他社との差別化&離職防止につながる ユニークな福利厚生やスタッフ向けの制度
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目次
掲載企業DATA:KeepAlive株式会社(キープアライブ)
本社所在地 | 東京都台東区台東4-8-5 T&T御徒町ビル7階 |
代表取締役会長 | 西田 陽介 成田 敦 |
設立年月 | 2006年7月 |
事業内容 | ITコンサルティング・システムインテグレーション事業 |
掲載企業DATA:株式会社Plan・Do・See(プラン ドゥ シー)
本社所在地 | 東京都千代田区丸の内2-1-1 |
代表取締役会長 | 野田 豊加 |
設立年月 | 1993年4月 |
事業内容 | レストラン・バンケット(ウェディング)・ホテル等の運営、企画 |
スタッフの人手不足や離職に悩む企業が多いなか、安定的な雇用や離職防止のためにはいったい何をすればよいのだろうか? そこで有効な手段の一つが、「福利厚生の充実」や「スタッフ向けの特典といったユニーク制度の導入」だ。一般的に正社員向けの制度と思われがちな福利厚生だが、今回は、アルバイト・パートスタッフに対しても、魅力的な福利厚生やスタッフ支援制度の充実を図っている企業2社に話を伺った。また、独自の制度を展開する5社の企業事例も紹介する。
01. スイーツ会・動物園の年間パス発行で“差別化”(キープアライブ株式会社)
ITコンサルティングやWebサイト構築・デザイン事業を請け負うKeepAlive(キープアライブ)株式会社では、「毎週金曜午後3時にスイーツ会を開催」「上野動物園の年間パスポートを発行」という独自の福利厚生制度を導入している。
「制度を始めたのは、創業翌年の2007年です。求人媒体で募集をかける際、横並びになった企業との差別化につながる取り組みができないかと思ったのがきっかけ。求職者がどの会社に応募しようか迷った時の決め手になれば、と考えたんです。また、面接で“求職者の緊張を和らげるネタ”として活用する狙いもありました」と話すのは、代表取締役の西田陽介氏。
小規模な企業の場合、他社との差別化を図りたくても、コストや時間をかけて社内制度を整備するのは現実的ではない。「2人で始めた小さな会社だからこそ、できることはないか」と考えて、このような福利厚生を思いついたそうだ。
「毎週金曜のスイーツ会」には正社員を含む全スタッフはもちろんのこと、一緒に仕事をしているパートナーや顧客が参加することもあるという。
「“スイーツに対して妥協をしない”のがコンセプト。コンビニ菓子など、どこでも買えるものは避けています。個人では購入を迷ってしまうようなものを中心に選んでいます」と西田氏は話す。例えば、有名高級ケーキ店の商品全種やホールケーキのほか、休日は行列ができる人気店のスイーツを用意しているそう。スタッフを喜ばせるために、スイーツ選びには工夫を怠らない。
もう一つの福利厚生である「上野動物園の年間パスポート発行」は、台東区にある同社ならではの制度だろう。会社の近くに同施設があるため、年間パスポートを申請すれば、好きな時にいつでも動物園に行くことができる。
このような福利厚生制度を取り入れることで、アルバイト・パート募集にどのような成果が見られたのだろうか。
「導入したばかりの頃にアルバイトを募集した際、例年の5~6倍の応募がありました。初めて求人広告を出した影響もありますが、人事担当者から、『スイーツ会や年間パスポートに対して反響があった』と報告を受けています。また、『スイーツ会』は、仕事で関わることがない人たちとも顔を合わせる機会となるので、対人関係が広がるとアルバイトスタッフたちにも好評です」
また、同社では年1回の社員旅行も開催している。基本的にスタッフ全員で話し合って目的地を決め、アルバイトを含めた全社員が参加するスタイルだ。協力会社やクライアントが参加することもあるという。
「前回の社員旅行は札幌でした。選んだ理由は、産休から復帰した女性スタッフの実家が札幌だったこと。女性スタッフは札幌まで子どもと一緒に行き、実家に預けることで社員旅行に参加することができました。スタッフの事情を考慮した柔軟な旅行計画を心がけています」
人材に関する今後の展望について、「雇用形態を問わず、新卒や若手の未経験採用を増やしたいですね。応募の入り口の一つとして、今後も福利厚生制度を役立てていくことができれば」と西田氏は語る。
小さな企業ならではの柔軟な発想から生まれたユニークな制度。社内の風通しの良さを求職者に伝えることが他社との差別化につながり、応募者増加という成果が表れたようだ。
02.美術館や舞台鑑賞をサポートする「Rush to Art」(株式会社プラン ドゥ シー)
レストランやホテルの運営、結婚式の企画などを手がける株式会社Plan・Do・See(プラン ドゥ シー)。同社も、アルバイト・パートスタッフを含む全従業員に対して、さまざまな社内支援制度を設けている。その一つが、スタッフが美術館やコンサート、舞台鑑賞をする際の費用を会社が半額を負担する「Rush to Art(ラッシュ トゥ アート)」だ。
「弊社の店舗にお越しいただくお客さまは、多様な趣味趣向をお持ちです。スタッフが食材やウェディング・サービスにとどまらず、幅広い知識を身に着けることがお客さまの満足につながると考えています。全スタッフが自身のセンスや感性を磨き、より多くの文化や芸術に触れる機会が増えるようサポートする仕組みが『Rush to Art』です」と語るのは、同社人事担当の奥地大佑氏。
「Rush to Art」のほかにも、ホテルの宿泊費を補助する「Rush to Stay(ラッシュ トゥ ステイ)」やレストラン利用の飲食代をサポートする「Rush to Dinner(ラッシュ トゥ ディナー)」などを導入。いずれも同業他社のサービスを顧客として体験することで、さらなるサービス品質向上を図るのが目的だ。
「弊社では、スタッフ自身が顧客としてレストランやホテルを利用する“顧客体験”を重視しています。実際にお客様の立場で接客を受けたり、料理を味わったりして得るものは、マニュアルや人から教わることのできない気づきになるはずです。スタッフ自らが経験した良質なサービスをお客様に還元できればと考えています」
スタッフにとっても、食事や芸術鑑賞を楽しみながら仕事について学び、さらに金銭的な補助が受けられるというメリットたっぷりの制度である。
また、同社はこの制度を利用したスタッフに、レポートの提出を義務付けている。レポートは、全社員が閲覧できるシステムで情報共有しているという。「情報を常にアップデートすることで、スタッフ同士で話題のレストランや注目されているアートの最新情報を引き出すことが可能です」と奥地氏。
正社員のみならず、全てのアルバ イトスタッフにこれらの補助制度を適用することで、さらなる良質なサービスを生む風土づくりに貢献している。今後さらなる人材の強化が必要な同社は、これらの社内支援制度を武器の一つとして、採用強化を検討中だ。
03 まだまだある、ユニークな福利厚生・スタッフ支援制度
このほかにも、アルバイト・パートスタッフを支援するユニークな福利厚生を設けている企業は多数存在する。
スーパーマーケットチェーンの株式会社ヤオコー(埼玉県川越市)が2014年から開催している「ヤオコー大運動会」。当日は全店を一斉休業し、さいたまスーパーアリーナを貸し切って、全スタッフが一堂に会する。チーム対抗の競技のほか、国内外の芸能人によるライブやトークショーといったプログラムも用意。社内イベントとしては異例の豪華さで、ネット上でも大きな話題を呼んだ。
また、「塚田農場」などの居酒屋チェーンで知られる株式会社エー・ピーカンパニー(東京都港区)も、毎年アルバイトスタッフのための「AP感謝祭」という全社員が参加するイベントを開催している。クイズ大会やお笑い芸人ライブのほか、景品総額500万円の抽選会も行われる。普段、多くのアルバイトスタッフに支えられているからこその大盤振る舞いだ。
レジャー・アミューズメント業の株式会社サンエイコンサルティング(岡山県倉敷市)では、毎年4月、アルバイトを含む全従業員に「親孝行手当」として1万円が支給される。また、その後どのような親孝行を行ったか「親孝行レポート」を提出し、従業員同士で共有する。同社は「サンエイは、家族を愛し、仲間と共に未来に向かって、夢中であれ!」という企業理念を掲げている。普段なかなか親孝行をする機会がないなか、企業全体で親孝行を推し進めていく制度だ。
さらに、モバイルサービスの企画・開発・運営などを手がける株式会社ゆめみ(東京都世田谷区)では、福利厚生の一環として、全社員に提携ファームで採れた無農薬野菜セットや果物を配布する「野菜支給制度」を月1回実施している。この制度は、仕事に集中するあまり、食事を簡単にすませてしまうスタッフに「健康への意識を高めてもらいたい」という想いから誕生したという。各スタッフの家族構成や好みに合わせて選択できるよう「ひとり暮らしセット」など数種類を用意。また、「旬の鍋野菜セット」といったレシピに合わせたものも取りそろえ、利用しやすい点がスタッフに人気だという。
マーケティング業を展開する株式会社ALBERT(アルベルト 東京都新宿区)が実施するのは、健康管理に関する福利厚生。長時間のデスクワークが多い環境での能率アップを目的としており、全スタッフは週に1度15分間マッサージを受けることができる。そのほかにも月2回、肩こり解消ストレッチや夏ボディメイクストレッチなど、プロのマッサージ師や専門講師が担当するレッスンを無料で受講可能だ。
どの福利厚生制度も独自性に富み、各企業の特色や工夫が色濃く反映されている。スタッフの活力を生み、雇用促進や離職を防止するための制度は、低コストでもアイデア次第で導入できるチャンスがある。ふとした思いつきやスタッフの声など、ヒントは身近なところに落ちているのかもしれない。