点を考慮して、欲しい時期に集中的に求人活動を行うことが、結果的には効率の良さに結びつくはずだ。

図2-3. 仕事を探すときに見た求人数(体を使う仕事)

[資格が必要な仕事] 求職期間は長めでも、見る求人広告数は多くない

医療・福祉の結果を見てみると、全体平均とどの回答の割合もほぼ変わりがない。しいて言えば、「5社以上10社未満」が3ポイントほど高く、平均よりは若干チェックする求人は多いといった程度だ。専門・技術職など資格を有するものも同様で、全体平均と結果はかなり近い。
結論としては、2職種とも3人に2人は5社未満で決めている、ということになる。ただし、他のカテゴリでは、先の[求職期間]が長めであれば、求人広告数は多めという傾向があった。しかし、求職期間が長めだったこのカテゴリだけはそういった関連性が薄く、そのあたりも興味深い。ともあれ、採用側にとっては、いかに目に触れ、しかも内容まで読み込んでもらえるか、つまりは、チェックするわずか数社に入るような効率的な募集のかけ方とアピール度の高い求人内容が、大きなポイントになるだろう。

図2-4. 仕事を探すときに見た求人数(資格が必要な仕事)

3 仕事探しの重視点

[オフィスでの仕事] イエチカ重視のオフィスワーク、仕事内容重視のクリエイティブ

最後に、取り上げるのが仕事選びの重視点。何をポイントに就職を決めたかだが、まずはオフィスワーク。最多回答は「勤務地が自宅から近いこと」で20%。次いで「時間の融通がきくこと」が11%、「給与が高いこと」が10%となった。
クリエイティブは「興味のある仕事内容であること」が29%。この数値は、今回取り上げた全職種の[仕事探しの重視点]での回答でもっとも高く、それだけこの職種が仕事内容を重視していることがわかる。「時間の融通がきく」も20%と高かった。
コンピューター・インターネットも「興味のある仕事内容であること」が最多回答で、24%は全体平均(11%)と比較してもその高さがわかる。しかし、クリエイティブと異なり「給与が高いこと」も19%と目立って高かった。

カテゴリ全体としては、3職種の共通項はなく、[求職期間]と[求人広告数]の結果同様、個々に違いが出た。イチエカとシフト勤務を優先するオフィスワーク、仕事内容が最優先のクリエイティブ、仕事内容+給与のコンピューター・インターネット。これらの特性を募集内容にどのように反映できるか、そのことが効率的な採用につながっていくだろう。

図3-1. 仕事選びの重視点(オフィスでの仕事)

[接客の仕事] イエチカ・シフト勤務優先と給与・仕事内容優先の二極化

販売とフードは全体平均とかなり近い結果となった。「勤務地が自宅から近いこと」「時間の融通がきくこと」「給与が高いこと」のベスト3も一致し、4位以降もほぼ順位は同じだった。その中で、販売はイエチカで、フードはイエチカと時間のシフトで、平均値より6~7ポイント高い点が目立つ。アミューズメントは、上位以外で「1日に働く時間が短いこと」「1週間あたりの勤務日数が少ないこと」がともに7%と高かった点に特徴が出た。
個性的なグラフを示したのが、残りの3職種。営業職の最多回答は、18%で「時間の融通がきくこと」だったが、全体で1位となった「勤務地が自宅から近いこと」はわずか3%。全体で6位だった「やりがいのある仕事」にいたっては0%という結果だ。講師・インストラクターは、もっとも多かった回答が「給与が高いこと」で21%。次いで「興味のある仕事内容であること」が16%、「やりがいのある仕事」が15%と続き、ともに全体の1位、2位となったイエチカとシフト勤務を上回っている。サービスは、講師・インストラクターと回答の傾向が似ているが、「やりがいのある仕事」は4%と高くなかった。

カテゴリで見てみると、含まれる職種の共通項は見出しにくいが、先の[求職期間]と[求人広告数]でともに平均から大きく外れた営業職と講師・インストラクターは仕事選びの重視点でも、全体平均とは異なる内容となった。また、[求職期間]と[求人広告数]で平均に近い結果の販売やフードは、ここでも同様に平均的だった。こういった傾向を踏まえ、募集時には各職種に対し、より効果的なアピールポイントを強く押し出していきたい。

図3-2. 仕事選びの重視点(接客の仕事)

[体を使う仕事] 重視点は自分でもできそうで労働時間が短いこと

軽作業・ラインスタッフでもっとも多かった回答は「勤務地が自宅から近いこと」で21%。「自分でもできそうな仕事であること」が15%で次いで多かった。配送・物流も最多回答は17%で「勤務地が自宅から近いこと」。2番目に14%で「給与が高いこと」が入った。

カテゴリに含まれる2職種の共通する特徴としては、「自分でもできそうな仕事であること」と「1日に働く時間が短いこと」が、ともに全体平均をポイントで倍近く上回っている点。イエチカや給与とともに、このあたりを募集時のアピールポイントにしたいところだ。求職期間は1~3日、チェックする求人は4件以内が大半のこれら職種の場合、そういったことを訴求できるかどうかで、採用効率が大きく左右することもあるはずだ。

このカテゴリに関しては、やはり全体にチェックする求人広告数は少なめ。具体的には、5社未満で決めてしまう層が7~8割存在する。募集に関してもその点を考慮して、欲しい時期に集中的に求人活動を行うことが、結果的には効率の良さに結びつくはずだ。

図3-3. 仕事選びの重視点(体を使う仕事)

[資格が必要な仕事] 興味ややりがいで仕事を選ぶ

医療・福祉では「時間の融通がきくこと」が20%でトップ、続いて「勤務地が自宅から近いこと」が19%、「興味のある仕事内容であること」が13%という結果となった。一方、専門・技術職など資格を有するものは、「興味のある仕事内容であること」が20%とその多さが目立つ。13%で2番目に多かった「やりがいのある仕事」とともに、この職種の特徴がよく出た結果と言えるだろう。

カテゴリ全体としては、ポイントの違いはあるにせよ、仕事への興味ややりがいで平均を上回っている点があげられる。医療・福祉は、イエチカ、シフト勤務、給与のポイントが高い分、興味ややりがいの伸びが大きくないが、裏を返せばそれだけ仕事へのハードさを感じているとも推測できる。[求職期間]では長期で探す傾向が出たのも、慎重な仕事選びの結果とも考えられる。したがって、募集に関しては、仕事の魅力ややりがいとともに、ハードというイメージを軽減させる工夫が効果的かもしれない。

図3-4. 仕事選びの重視点(資格が必要な仕事)

今月のまとめ

  • 全体平均では、求職期間は2週間未満が55%で過半数を超えている。募集時に考慮する応募者の動きとして、この期間がひとつの目安となるだろう。それよりも長い職種としては、オフィスワークや医療・福祉、専門・技術職などの資格の有するもの。加えて営業職で38%が1ヶ月以上を要している。これら職種の募集に関しては、時期をあまり限定せず、長期で求人を行うと効果的だろう。逆に、講師・インストラクター、軽作業・ラインスタッフ、配送・物流は半数前後が3日以内と短い。時期をピンポイントで狙った、集中的な募集が望ましい。
  • 内容をチェックした求人広告数は5社未満が全体の67%、という結果が出た。とりわけ講師・インストラクターは86%が5社未満と圧倒的。配送・物流も81%が5社未満となった。これら職種の募集では、職種の特性に合致した的確なアピールと、より早く求人が目に止まる工夫が必要だろう。一方、チェックした求人広告数が多い職種の代表は、営業職。5社未満は40%、逆に20社以上が20%に達した。じっくりと時期を限定せず募集を展開することで、より良い人材が取り込めるのではないか。
  • 仕事探しの重視点で、全体平均では、イチエカ、シフト勤務可、そして高い給与の3つのポイントが挙げられる。こちらとほぼ同じ内容なのがオフィスワーク、フード、販売など。また、軽作業・ラインスタッフ、配送・物流も平均に近く、これら3つのポイントは募集時のアピールとして欠かせないだろう。また、クリエイティブやコンピューター・インターネット、医療・福祉、専門・技術職などの資格の有するものは、やりがいを求める意識が高い。加えて、求職期間が短いとチェックした求人広告数も少なく、逆に求職期間が長ければ求人広告数も多いという相関性は見えてきたが、仕事探しの重視点に限っては求職期間との相関性は見出せない。

 

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