上手な「シフト管理」のコツ – ブレインコンサルティングオフィス代表 社会保険労務士 北村庄吾
- お役立ちインタビュー
パート・アルバイトのシフト管理の際に留意すべきなのが、労務コンプライアンスを踏まえた適切な対策を講じられているかという点です。前回に続き、社会保険労務士の北村庄吾氏に、シフト管理で押さえるべきポイントについてうかがいました。
~配偶者控除の範囲内で働きたい従業員の労務管理は?~
平成20年4月に改正されたパートタイム労働法には、労働時間と雇用保険に関して、重要な項目があります。
それは、「1週間の所定労働時間が20時間以上、もしくは31日以上引き続き雇用が見込まれる場合は、雇用保険の被保険者になる」という項目です。企業側にとっては手続きの負担が増え、実際に嘆いておられるところも多いのですが、抜本的な解決策はまだ見当たらないのが実情です。
とはいえ、こうした保険関連の適用基準を担当者として把握しておくことは、労務コンプライアンス対策として重要です。
社会保険の適用基準は、「1日または1週間の勤務時間が、そこで働く一般労働者の所定労働時間のおおむね4分の3以上」となっています。健康保険の被扶養者になるかどうかの目安「年収130万円以上・未満」というのは実は次のステップの話で、社会保険の適用は労働時間が基準なのです。ただし、最低賃金なども若干引き上がってきているので、正社員の所定労働時間のおおむね4分の3未満で働いていても、年収が130万円以上になるケースが増えています。そうなると、配偶者控除内で働きたい人の場合、必然的に労働時間を削っていくことになります。
そこで、考えなくてはいけないのがシフト管理です。
特に、多店舗展開している飲食チェーンなどはアルバイト・パートが労働戦力の主力であり、同時にその分の人件費が経費の半分以上を占めています。その上、正社員という雇用形態の異なる従業員も多かったり、曜日や店舗によって必要な人員数が異なったりします。勤怠管理が煩雑になりがちなだけに、いかに無駄のないシフトを組むかが重要な課題です。
そもそもシフト管理のメリットは、それが残業対策になることです。その対策として変形労働時間制があり、1年、1カ月、1週間単位で労働時間を清算することができます。これは、昭和62年に制定されました。一定期間の中で収まっていれば、労働時間が1日8時間、1週40時間を超えても割り増しがつかない制度です。そのため、この「シフト」を導入する企業が増えたのです。
さらに最近では、細かな法律をいちいちチェックしながら管理するのは相当大変だということで、シフト管理システムを導入するケースが増えています。シフトを管理しながら、店舗ごとにパート・アルバイトの経費が算出でき、規定労働時間をオーバーしそうになると、自動的にアラートが出る勤怠処理システムを活用している企業もあります。
~システムに頼り切らず、多少ゆとりを持たせることも大事~
シフト管理システムの導入は、シフト表を作成する手間を省け、労務管理をスムーズにする手段として有効ですが、ひとつだけ気をつけたい点があります。シフトの組み方にゆとりがなくなってしまいがちなことです。システムを使うと人件費が正確に出るので、最小限の人数でシフトを組もうとしてしまいます。そうすると、働く一人ひとりの業務と責任が重くなりすぎ、逆にモチベーションややる気が低下しかねません。何より多少人員にゆとりがないと、お客様に満足なサービスが提供できなくなる危険性もあるため、そこだけは注意したいところです。
それでも、なるべく人件費を削って効率的に業績をアップさせたいと考えるのであれば、前回お話したように、パート・アルバイトのための評価制度を作り、多少忙しくても頑張って働こうと従業員が思える環境づくりを心がけましょう。
北村 庄吾 / Shogo Kitamura 株式会社ブレインコンサルティングオフィスの代表取締役。社会保険労務士、行政書士。中央大学法学部卒。平成5年度より、受験予備校で社労士試験向け専任講師として活躍。平成13年9月よりクレアールアカデミー(東京・水道橋)を中心に活躍中。いまや常識となった「本試験当日解答速報」「過去問題のデータベース化」「分野別答案演習」など、斬新なアイデアで社労士受験界を変えてきた。 他方、弁護士、会計士等300人以上の有資格者が参加するネットワーク型総合事務所BraiNを主宰。平成18年、プロフェッショナル社会保険労務士ネットワーク(PSR)を立ち上げ、全国規模の事業を展開。 ブレインコンサルティングオフィス HP http://www.e-brain.ne.jp/ |