外国人留学生のアルバイト雇用 実践すべき8つのポイント
- 採用課題
人手不足が深刻化するアルバイトの現場において、労働力として注目が集まる“外国人留学生”。実際に雇用している企業では、「真面目で熱心、よく働いてくれる人が多い!」と評判も上々の様子です。「ウチもぜひ雇いたいけど、どうすればいい?」という店舗や企業のために、アルバイトレポートでは全3回にわたり、留学生雇用をテーマにお送りします。今回は、WEBサイト「外国人雇用.com」を運営する「ACROSEED(アクロシード)」が、留学生雇用のポイントを詳しく伝授! 行政書士の宮川さんと、社会保険労務士の野口さんが教えてくれました。
目次
留学生アルバイトを雇う企業が増えている!
宮川さん(左)と野口さん
宮川 日本学生支援機構の調査によれば、2000年度に約6万人だった国内の留学生数は、2014年度で約2倍以上である14万人近くに増加しました。特に近年は中国・韓国に加えて東南アジアの出身者も急増し、多くの企業が彼らをアルバイトとして雇用し始めています。
人手不足という背景があるのは事実ですが、理由はそれだけではありません。留学生たちは、「学費や家賃を払いたい」「日本式のサービスを学びたい」「日本語の能力をもっと磨きたい」など、働く目的が明確で、熱心に仕事に打ち込む人が多いのです。私たちのお客様である採用担当者からも、「真面目で勉強家が多い」「積極性やガッツがある」との声をよく聞きます。
では、留学生アルバイトを雇うには、どんなことを知っておく必要があるのでしょうか?
アルバイトとして働ける留学生の条件
野口 アルバイトとして雇用する際は、留学生にも労働基準法や最低賃金法など、基本的には日本人と同じ法律が適用されます。
すなわち、留学生であっても労働契約を交わす必要があり、要件を満たせば保険の加入も必須。有給休暇も必要ですし、最低賃金も下回ってはなりません。一度雇えば、よほどの理由がない限り、解雇できない点も日本人と同様です。
唯一異なるのは、出入国管理及び難民認定法が適用される点。入管法では、「アルバイトを行うことができる留学生は、入国管理局から『資格外活動許可』を得ている人のみ」と定めています。
「資格外活動許可」の確認方法
宮川 留学生が「資格外活動許可」を受けている場合には、書類やシールタイプの「資格外活動許可書」が発行されていたり、あるいは、留学生が適法に在留する者であることを示す「在留カード」の裏面に、その旨が書かれていたりします。
宮川 在留カードで確認する場合は、裏面の「資格外活動許可欄」(上図の7)を見てください。ここに、「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」と書かれてあるのか確認してください。あわせて、「在留資格」(上図の3)が留学であるか、「在留期間」(上図の4)が超過していないかも確認しておきましょう。
「許可」を得た留学生が働ける業種&時間
宮川 さて、入国管理局から「資格外活動の許可」をもらっている留学生がアルバイトをするためには、さらなる2つの条件があります。
留学生が働ける「業種」と「時間」
- 業種……次の業種を除く全て:パチンコ店、麻雀店、ゲームセンター、キャバレー、スナックなどの風俗関連の業種
- 時間……1週間の労働時間が合計28時間以内
留学生が複数のアルバイトを掛け持ちしている場合は、他社と合わせて週の労働時間が28時間以内になるよう厳守しなければなりません。自社で雇った留学生が28時間以上働いていたことが発覚すると、本人は在留資格の更新を行えなくなり、雇用していた企業も処罰の対象となりますので注意してください。
留学生の本分は学業。学業優先の立場を理解し、テスト前やテスト期間中には休みを用意するといった配慮をしてあげるとよいでしょう。
「面接」から「雇用」までの8つのポイント
宮川 留学生を採用する場合、踏むべきステップは「面接」「内定」「雇用」など、一般的には日本人と同じです。しかし、留学生ならではのチェックポイントも当然あります。そこで、実践すべきステップとポイントを以下にまとめました。
留学生雇用時の8つのポイント
面接
- 「資格外活動許可」の有無を口頭で確認
応募してきた留学生が「資格外活動許可」を持っていない場合は、契約時までの取得が必須条件。早いうちに確認しておくのがベストです。とはいえ、面接の段階で書類や在留カードの提示まで求めると、プライバシーの問題もあるため、この時点では口頭確認にとどめましょう。
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内定
- 「資格外活動許可」を持っていない留学生に申請を促す
- 留学生に渡すための「労働条件を明記した書類」を準備する
- 留学生と契約を結ぶための「労働契約書」を準備する
雇用後に留学生と揉めがちなのが、労働条件。言語の壁にはばまれて、契約時の意思疎通がうまくできておらず、後から「聞いてない」と言われてしまうケースです。対策として、契約書や労働条件通知書といった書類の準備を。書類は、留学生が読んで理解できる言語で作成するのが理想的です。
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契約
- 「資格外活動許可書」か「在留カード」を見せてもらう
- 「資格外活動許可(上図の7)」が確認できたら、労働条件を明示した書面を交付する
- 留学生が労働条件を理解したら、契約書に署名をもらう
この時点で「資格外活動許可」を得ていることが確認できなければ、労働契約の締結は見送りましょう! 確認を怠れば、不法就労者を雇用する事態も起こりうるため、入管法で不法就労の助長罪に問われる可能性も大。また、資格外活動許可を取らずに働いた留学生は、資格外活動違反になります。
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雇用
- ハローワークに留学生雇用の届け出を行う
この届け出は、企業側に義務付けられているもの。明らかに外国籍の人物を雇いながら届け出なかった場合、指導・勧告の対象となるとともに30万円以下の罰金が科せられます。また、留学生の離職時も、同じ形で届け出ること。いずれも簡単な申請書の記入で済みます。
野口 「労働契約書」「労働条件を明記した書類」で書くべき内容は、日本人向けのものと同じです(労働条件の記載についてはこちらの記事を参照)。
また、ハローワークへ届け出る際は、労働者が雇用保険に加入するか否かで提出する用紙が異なります。留学生アルバイトの場合、保険加入が義務付けられているのは「労災」のみなので、雇用保険に関しては「加入しない」用紙で出すのが一般的です。
マニュアルや研修方法の見直しも必須
宮川 外国人である留学生がわかる言語で契約の書面を作成するのが理想的だということは、すでにお伝えした通りですが、留学生を受け入れるためには、マニュアルの内容や研修の方法も見直す必要があります。雇ってみるとわかることですが、言語の違いを超えるのは意外にハードルが高いもの。こちらが平易な言葉で説明しているように思えても、相手は誤解してしまうケースが多々あるのです。
野口 アルバイトの行動規範となるマニュアルや社則は、彼らがわかる言語で作り直すか、ゆっくり読み聞かせて教える、ふりがなをふって読ませるなどの工夫が必要です。また、実際に仕事を教える研修時も、単語を指さしたり、ジェスチャーを交えたり、ゆっくり話すなどして相手が本当に理解しているかどうかを確かめながら進めましょう。留学生に対応したマニュアルや研修方法を一度整備しておけば、継続的に同じ国出身の留学生を雇うことが可能。店舗の人手不足にお悩みならば、ぜひ一度、留学生の採用も検討してみてください。
宮川真史 /Masashi Miyagawa行政書士法人ACROSEED マネージャー
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野口勝哉 /Katsuya Noguchi社会保険労務士法人ACROSEED 代表社員 |
ACROSEED http://www.acroseed.co.jp/
外国人雇用.com http://koyou.acroseed.com/