アルバイトが突然来なくなったら…退職に必要な手続きを社労士がアドバイス!

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アルバイト・パート採用時の手続き・流れなどはしっかり把握しているけど、いざアルバイト・パートが辞めるとなった時は何をするべきかわからないといった店長さん・経営者の方も多いのではないでしょうか。

そこで今回はアルバイトが辞める際に必要となる手続きや、解雇、無断欠勤したまま連絡が取れなくなるなど、それぞれのパターンからどういった対応ができるのかを人事労務コンサルタント・社会保険労務士の「日本橋人事労務総研 社会保険労務士小岩事務所」代表・小岩和男さんにうかがいました。
「アルバイトが辞める時の対応はどうすれば…」とお困りの人事担当者の方は、必読です。

アルバイトが辞める時のケースは主に3つ

──アルバイトが辞める際に何をしたらいいのか困ってしまう店長・経営者さんも多いと思うのですが、まずは何をすべきなのでしょうか?

まず、アルバイトが仕事を辞めるには法律上では3つのケースがあります。ひとつは「退職」です。これはアルバイト側から辞めたい意志をバイト先に伝えることです。もうひとつが「解雇」です。こちらは「退職」とは違って正当な理由がある場合に限ってアルバイトの意志表示に関係なくバイト先が一方的に辞めさせることです。もうひとつは労働契約期間の満了などの「自動終了」です。アルバイトの場合は、あらかじめ働く期間を決めて契約していることが多いですね。更新した場合でもその更新期間の満了で契約終了です。とくに「退職」と「解雇」のふたつのケースでは手続きも異なる部分があるので確認していきましょう。

──辞めると言っても「退職」と「解雇」では手続きが異なる部分があるのですね。それぞれどのような手続きが必要なんですか?

「退職」「解雇」に限らずアルバイトが辞める時に最初に確認してほしいのが就業規則ですね。

まず「退職」から手続きについて順番に説明していきましょう。

■ 退職証明書

アルバイトが退職した際に本人から請求された場合に必要となる書類です。
請求された場合は下記の項目が入った証明書が必要となります。

1. 使用期間
2. 業務の書類
3. その事業における地位
4. 賃金
5. 退職の事由

■ 各種社会保険の手続き

1.労災保険の手続き
アルバイト採用時にも特別な手続きはありませんので、退職時も同様です。毎年の労働保険の更新時期に企業で毎年の保険料の清算手続きをすることで完了します。

2.雇用保険の手続き
アルバイトが雇用保険被保険者であった場合は、以下の手続きが必要。

・雇用保険被保険者資格喪失届の提出
・雇用保険被保険者離職証明書の作成と提出
退職日翌日から起算して10日以内に、所轄ハローワークに届けます。
この書式は、アルバイトが採用された際に発行されているので、その用紙を活用できます。
・雇用保険被保険者離職票の発行
上記の証明書を提出するとハローワークから発行されます。離職票は退職アルバイトが、失業給付を受ける際に必ず必要になる書類です。
※ただし、従業員が発行を希望しないときは、離職証明書は作成しなくてもよいことになっています。

3.健康保険・介護保険・厚生年金の手続き
健康保険・介護保険・厚生年金の手続きは、原則として一緒に対応します。書式がセットになっていますのでまとめての手続きで完了できます。
※健康保険組合に加入している企業の場合は、別々に行うケースもあります。

●健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届
アルバイトの退職日翌日から5日以内に、アルバイトから回収した健康保険被保険者証を添付して提出します。
本人分だけでなく、被扶養者の保険証回収も忘れずに対応しましょう。
※何らかの理由で回収できない場合は、上記回収不能・滅失届を提出する必要があります。

■賃金などの支払い

退職するアルバイトに支払うべき金品がある場合に、請求を受けた場合は、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称にかかわらず労働者の権利に属する金品を返還しなければなりません。

■退職金の支払い

就業規則に退職金に関する規則がある場合は対応が必要となります。
以上が退職の際に必要となる手続きです。なお、契約期間満了「自動終了」の場合でも同様の手続きとなります。

──「退職」の手続きについて、いろいろ教えていただきありがとうございました。手続きといって言ってもやることはけっこうありますね。

確かに慣れていない店長・経営者にとっては簡単な事務手続きとはいかないので、手続き面については本部にサポートを頼むなどがいいかもしれませんね。

 

解雇時に注意するべきポイントは?

──「退職」についてうかがいましたが、それでは「解雇」についても教えていただけますでしょうか。

「解雇」については少しデリケートな問題なので雇う側にとってはしっかり対応する必要があります。先ほどもお伝えしたように、アルバイトの意志表示に関係なく雇用主側から辞めさせることができる権利が「解雇」になります。但し、正当な理由がなく解雇をするのは法律上で禁止されおり、その基準は厳しいものとなっています。手続きとしては基本的には「退職」と一緒ですが、異なる点としてはアルバイトから解雇理由の請求があった際に「退職証明書」に解雇理由を記載して交付しなければならないことです。また「解雇」する場合には30日以上前に解雇を予告する必要があります。解雇予告をせずに解雇したい場合は、解雇と同時に平均賃金の30日以上の支払いが発生します。解雇する日までに30日以上の予告ができない時は30日に不足する日数分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うことが必要となります。

例)7月10日に「7月30日付けで解雇する」と予告した場合

例えば7月10日に「7月30日付けで解雇する」と予告した場合には、上記の図のように7月31日~8月9日までの10日間が解雇予告手当の支払いに必要な日数となります。

──なるほど。「解雇」の手続きについてはわかったのですがそれ以外に注意するポイントってありますか?

「解雇」とはバイト先からの一方的な意思表示で辞めさせる権利ではありますが、だからといって一方的な話だけをして「解雇」をするのはあまりよくないですね。なぜ「解雇」になったのか理由をアルバイトの方にも明確にわかるように伝えておいてください。ただ日頃からコミュニケーションをとっていないのにいざ「解雇」を伝えなきゃいけないとなってもなかなか難しいものです。例えば、日頃から日報などを活用してコミュニケーションを積極的にとるなど意識することが、「解雇」を伝える場面がきてしまった時に円滑に進行できることにつながります。

アルバイトとはいえ、「解雇」するのはハードルが高いことを認識しておきましょう。ケースによっては不当解雇で訴えられるリスクもあるため、慎重に対応する必要がありますので注意してください。

最後に労働契約期間満了時の留意点もお話しておきますね。これは円満退職(自動終了)なので解雇予告は必要ありません。ただし、3回以上契約が更新されている場合や1年を超えて継続勤務しているアルバイトについては、契約を更新しない場合、30日前までに雇止めの予告をする必要がありますので要注意です。

解雇の時に注意するべきポイントの記事はこちらから
■参照:an report「ハードルが高いバイトスタッフの“解雇”が認められるケースって?」
アルバイト・パートの解雇は雇用する企業や店舗にとっては非常にハードルが高いもの。法律や判例を紐解いても、ほとんどのケースでは解雇が認められていません。解雇は不可能に近いほど難しいと言わざるを得ないのです。
https://baito-report.jp/repo_cont/pro/20150721.html

無断欠勤が続くアルバイトの扱いはどうすればいい?

──「解雇」についてはアルバイトとのコミュニケーションがより重要ですね。では無断欠勤によりコミュニケーションがとれなくなるケースはどうなんでしょうか?

無断欠勤によりそのまま辞めてしまうケースですね。アルバイトが無断欠勤してしまったら、まずは店長さん本人から連絡をとるアクションを起こしましょう。それでも連絡がつかない場合は、何らかの理由で店長さんと話したくないかもしれませんので、仲のよいアルバイト仲間に連絡をとってもらうようにしましょう。それでも本人とまったく連絡をとれない時には、本人の安否が心配なので家族へ連絡をしてみるのがいいかと思います。

──無断欠勤でもアルバイト本人へ連絡する努力は怠らずに対応するのがいいんですね。ちなみに無断欠勤への手続きは何か変わった点があるのでしょうか?

無断欠勤が続く場合の対応については、先ほどもお話した「就業規則」に規則を定めている企業も多いのでそちらをしっかり確認する必要があります。例えば無断欠勤が2週間以上続いた場合にはアルバイト本人の意志に関係なく「退職」もしくは「解雇」と就業規則で決まっている場合もありますからね。但し、こちらについては法律で決まっているわけではなく、あくまで就業規則で決まっていることという認識はおぼえておいたほうがいいでしょう。

まとめ

今回はアルバイトが辞める際に必要な手続きや店長さんの行動のポイントについてお話を伺いました。

対応すること、手続きとしては
■就業規則を確認する
■退職証明書(退職の場合)<解雇理由の請求があった場合は、その理由も記載する>
※アルバイトから請求された場合のみ必要
■各種社会保険の対応
・労災保険の手続き
毎年の労働保険の更新時期に企業で毎年の保険料の清算手続きをすること
・雇用保険の手続き
・雇用保険被保険者資格喪失届の提出
・雇用保険被保険者離職証明書の作成と提出
・雇用保険被保険者離職票の発行
※離職票の発行はアルバイトからの希望がない場合は不要
・健康保険・介護保険・厚生年金の手続き
・健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届
■賃金などの支払い
■退職金の支払い
※就業規則に退職金の規則がある場合は必要

「解雇」の時に注意するポイント
■解雇予告できる日が30日以上前にならない場合はその期間に応じて
解雇予告手当が必要になる
■解雇理由は明確にアルバイトに伝える
■日頃から日報などを活用してコミュニケーションをとる

「無断欠勤が続いて辞める」の時に注意するポイント
■店長さんやアルバイト仲間から本人へ連絡をとる努力をする
■就業規則内でどのような対応をするべきなのかを確認する

入口となるアルバイトの採用や面接ももちろん大切ですが、出口となる「退職」や「解雇」時もしっかり対応することがよい人を採用することにつながっていきます。

 

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[出典記載例] 出典:求人情報サービス アルバイトレポートより(該当記事URL)

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