面接辞退、採用辞退を防ぐ! 応募者を逃がさない対応集

  • 採用課題

依然として人手不足が続く採用市場。せっかくの貴重な応募者に面接をすっぽかされたり、採用を辞退されたりして、なかなか人を雇えない……と頭を抱える店舗も珍しくありません。しかし、それは応募者に逃げられるNG行動のせいかもしれません。今回は、飲食店を中心としたコンサルティング業務を手がけるアンドワークス代表の加藤雅彦さんと、シニアコンサルタントの武笠彰範さんに、採用活用での対応例を教えてもらいました。

応募者は希望勤務先の何をチェックしている?

加藤さん(左)と武笠さん

加藤さん(左)と武笠さん

加藤 近年、「時給」や「勤務地」はもちろんのこと、「成長できるか」「やりがいはあるか」「楽しく働けるか」といったことを重視する求職者が増えてきています。採用か否かを決める立場のお店は、一見「選ぶ側」に見えます。しかし、求人件数が求職者数を上回っている2014年12月現在、求職者がお店を選ぶ形になっているのが実情。求職者に選ばれないお店、つまり“逃げられる店舗”は、いつまでも人手不足に悩むことになります。

武笠 では、応募を決めた求職者がアルバイト先でまず注意して見るのはどこでしょうか? 答えは、お店のリーダーである「店長」です。なかでも、次のような店長の行動はしっかりとチェックされていると思ってよいでしょう。

求職者は、店長のここを見ている!

  1. 応募時の電話(メール)対応
  2. スタッフへの接し方
  3. 面接中の発言
  4. 採用通知の仕方

1.【応募時の電話(メール)対応】応募者も大切なお客様として接すべし

加藤 “選ばれる店舗”と“逃げられる店舗”の明暗を分ける1つ目のポイントが、応募時の電話(メール)対応です。ここで応募者をがっかりさせれば、応募辞退や面接辞退、あるいは面接のすっぽかしが起こります。

NG

求職者「あの、求人を見て連絡しました。応募したいんですけど……」

店長 「(バタバタしながら)今、忙しいからかけ直してくれる!? ごめんね!」

第一印象の悪い店舗は応募者に逃げられてしまいます

第一印象の悪い店舗は応募者に逃げられてしまいます

加藤 お店が忙しいと、つい目の前のお客様を優先してしまいがち。でも、忙しいことを理由に電話を切られて、求職者がかけ直してくれることはまずありません。加えて、ぞんざいなタメ口は、下に見られたような印象を残し、応募者の気分を害す可能性も。お客様ではないからと優先度を下げて考えるのではなく、「アルバイトに応募してくる電話」は「お客様からの予約の電話」と同じくらい重要だと考えましょう。

OK

求職者「あの、求人を見て連絡しました。応募したいんですけど……」

店長 「ありがとうございます。お名前をお聞きしてもいいですか?」

求職者「○○です」

店長 「○○さん、面接の日時はいつ頃がよいでしょう?」

武笠 時間がない場合は、もちろん「○時頃、こちらからかけ直します」でOKです。とはいえ、その場合は一刻も早くかけ直すよう心掛けて。待たせている間に、別の店舗に応募されてしまうのを防ぐこともできます。これらはメールで応募の連絡を受けた場合も同じです。

2 【スタッフへの接し方】応募者は人間関係もチェックしている!

加藤 面接官が応募者をチェックするように、応募者もお店に一歩足を踏み入れた瞬間から「自分はここで働きたいかどうか」「働きやすい環境かどうか」をチェックし始めます。

NG

店長 「(バックヤードでスタッフに)おい、俺は今から面接だからな。お前、これとこれやっとけよ」

店長 「(出てきて求職者に)お待たせして申し訳ありません。こちらへどうぞ!」

武笠 店長が自分に向ける顔はにこやかでも、バックヤードで発した感じの悪い言葉を漏れ聞いてしまったら、応募者はゾッとするはず。「働き始めたら、自分もあんな対応をされる」と考えれば、どんなに人当たり良く面接をされても働く気にはなれませんよね。応募者は、店長のささいな言動やスタッフへの接し方をしっかりと見定めているのです。

加藤 また、店長がそれとなく漏らす「愚痴」も応募者は聞き逃しません。

NG

店長 「本当に、毎日バタバタしちゃっててさ……」

店長 「忙しすぎて、昨日もあまり寝てないんですよ」

OK

店長 「この頃、大繁盛なんだよ。ありがたいことだよね」

店長 「忙しいけど、みんなが頑張ってくれるから、すごく助かっているよ!」

武笠 同じ「忙しい」という内容でもポジティブな言い方に変えるだけで、お店の雰囲気も、求職者に与える印象もガラリと変わります。

3 【面接中の発言】プライベートな質問は避けて

加藤 本心はどうあれ、面接でこれらの問いに「いいえ」と答える人はいません。相手の人柄を知るためには、イエス・ノーでは答えられことを聞いて、話を広げるのがコツです。

OK

店長 「最近行った飲食店はどこですか?」

応募者 「東京駅にある○○です。ずっと好きで、通っているんです」

店長 「どういった点が気に入られたんでしょう?」

応募者 「雰囲気がすごくいいんです。みんな、仲がよさそうで」

店長 「じゃあ、そういうお店を一緒に作りましょう!」

話を広げつつ、プライベートな質問には注意しましょう

話を広げつつ、プライベートな質問には注意しましょう

武笠 ほかにも、飲食店なら「普段どんなお店で飲むんですか?」「その店は何がおいしかったですか?」といった質問がいいですね。会話のキャッチボールで相手の素の状態を引き出せると、応募者側も「ありのままの自分を受け入れてくれそうだ」と安心できます。

加藤 リラックスして話すためには、座る位置も大切。できれば、医者と患者のように、真正面で向き合わないように座るのがベストですね。ただし、素の状態を引き出すといっても、プライベートについて踏み込みすぎるのはリスキーです。

NG

店長 「32歳なんですね。結婚されるご予定は?」

応募者 「あ、ありません……」

武笠 特に応募者が女性だと、結婚や出産での離職を懸念して「結婚の予定」などを聞きたくなることもありますが、これはやっぱり失礼に当たります。ほかにも、「恋人の有無」のように採用の判断に関係ないプライベートな事情については聞かないのが無難です。

4.【採用通知の仕方】配慮のない言葉に注意

加藤 和やかに面接を終えても、採用の知らせ方によっては応募者に嫌悪感を抱かれることがあります。例えば……。

NG

店長 「先日はありがとうございました。採用です」

応募者 「本当ですか! ありがとうございます」

店長 「あ、はい。で、いつから来られますか?」

武笠 一見、普通のやりとりですが、応募者は「誰でもよかったのかも……」と感じるかもしれません。特に大学生などの若年層は承認欲求の強い人が多いため、傷ついて採用を辞退するケースもあります。人手が足りないお店側からしてみれば、採用した人にはすぐにでも働いてほしいところですが、態度に出してしまうのはNGです。

OK

店長 「先日はありがとうございました。お話を聞いて、○○さんとぜひ一緒に働きたいと思いました。さっそくですが、いつから来られますか?」

武笠 採用通知の時に、「一緒に働きたい」という気持ちを一言添えるだけでも、応募者のモチベーションはぐっと高まりますよ。

スタッフ全員で採用に取り組もう!

加藤 ここまでは、店長に関する注意点を述べてきました。しかし、店長が立派に対応しても、他のスタッフの態度が悪かったのでは“逃げられる店舗”に逆戻り。スタッフ全員が一丸となって採用に取り組める方法をお教えしましょう。

スタッフ全員で採用を成功させる2ステップ

(1) 普段から共通目標をもつ

例) 「今月は言葉使いに気をつけよう!」
「なるべく声を出して、いいムードで働こう!」など

【ポイント】
応募する前に自らお店に足を運んで、店長やスタッフ、お店の雰囲気をチェックする求職者も少なくありません。スタッフみんなの共通目標を作り、普段から感じよく、楽しく働ける店を目指すのが◎。結果的にお客様からの評判もよくなって一石二鳥です。

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(2) 各自の役割を決める

例) 求人中ならば「店長不在時の電話対応」担当、「店長不在時のメール対応」担当、「面接時の案内」担当、「新人ロッカー清掃」担当、「新人ユニフォーム用意」担当など

【ポイント】
各自に役割を設定し、求人中の各々の動き方をシミュレーションしておきます。「店長がいなければ料理長が対応し、面接希望日時を聞いておく」といったルールも設定しておけば、スタッフが電話などで「今、店長がいないのでわかりません」などのぞんざいな対応で応募者の気分を害してしまう事態を防げます。

採用活動もチームワークが大切です

採用活動もチームワークが大切です

加藤 最終的には、スタッフが自発的に自分の役割を果たすようになるのが理想です。例えば、「ユニフォーム用意」担当者が、「新人のサイズは何だろう?」と自ら考えて、在庫を確認する。棚卸しをして、新人のユニフォームを確保しつつ、足りないものがあれば発注もしておく……というように。スタッフが自発的に動ける店舗は、採用だけでなく、接客や運営の面でもうまくいきます。

武笠 こうしたことは、頭ではしなければいけないと理解しながらも、実行に移せないでいる店舗が多数。つまり、取り組めば他店との差別化が図れるはずなのです。2~4月は歓送迎会も多い繁忙期ですが、採用市場も大きく動く時期。ぜひお店が一丸となって協力し合い、新しい仲間を迎え入れられるよう取り組んでみてください!

アンドワークス代表取締役 加藤雅彦、アンドワークスシニアコンサルタント 武笠彰範

加藤雅彦 /Masahiko Katoアンドワークス代表取締役
1971年生まれ。焼肉店「薩摩 牛の蔵」などを経営するとともに飲食店を中心に小売店やホテル、レジャー関連企業まで幅広く人材育成コンサルティングに関わる。主な著書に『お店のバイトはなぜ一週間で辞めるのか』、『飲食店完全バイブル接客の法則50』などがある。
武笠彰範 /Akinori Mukasaアンドワークスシニア・コンサルタント
1983年生まれ。飲食店やバーの業務を経験し、アンドワークスに入社。飲食店のマネージャーや店長を経て、現在はコンサルタントとして飲食店の現場に入り直接指導しているアンドワークス
http://www.andworks.co.jp/

 

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