最新VR研修を体験!「塚田農場」がアルバイトの研修に力を入れる目的とは?

  • お役立ちインタビュー

国内に241店舗(※)ある「塚田農場」。おいしい料理に加えて随所に細かで丁寧なサービスが盛り込まれているため、学生から社会人にまで人気のお店です。最近では、2017年8月に塚田農場公式アプリをリリースして認知度がより一層高まっているため、あの名刺( “主任” “課長” などの肩書き入り)を持っているという方も更に増えたのではないでしょうか。

そんな「塚田農場」ブランドをはじめ数多くの飲食店を経営する【株式会社エー・ピーカンパニー】では、“食のあるべき姿を追求する”というミッションのもと、食産業の活性化を図っています。

▲生産者・販売者・消費者の相互関係を表したグラフ。
生産から加工、流通、販売までを手掛けています。

特徴的なのは、関連会社・子会社として生産・加工の機能を持っており、養鶏場や加工センターと連携することで、生産から加工・販売までを一気通貫して自社内で完結している点です。一連の流れを自社内で行えることで、生産者は安定した収入が得られ、生産に専念でき、さらには雇用拡大にもつながっています。

具体的には、2004年時点では宮崎県での生産・雇用者数が24農家・6名だったのに対し、2014年時点ではそれぞれ、55農家・110名まで雇用の拡大につながっています。それに伴い、みやざき地頭鶏出荷数も増加し、2014年時点では地頭鶏の生産量が全国3位になっています。

 

【株式会社エー・ピーカンパニー】では、アルバイトスタッフの教育にも力を入れていることが様々なメディアで取り上げられています。

店舗に訪れたことがあるお客様の中には、スタッフの気遣いやサービスを見て「どういった研修を行っているのだろうか?」と興味を持った方もいるのではないでしょうか。そこで今回、アルバイトレポート編集部がその秘密に迫るべく、どのような教育・研修制度があるのか広報の彦坂さんにお話を伺いました。

“宣伝大使”のアルバイトスタッフに、もっと生産者のことを知ってもらいたい

──【株式会社エー・ピーカンパニー】ではアルバイトスタッフ向けに豊富な教育・研修制度があるそうですが、どういったものがあるのでしょうか?

彦坂「細かな研修制度はたくさんあるのですが、代表的なものとしては、生産者とアルバイトをはじめ店舗スタッフが一同に会す“AP万博”や、社内コンペの賞品としての産地研修旅行などがあります。

“AP万博”は、宮崎や鹿児島の地鶏農家や野菜農家、酒蔵などを東京に呼んでアルバイトスタッフの方と実際に交流をしてもらう場です。どういった想いを持っているのか、どのように鶏(ひな)と接しているか、といった生産者の生の声をスタッフに伝えてもらうという内容です。

交流の場を定期的に設けることで、生産者とのつながりを強固なものにするとともに、アルバイトスタッフの口から生産者の伝えたい想いやメッセージを消費者へ送ることができています。

研修旅行は、産地を実際に見学、体験できる研修です。店舗運営力を競う社内コンペの最優秀店舗に与えられる賞品としてプレゼントされます。

アルバイトスタッフに実際に宮崎や鹿児島に行ってもらい、養鶏場や加工場、酒造、野菜農家を訪問し、実際の様子を体験してもらっています。実際に現地へ訪れ、産地の様子を体感することで、実店舗の接客に役立てています。

こうした研修を実施する背景には、アルバイトスタッフに“生産者のことをもっと知ってもらいたい”という考えがあります」

──アルバイトスタッフに“生産者のことをもっと知ってもらいたい”と考える理由は何なのでしょうか?

彦坂「お客様に最も多くの時間接しているのは、アルバイトスタッフです。いわばアルバイトスタッフが塚田農場の宣伝大使なのです。

まず、塚田農場で提供しているメニューが “新鮮” で “美味しい” 理由を、アルバイトスタッフ自らの口で伝えることで、お客様の満足と安心につながります。そしてそれが店舗の売上へとつながり、ひいては、 “食産業の活性化” にもつながると考えています」

 

臨場感のあるVR動画なら“食べる”ことの意味を深く理解してもらえる

──【株式会社エー・ピーカンパニー】では、VR(仮想現実)技術を用いて研修を始めることにしたそうですが、その理由は何でしょうか?

彦坂「今までは、宮崎に研修に訪れた店長・料理長が中心となって、写真などを用いながら現場で感じたことを他のスタッフに伝えてもらっていました。また、一部のアルバイトスタッフはプライベートの旅行でわざわざ産地を見学してくれています。しかし、すべてのアルバイトスタッフに産地での体験を臨場感もって知ってもらうために、2017年7月より、VR(仮想現実)技術を用いた研修を始めることにしました。

現実に限りなく近いかたちで生産加工の場を体験してもらうことで、“誰がどのように生産・加工をしているか”、“生き物が食べ物になる瞬間”を知ることで“食べる”とはどういう行為なのか、ということを体感してもらっています。

実際にVRを体験したことでモチベーションアップにつながったというアルバイトスタッフもいました。接客時や調理時の想いや心遣いに変化が出たと言っていました。自分の口からお客様に伝えたいことが増えるようです」

実際に編集部がVRを体験してみた

彦坂「VR研修は3編に分けて映像を収録しています。せっかくなので実際に体験していただければと思います」

▲アルバイトレポート編集部が実際にVR動画を体験させていただきました。

彦坂「第1編(聖域編)は「日南雛(ひな)センター」で撮影をし、ひなセンターの役割紹介やひなの孵化、ワクチン接種、ひな運搬の様子を映像に収めています。ひなセンターは普段の研修ですら滅多に立ち入ることのできない、まさに聖域。しかしVR研修であれば、その内部の様子を垣間見ることができるのです」

▲雛センターでのワクチン接種の様子(VR動画の画面キャプチャ)

▲ひな育成時の様子。50羽ほどをかごに入れて飼育しています。

▲上下左右約220°の広い範囲で映像が収録されており、
あらゆる角度から映像を見ることができます。
雛視点からの映像も収録されているため見上げると人が見えます。

 

彦坂「第2編(養鶏編)は、“阿萬(あまん)農場”で撮影し、雛が成鶏になるまでを大切に育てている様子を収録しています。農場では、鶏は1~2ヶ月、5~6ヵ月などの月齢ごとに分けて飼育をしています。

人間目線ではなく雛(成鶏)目線から撮影したシーンも数多くあるので、実際に養鶏場に行っても味わえない感覚を体験できます。また、出荷の際は1羽1羽きちんと目視をして出荷ができる状態かどうかを確かめています」

▲雛センターから運ばれて間もない雛。生後半年ほどで出荷される成鶏になります。

▲出荷前の成鶏の撮影シーン(VR動画の画面キャプチャ)

彦坂「第3編(処理加工編)では、“生き物が食べ物に変わる瞬間”を納めています。丁寧に1羽1羽、目視をした上で衛生的に加工をしていることが映像を見ると分かります。

私たちは生き物が食べ物になる瞬間のことを“放血(ほうけつ)”と呼んでいます。よく“屠殺(とさつ)”という言葉が使われることがあると思いますが、血を抜き、臭みを抜く過程で鶏の命をいただく、と考えているため、あえて屠殺とは言わず、“放血”と呼んでいます。

▲処理加工の様子(VR動画の画面キャプチャ)
「かわいそう」ではなく「どう美味しく食べていただくか」だけを考えているとのこと。

▲各加工センターでは月初めに従業員全員で“鶏魂碑(けいこんひ)”に手を合わせ、
鶏に感謝し生産者からのバトンをお店の人につなげているそうです。

 

VRを体験してみての感想

編集部「卵から産まれた雛が、経済動物として“生き物”から“食べ物”へと変わっていく瞬間が、非常にリアルで衝撃が大きかったです。

普段アルバイトスタッフがお店のなかで見る鶏肉は、基本的には加工されていたり、完成されていたりするものばかりだと思います。しかしこのVR研修の動画では、孵化から育成、出荷、調理までの過程が全て分かるので、自分が扱っているものの重みが理解できるようになるのではと思います。

そして、例えば食べ残しをなくすためにはどうやったらお客様に全部美味しく食べ切って頂けるのか、など、色々考え工夫しはじめる良いきっかけになるのではないでしょうか」

 

彦坂「このVRの研修を受けたアルバイトスタッフからもたくさんの感想が寄せられました。

“VR動画を見たことでお客様に伝えたいことが増えた” と言っていたり、“普段お店に届く食材の届くその前の段階が分かるので、調理をするときにより丁寧に調理をしようと思った” と言っているアルバイトスタッフがいました。

VR動画を見ることで生産者に対する理解が深まり、また、スタッフひとりひとりのモチベーションがアップすることで店舗の雰囲気も良くなり、その雰囲気を感じてお客様の満足度向上につながっているので、非常に効果があったと感じています。

現在、このVR研修は本社にてセミナー形式で行っており、体制が整い次第から全国への展開を考えています。反響が良かったのでできるだけ早く全国での展開ができればと考えています」

 

まとめ

「塚田農場」を運営している【株式会社エー・ピーカンパニー】にお話を伺いました。“食のあるべき姿を追求する”というミッションを体現するために様々な制度を取り入れていることをお話いただきました。理念やミッションを成し遂げるためには社員だけでなくアルバイトスタッフをも巻き込む必要性を実感できたのではないでしょうか。

VR研修自体は手軽に導入できるものではないかもしれませんが、その根本にある「アルバイトスタッフに生産者のことを知ってもらい、接客力向上に繋げる」という理念は、応用することができるかもしれません。本稿をご覧いただき、アルバイトスタッフの教育に少しでも気付きをご提供できたなら幸いです。

■取材企業紹介■
【株式会社エー・ピーカンパニー】
VR研修以外にも様々な取り組みを行っており、内外からの評価も高い。経済産業省主催の「おもてなし経営企業選」選出、 農林水産省主催の「優良外食産業表賞」の大臣賞受賞、厚生労働省主催の「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」奨励賞など数々の受賞歴がある。また、ビジネスモデルからくる”顔が見えること”へのこだわりは、アルバイト採用でも徹底している。面接の応募受付を担当しているコンタクトセンターでは、オペレーターの起用に店舗経験を重視。スタッフはコールセンターの素人ばかりだが、勤務地や雰囲気といった希望をヒアリングしつつ、豊富な店舗経験を活かして不安や疑問に対してアドバイス。応募者との距離の近さを何よりも重視した受け答えを徹底する。さらには、応募者情報や店舗情報の集約と共有の際にITを駆使することでマッチングの精度を向上させる取り組みも存在する。こうした取り組みも、公益社団法人企業情報化協会主催「平成 28 年度カスタマーサポート表彰制度」において奨励賞、経済産業省後援「平成29年度サービスホスピタリティ・アワード」奨励賞の連続受賞へと繋がっている。

 

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