若年層の面接辞退を防ぐには – 株式会社じんざい社 代表取締役社長 柘植智幸
- お役立ちインタビュー
「面接のアポイントを直前にキャンセルする」「連絡もなく面接に来ない」などといった悩みを、特に若年層を対象としている採用担当者からよく聞きます。そこで今回は、最近の若年層の傾向と、採用側にできる面接辞退の防止策について、ゆとり教育世代など若年層の採用事情に詳しい人材コンサルタント・柘植智幸氏にうかがいました。
目次
最近の若年層の傾向
~「みんなもしていること」だからすっぽかしても罪悪感はない~
「自分が信頼できると感じる人と出会ったり、自分の甘さに気づくと彼らは大きく変わります。」と語る柘植さん。
面接予約の電話を親がかけてくる、あるいは予約した面接を直前にキャンセルする、何の連絡もなくすっぽかす……といったことが、今、採用の現場で頻繁に起こっています。新卒採用においてもこうした事態が増えており、アルバイト採用の現場ではなおさらです。採用しても突然来なくなり、後日、親が給与だけを取りに来る人も珍しくありません。
こうした一部の若年層のモラルが低下している原因には、彼らを取り巻くいくつかの環境変化やその影響が挙げられます。まずは、親の過保護化とそれによる本人の社会性発達の遅れです。何かあれば親が助けてくれる状況下で育っているため、社会に出て自力でどうにかしようとする社会性が育ちにくいのです。また、ネットの急速な普及により、様々な同世代の意見や行動を多数共有できるようになったことも原因の一つです。周りの友だちやネットを見れば、直前キャンセルやすっぽかしも「みんなもしている普通のこと」と見えてしまい、あまり罪悪感が生じないようです。
ただ、これらは一部の若者であり、すべてではありません。それに、我々の世代に比べ精神的に脆弱な傾向はありますが、自分が信頼できると感じる人に出会ったり、自分の甘さに対する忠告に納得できれば、彼らは大きく変わります。まじめに仕事に取り組み、着実に力をつけて貴重な戦力になってくれます。では、どうすれば彼らをうまく採用・育成していけるのでしょうか。応募・面接時のポイントを見ていきましょう。
採用側にできる面接辞退の防止策
~採用側の対応が、良い人材を逃している場合もある~
日々多くの業務に追われている採用担当者としては、何とか直前キャンセルやすっぽかしに振り回されないようにしたいですよね。そのためには、どうすればよいのでしょうか。
まずは、応募の電話があった時の応対に気をつけることです。例えば飲食店の場合、電話を受けたスタッフは、電話の相手がお客であると想定して受話器を取るため、最初は元気も愛想もよいのに、求職者が「アルバイト募集を見て電話しました」と言った途端、急に声のトーンが下がり、「ああ、店長ですか」とぶっきらぼうになるケースがあります。
中には、店長がアルバイトを募集していることを他スタッフに共有できておらず、「アルバイト募集?」と怪訝な声で聞き返されるようなこともあります。こうしたスタッフの応対ひとつで、応募した若者は、「ネットで見た店の雰囲気と違う」「アットホームと書いてあったのに」とイメージギャップを感じ、尻込みしてしまいます。
彼らはホンネとタテマエにとても敏感で、インターネットなどでの情報収集能力にも長けています。そのため、サイトに掲載されている内容と実際が異なると不信感を持ち、一気に冷めてしまうわけです。
また、「an」がアルバイト・パートを対象に実施した過去の調査結果では、「店舗の雰囲気」「店の対応が悪かった」が面接辞退理由の上位に挙がっています(※1)。つまり、採用側の何気ない対応が知らず知らずのうちに人材採用のチャンスを逃していることも往々にしてあるわけです。
そこで以下に、面接辞退を防止し、面接につなぐための対応策をまとめてみました。ぜひ参考にしてください。
面接辞退を防止するポイント
1、他スタッフとの情報共有を忘れずに
求人募集を出す際はその旨をスタッフに伝え、電話の応対に気をつけてもらう。もしくは、応募があった場合のオペレーション体制を作っておく(店長不在の場合、誰が対応するかなど)。
2、電話対応ができる時間を明記
営業時間内や準備等で手が離せない時間帯など、電話対応が難しい時間があれば、応対しやすい時間帯をあらかじめ表示しておく。(例:応募のご連絡は、午後1時~5時の間で受け付けております)
3、等身大のPRを
企業サイトや広告での表現はできるだけ等身大で、自社の状況や店舗などの雰囲気、オペレーションのあり方に即した内容に徹する。サイトや広告と実際の店舗の雰囲気や応対にギャップを与えないことが大切。
※1)2011年度4月の「求職者行動意識調査」(an調べ)によると、若者の面接辞退の理由として最も多かったのは「他の仕事が決まった」(29.7%)、「行くのが面倒になった」(20.3%)などの『自己都合』。次に、「店の対応が悪かった」(15.7%)など『採用側の対応』、そして「ネットや下見で調べた結果、やめた方が良いと判断した」(14.1%)といった『店舗の条件・雰囲気』と続いている。調査は、全国の15~34歳のアルバイト・パート968人を対象に実施。
柘植智幸 / Tomoyuki Tsuge 1977年大阪生まれ。専門学校卒業後、自分の就職活動の失敗などから大学での就職支援、企業での人財育成事業に取り組む。就職ガイダンス、企業研修、コンサルテーションを実施。組織活性化のコンサルティングや社員教育において新しい視点・発想を取り入れて、人を様々な人財に変化させる手法を開発し、教育のニューリーダーとして注目を集めている。シンクタンクなどでの講演実績も多数あり。「採用崩壊!~若者に好かれる会社、見捨てられる会社~」(同友館)、「ゆとり教育世代の恐怖」(PHP研究所)、「働く哲学」(同友館)など著書多数。 株式会社じんざい社 ホームページ http://jin-zai-sha.jp/ |