職種・業界別:就業者分析 ~フード関連職種編~

  • 業界別求職者動向

求職者にとって職種とは、仕事選びの起点となりうる重要な要素。雇用側にとっても「自分達の職種を選ぶ人は何に惹かれ、何を嫌うのか?」というように、求職者を職種という点から分析することは、同じく重要。そこで今回は、職種ごとに違う求職者動向を探ってみよう。この4月号では、学生からフリーター、主婦まで、幅広い求職者が勤務を希望している飲食関連の職種を特集する。

調査概要

■調査方法:インターネットアンケート
■調査対象:北海道・首都圏・東海・関西・九州在住15~34歳男女
現在、「高校生、短大・専門学校生、大学生、大学院生、アルバイト・パート、派遣社員、契約社員、無職の人」且つ「過去1年以内にアルバイト・パート、派遣社員、契約社員の仕事に就いたことがある人」 で、今後も「アルバイト・パート、派遣社員、契約社員」での就労を希望している人
■調査期間: 2007年2月
■サンプル数: 6,941名
■ウェイトバック:対象者サンプル数が実際の人口の構成比と異なるため、総務省統計局の「平成14年就業構造基本統計調査」による非正規雇用就業人口に基づき、「属性・性別」ごとにウェイトをかけた

 

1.女性から高い支持。フード系希望者の構成とは?

ではフード系職種の希望者について、その属性構成比から確認しておこう(下表(1-1))。 グラフ中の「フード系希望者全体」というのは、「レストラン・カフェのウエイター・ウエイトレス」「ファーストフードのスタッフ」「キッチンスタッフ」「居酒屋・バー」の希望者を合算したスコアをあらわす。フード系全体では男性3割・女性7割、特に女子大学生(24%)・女性フリーター(25%)が合わせて半数を占めている状況だ。 フード職種を細かくみていくと、「レストラン・カフェでのウエイター・ウエイトレス」「キッチンスタッフ」で特に女性の多い傾向が見られる(それぞれ女性が8割・7割)。「レストラン・カフェ」では女子大学生、「キッチンスタッフ」では女性フリーターが3割強と多いのが特徴的だ。一方で「ファーストフードスタッフ」「居酒屋・バー」では比較的男性が多い(4割前後)。「ファーストフードスタッフ」では男性フリーター、「居酒屋・バー」では男子大学生がそれぞれ多い傾向だ。

表1-1 フード職業希望者 属性構成比

では、こうしたフード系職種の希望者は、もともとはどのような仕事に就いていたのだろうか。それぞれの前職(現在就いている仕事も含める)の割合を示したのが下表(1-2)だ。 フード系希望者全体では、4割弱が前職もなんらかのフード系に就いているほか、「スーパー・デパート・量販店スタッフ」や「事務」「コンビニスタッフ」「商品検査・仕分け」などが比較的多い。

さらにこまかく見ていくと、たとえば「レストラン・カフェでのウエイター・ウエイトレス」希望者では2割が前職も同じ「レストラン・カフェ」というように、それぞれリピート層が2割以上を占めている。なかでも「ファーストフードスタッフ」「キッチンスタッフ」でリピート割合が高い傾向がみられた。

表1-2 フード職種希望者 前職

2 シフト重視=短時間希望ではありません:ウェイター・ウェイトレス

ここからは、フード系の職種をもう少し細かく分解し、一つひとつの職種について、その層の重視点や辞める理由・続ける理由を見ていこう。
まず「レストラン・カフェでのウエイター・ウエイトレス」から。 表(2-1)は、レストラン・カフェでのウエイター・ウエイトレスを希望する層が 仕事選びの際に重視するポイントTOP10だ。 重視度トップは「時間の融通がきくこと」(17%)。以下「給与が高いこと」(15%)、「店長や社員の人の雰囲気がよいこと」(11%)とつづく。 特に1位のシフトへのこだわりは、フード系希望者全体と比較しても高いことが分かる。

表2-1 仕事選びの重視ポイント

では、実際にレストラン・カフェでウエイター・ウエイトレスとして働いたことのある人は、どのような理由でその仕事を辞め、あるいは続けているのだろうか。下表(2-2)(2-3)に、辞めた理由・継続の理由をランキング化してみた。 辞めた理由のトップは「店長や社員の人の雰囲気が悪いから」(24%)で、2位以下の項目を大きく引き離して高い。また3位に「働いている人になじめないから」(16%)がランクインしているように、人間関係が大きく影響しているようにみえる。また、TOP10のなかに「1日に働ける時間が短いから」(8位10%)があがってきている点は、この職種だけに見られる特徴だ。前述したとおり、仕事選びの際にはシフト最重視ではあるが、働く時間が短すぎても、それはそれで辞める原因になってしまうということなのだろうか。 一方、この仕事を続けている理由として最も高かったのは「勤務地が自宅から近いから」(35%)、「時間の融通がきくから」(33%)。以下「店長や社員の雰囲気がよいから」(29%)・「働いている人と仲がよいから」(29%)と続く。イエチカ・シフト・人間関係という3点が、継続するうえで大きなポイントとなっている。

表2-2 辞めた理由 表2-3 続けている理由

3 選ぶポイント、辞める理由、双方に給与がからむ:ファーストフードスタッフ

では次に「ファーストフードスタッフ」をみてみよう。 この仕事を希望する層が重視することトップは、「勤務地が自宅から近いこと」(17%)、ついで「時間の融通がきくこと」(14%)。特に「勤務地が自宅から近いこと」へのこだわりは、フードを希望する層全体と比べてみてもかなり強いといえる(フード計では8%)。また、5位・6位にランクインしている「1日に働く時間が短いこと」(7%)、「1週間あたりの勤務日数が少ないこと」(5%)、「知名度の高い会社であること」(5%)へのこだわりも、ほかのフード職種希望者よりも強そうだ。一方で、「給与が高いこと」(8%)、「仕事内容に興味がもてること」(5%)への重視度はそれほど高くなく、フード職希望者全体に比べてかなり低い。

表3-1 仕事選びの重視ポイント

では、このファーストフードという職種、実際はどのような理由で辞めたり続けたりしているのだろうか。下表(3-3)(3-4)をみてみよう。 辞めた理由トップは、「給与が低いから」(24%)。わずかではあるが2位の「店長や社員の雰囲気が悪いから」を上回っている。辞めた理由として給与がトップにでてくるのは、実はこのファーストフードだけに見られる特徴のひとつである(ほかのフード職はいずれも、人間関係に関することがトップなのだ)。重視度では「給与」へのこだわりが特に低いこの“ファーストフード”層で、辞めた最大の理由が「給与の低さ」というのは大変興味深い。仕事探しの際は気にしていなくても(あるいは期待していなくても)、実際に働き始めると、それが原因で辞めてしまう ということなのだろうか。 一方で、続けている理由の1位は、「時間の融通がきくから」(50%)。2位以下の項目を大きく引き離してのトップだ。TOP10 のなかに「1日に働く時間が短いから」(8位17%)がランクインしているという点からも、シフトや勤務時間数に関することが、仕事を続けるうえでポイントになっている様子がうかがえる。

表3-2 辞めた理由 表3-3 続けている理由

4 フード系で唯一「仕事内容」を最重視:キッチンスタッフ

次は「キッチンスタッフ」。 まずキッチンスタッフ希望層の、仕事選び重視点から(表4-1)。 重視トップは「仕事内容に興味がもてること」(11%)。フード系で仕事内容に関することがトップであるのは、唯一この「キッチンスタッフ」だけだ。4位・5位にも「仕事の内容が自分にあっていること」(10%)、将来役立つ資格・技術が身につくこと」(10%)がランクインしているように、仕事内容へのこだわりの強さが、この職種の大きな特徴といえる。一方で「給与が高いこと」(10%)・「時間の融通がきくこと」(8%)・「店長や社員の雰囲気はよいこと」(4%)は、フード希望者全体と比べると低い。条件や人間関係よりも、仕事内容優先の傾向が顕著に現れる結果となった。

表4-1 仕事選びの重視ポイント

では、キッチンスタッフ職の「辞めた理由」「続けている理由」を、下表(4-3)(4-4)でみていこう。 辞めた理由トップは「店長や社員の雰囲気が悪いから」(26%)、続いて「働いている人になじめないから」(20%)。重視点では仕事内容に関することが高かったが、実際辞める理由としては、ほかのフード職同様に人間関係が大きく影響しているようだ。 一方、続けている理由は、「勤務地が自宅から近いから」(34%)、「時間の融通がきくから」(32%)と、こちらも仕事内容よりイエチカ・シフトといった条件の影響が大きい。ただ、3位以降は「仕事内容に興味が持てるから」(26%)、「やりがいのある仕事だから」(23%)、「仕事の内容が自分にあっているから」(22%)と、仕事内容に関することが並ぶ。またTOP10のなかに「将来役立つ資格・技術が身につくから」(16%)があがっているのも特徴的だ。ほかのフード系職種では「人間関係」に関することが上位であるなかで、この傾向は、やはり内容重視のキッチンスタッフ職の特徴といえそうだ。

表4-2 辞めた理由 表4-3 続けている理由

5 給与へのこだわりが最も高い:居酒屋・バー

最後に、居酒屋・バーについて詳しくみていこう。 まず希望層の重視ポイント(表5-1)だが、トップは「給与が高いこと」(24%)で、ほかの項目に圧倒的な差をつけて突出している。 ついで「店長や社員の雰囲気がよいこと」(12%)、「仕事内容に興味が持てること」(11%)と続く。ほかのフード職で上位にあがっていた「勤務地が自宅から近いこと」や「時間の融通がきくこと」は、それぞれ5%・9%とわずかに1割未満。居酒屋・バーで働きたい層では、こうした条件よりも、とにかく給与にこだわる姿勢が垣間見れる結果となった。また「服装や身だしなみのルールが厳しくないこと」がTOP10にあがってきているのも、この職種の特徴といえる。

表5-1 仕事選びの重視ポイント

では、実際にこの職種に就いた人の辞める理由・継続の理由は何であろうか(下表(5-3)(5-4))。 辞めた理由トップは、「店長や社員の雰囲気が悪いから」(21%)、ついで「仕事内容があっていないから」(15%)「働いている人になじめないから」(15%)と続く。重視度で突出していた給与については、15%で5位にランクインと意外に低い。 一方 継続の理由は、「時間の融通がきくから」(32%)・「勤務地が自宅から近いから」(32%)がトップで、以下「店長や社員の雰囲気がよいから」(29%)、「働いている人と仲がよいから」(27%)と続く。イエチカ・シフト・人間関係という3点が上位を占めている点は、レストラン・カフェやファーストフードと変わらない。ただし5位に「給与が高いから」(23%)、10位に「服装や身だしなみのルールが厳しくないから」(11%)がランクインしている点は、この層特有の傾向といえそうだ。

表5-2 辞めた理由 表5-3 続けている理由

 

今月のまとめ

飲食系職種は全般的に女性から高い支持

フード系職種希望者全体で、実にその7割が女性。特に多いのがフリーター女性(24.7%)と大学生女性(23.9%)で、大学生女性は「レストラン・カフェでのウェイター・ウェイトレス」、フリーター女性は「キッチンスタッフ」で、それぞれ3割強を占めている。

仕事選びのポイントは職種ごとに大きな差が

フード系職種希望者全体では、「給与が高いこと」を重視して仕事を選ぶ割合が15%でTOP。「勤務地が自宅から近いこと」は8.4%で5位となっている。しかし、ファーストフード希望者にとってはその割合が逆転し、「勤務地が自宅から近いこと」が16.6%で1位、「給与が高いこと」は8%で4位。他にもキッチンスタッフ希望者は全体に比べて仕事内容や資格へのこだわりが高いなど、希望職種ごとに志向は大きく異なる。

続いているのは「時間」の都合

仕事を続ける理由は「時間の融通がきくから」、「勤務地が自宅から近いから」に集中している。仕事を選ぶ段階では、給与や時間などこだわりのポイントがわかれるものの、働き続けるためには時間の都合が大きく影響するようだ。一方、仕事を辞める理由では、人間関係に関する回答が多かった。職種ごとの特徴を考えるとき、重視点、辞める理由、続ける理由のそれぞれのデータを複合的に考慮したい。

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