ますます活躍が期待されるシニア層。その採用のポイントをご紹介します。
- 採用課題
これまでのアルバイト・パート職場で中心的な位置を占めていた学生層や主婦層。しかし、少子化の影響で学生層はどんどん減ってきており、主婦層は大手外食フードをはじめ各社が採用強化に乗り出しています。激しい採用競争でなかなか学生や主婦の採用が進まない中、新たにアルバイト・パート職場をメインで支える層として期待が高まっているのが、シニア層です。
実は、日本のシニア層は先進国の中でも特に就業意欲が高く、「いつまでも働きたい」「70歳以上まで働きたい」と考える人が、全体の約70%を占めるほど(※1)。一度採用すれば、長期に渡って職場を支えてくれる可能性が高いため、シニア層は積極的に採用してゆくべきと言えるでしょう。
しかし、現実にシニア層をアルバイトとして採用したことがある方は、実はそれほど多くないのではないでしょうか?今回は、雇いたいけれどどうアプローチしていいか分からない、そんなシニア層を採用するポイントをお伝えします。
シニア層がアルバイトに求めるものは何なのか?
シニア層が「アルバイトに関心を持った理由」とは一体なんでしょうか?ここでは、60歳以上の層をシニア層とし、その特徴をより鮮明にするために、50代のシニア予備軍と見比べながら解説していきましょう。
(※2)
男性のグラフを見てみると、60歳を超えたところで急激に志向性が変化していることが分かります。年金受給が始まる60代に入ると「収入を得る必要がある」という志向性が大幅に減少する一方で、その他の志向性が伸びています。
正社員として働いている割合が高いこの世代の男性は、定年という大きな転換点を迎えるにあたり、それまでの仕事で得られていた「社会との接点」や「チャレンジ」、「社会貢献」といったものをアルバイトに求める傾向が強いようです。シニア層の男性を採用するためには、この3点が重要なカギになるかもしれません。
一方、女性のグラフを見てみると、「社会との接点」を欲する気持ちは年齢とともに明らかに強くなっていくものの、「チャレンジ」と「社会貢献」についてはほぼ横ばいという結果になっています。
もちろん実際には人により様々だとは思いますが、あくまでデータ上で見ると、「チャレンジ」や「社会貢献」といった類の労働意欲は、シニア層の女性の場合、年齢を重ねる中で向上することはあまりないようです。シニア層の女性がアルバイトをしようと思う最大の理由は「社会との接点」であり、この層の採用にあたってはここが一番のポイントになってくると思われます。
シニア層はどんな職種で働きたいと思うのか?
今度は、シニア層の職場選びについて見ていきましょう。こちらのグラフは、シニア予備軍を含む59歳以下の年代の職種の選考を1.0としたとき、60代以上のシニア層がどの職種を好むのかを見たものです(一般求職者調査)。
男性シニア層
女性シニア層
(※2)
男性シニア層が好む職種は、「営業職」「講師」などの専門業種系と、「軽作業」「事務」などの単純作業系に分かれていることが伺えます。先のグラフの「自分のスキルや経験によって社会に貢献したい」という傾向性が、顕著に表れているのが専門業種系だと言えるでしょう。一方、他の年代に比べて自身の体力や仕事を覚えるスピードに不安を抱えていることが多いシニア層が、それでも「社会との接点が欲しい」と思って選ぶのが単純作業系の仕事のようです。
この結果から考えると、男性シニア層の採用のためには、まずターゲットを“知識・経験を活かしたいグループ“と”仕事は不安だが社会との接点が欲しいグループ“に分け、採用したい職場の性質に合ったアプローチをすることが適切だと思われます。例えば、専門業種系の営業職の募集であれば「ベテランの営業スキルを当社で活かしてください!」という文言があると、応募しやすくなるかもしれません。
女性シニア層が好む職種は、「講師・インストラクター」「コールセンター」となっています。やはり「社会との接点」を欲する傾向の強い女性シニア層が、人と関わりの持てる仕事を好んで選ぶ傾向にあるようです。また、男性と比べると好む職種の数が少ないのは、女性シニア層の「チャレンジ」や「社会貢献」などの労働意欲が横ばいであることの表れである可能性があります。
ここから、女性シニア層の採用のためには、まずはその職種がどんなふうに社会と接点を持てるのかを分かり易く伝えることが先決かと思います。例えば、軽作業系の仕事でも「休憩時間には同僚と談笑。ちょっとした会話が息抜きになります」などとアピールすると良いかもしれません。
まとめ
今回は、シニア層の採用のポイントをご紹介しました。
シニアの傾向を明らかにし、それに合わせた対策を提案したのが本稿の特徴です。
・男性シニア層
“知識・経験を活かしたいグループ“と”仕事は不安だが社会との接点が欲しいグループ“に区別し、それぞれに合わせたアプローチを展開すると、採用可能性がUPする。
・女性シニア層
「社会のと接点」を求める傾向にあるので、その職種がどんなふうに社会と接点を持てるのかを分かり易く伝えることで採用可能性がUPする。
今日からの採用活動に、少しでも役立てて頂ければ幸いです。
*photo / photo-ac.com
【出典】 パーソルグループ×東京大学中原淳研究室共同研究「アルバイト・パートの成長創造プロジェクト」(2016) 「パート・アルバイト一般従業員調査/離職者調査」 http://rc.persol-group.co.jp/research/data/hitodata_013 |
※1 平成25年度 内閣府「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」、平成27年度「第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」より
※2 この統計はあくまで便宜上男女別で集計しているだけであり、全ての男女にこの傾向が当てはまるわけではございません。実際の採用にあたっては、その性別に関係なく、求職者ひとりひとりが歩んできたキャリアによってその傾向性を推定し、その傾向性に合わせた対策を取ることが望まれます。
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