アルバイト・パート800人が明かす「お金事情、本当のところ」
- 市場動向
条件重視の求職者によく利用されているWEBサイト「anセレクト」で、どんなキーワードで検索が行われているかを2009年から11年の3年間で集計すると、「交通量調査」「調査」といった仕事内容に次いで多いのが「日払い」という条件であることがわかった。
求職者が「日払い」を求めるのはなぜか。その背景を知るため、今回、彼らのお金事情について調査した。アルバイト・パートのお金に対する現状を把握しておくことは、賃金条件や支払方法、制度を整備するうえで有効だ。ぜひこの調査結果を参考にしてほしい。
目次
今月のポイント
アルバイト・パートが重視する条件の一つ「日払い」。
アルバイト代の相場は、学生5万円未満、主婦・フリーター10万円以上。
急にお金が必要になるのは、学生「レジャー・趣味」、主婦・フリーター「冠婚葬祭」。
足りないお金を、学生は親に借りるが、親の立場でもある主婦はクレジットカードを活用。
急な出費に対し、働いた分の給与からアルバイト代を前渡しできる制度を導入している企業もあり。
調査概要
- 調査名:お金に関する調査
- 調査期間:2012年1月26日~27日
- 調査方法:インターネットリサーチ
- 調査対象:16-59歳の男女で、直近1年間にアルバイト・パートに就いたことがある人
- サンプル数:824
1 アルバイト代の金額
学生は5万円未満、主婦・フリーターは10万円以上
まず、アルバイト・パートは、1カ月にどれくらいのアルバイト代を稼いでいるのか。気になる金額を聞いてみた。
直近のアルバイトで得た金額を答えてもらったところ、高校生・大学生は「5万円未満」が6割以上を占めた。どちらも学業がメインのため、アルバイトに費やすことのできる時間が制約されている。その結果、稼げるバイト代にも限度があるため、主婦やフリーターに比べると収入額は少なめになるのではないだろうか。ちなみに、月5万円程度ということは、時給800円のアルバイトを1日4~5時間、月15日ほどのペースで勤務したことになる。
比較的長く働ける主婦やフリーターの1カ月の収入は、いずれも「10万円以上~20万円未満」が最も多かった。
2 常に持ち歩くお金の相場と、日頃のお金の使い方
大学生の財布の中身は3,000円~1万円
ふだん、どれくらいの金額をお財布に入れて持ち歩いているのかを聞いてみると、高校生は「1,000円以上~3,000円未満」(39.3%)、多くても「3,000円以上~5,000円未満」(24.8%)までが多い。大学生になると「5,000円以上~1万円未満」(29.6%)、「3,000円以上~5,000円未満」(28.6%)が多くなる。大学生の場合、飲み会やデート代など外食する機会も増え、一人暮らしの学生だと生活費も自分で負担するケースも多いため、財布に入れるお金もおのずと高校生よりは増えると考えられる。
それに比べ、主婦・フリーターは「5,000円以上~1万円未満」がボリュームゾーンとなる。特に主婦は「1万円以上~2万円未満」のゾーンが他の属性に比べて高めで25.2%。食事や生活に必要なお金を、家族を代表して持ち歩く場合が多いからだろう
稼いだお金は「計画的に使う」が6割
アルバイト代の支払い方法としては、どの属性も銀行振り込みが最も多く76.1%、頻度も月1回が87.5%と多かった。
受け取ったお金をどのように使うかを聞いてみると、全体の60.0%が「計画的に使う」と答えた。さらに、どのように計画的に使うのかを質問したところ、高校生、大学生、フリーターは「配分を頭の中で考えながら、お金を使っている」が最も多い(高校生73.5%、大学生69.0%、フリーター56.9%)。それに対して主婦は「最初に用途別にお金を振り分けている」(53.7%)、「家計簿をつけている」(51.5%)の方が多くなっている。主婦は、家計を握っているだけに堅実にお金を使っている様子がうかがえる。
3 急にお金が必要になるときと、急な出費への対応方法
予定外のお金がいる!「学生は「レジャー・趣味」
お金が突然必要になった経験の有無を聞くと、9割以上の人が「ある」と回答、「いつも以上にお金が必要になった経験はない」はたった7.3%にとどまった。
その用途をたずねると、高校生は「趣味・娯楽費」が最も高く53.4%、大学生は「飲み会やデートなど、友人知人との付き合い」(62.6%)、「旅行・レジャー」(38.8%)が多かった。
特に大学生の場合、出費の増える時期は12月~3月と8月。イベントの多い年末年始、卒業シーズン、そして旅行・レジャーなどに出掛けたい夏休みなどに、まとまったお金が必要になり、その分を別途工面する必要が生じていると思われる。
主婦・フリーターは「冠婚葬祭」
主婦やフリーターの場合は、「知人や身内の冠婚葬祭」などの予定外出費が多い(主婦73.8%、フリーター48.1%)。学生とは異なり、自分の都合というより他人のために使う、いわば社会人としての交際費として入用になるケースが多いようだ。
また、主婦・フリーターは交際費以外にも「家電や電化製品などの購入・修理代」(主婦42.2%、フリーター33.0%)、「自動車関連」(主婦36.4%、フリーター28.2%)、「医療・保険費」(主婦38.3%、フリーター34.0%)が学生よりも高くなっている。食事や家賃といった基本的な生活費には含まれないものの、日常生活に不可欠な科目への急な出費が時々発生している状況が、この数字から浮かび上がってくる。
突然の出費に対して学生・フリーターは「借りる」
上記のような理由で急にお金が必要になったとき、どのように対応しているのか。「家族・親類に借りる」が多いのが高校生(71.4%)と大学生(54.4%)。フリーターは学生に比べるとやや低いものの、それでも「家族・親類に借りる」がトップで40.8%、次いで「クレジットカードを使う」(33.0%)が多くなっている。
ところが、主婦になると「クレジットカードを使う」が最も多く53.4%。もともと家計を握っている主婦は、貸す立場になることの方が多く、「家族・親類に借りる」状況にはないのかもしれない。
また、ボリュームは少ないものの、急な出費をまかなうため「日払い」のアルバイトをするケースが他属性より多いのが、大学生(8.7%)とフリーター(7.8%)である。この2つの属性は、他に比べて時間の融通がききやすく、比較的「日払い」のアルバイトを入れやすいからではないだろうか。
まとめ
お金に関する制度を整えるのは人材確保のうえで有効
以上の結果から、どの属性も急にお金が入用になる時があるというお金事情が分かった。特に、大学生はイベントシーズンになると、急な出費のため、「日払い」可能な短期バイトなどを求める傾向が高まると考えられる。
また一方で、飲食店やコンビニなどアルバイトに長期的に働いてもらっている職場では、学生などのアルバイトが一時的にシフトを減らし、短期の「日払い」バイトに流れる可能性も出てくる。こうした事態に備え、企業によっては長期勤務のアルバイトに対して、働いた分の給与からアルバイト代を前渡しできる制度を導入しているところもある。
長期的に雇用するアルバイトにおいては、他企業との差別化やアルバイトの定着率を上げるという観点から、こうしたお金に関するちょっとした配慮や制度の整備が、人材確保の有効策の一つになるのではないだろうか。