「権限委譲とエンパワーメントとは?」 人材育成ベーシック 松田尚文

  • お役立ちインタビュー

シフトリーダーや2店目の店長など「店を任せられるようなリーダーがほしい」、そんな声をよく聞きます。
店を安心して任せれられるような、責任感があり主体的で行動力を備え、もちろん成果を出せるリーダー。そんなリーダーを育成するにはどうすればよいのでしょうか?そのカギは「権限委譲」と「エンパワーメント」にあります。
安心して店を任せられるリーダーや次の店長を育成することは、店長の重要な責任のひとつです。しかし、責任感や主体性、行動力を兼ね備え、かつ成果も出せる人材へと育てるのは容易なことではありません。実際の現場でリーダー候補者に聞くと、「上司(店長)が仕事を任せてくれない」、「いきなり任せられても自信がない」という声も多く聞きます。店長が安心して仕事を任すことができ、リーダー候補者自身も自信を持って仕事に取り組めるようにするには二つのことが必要です。

それは権限を持たせることと正しく育成することです。権限を持たせるとは、自分で判断して使える金額を設定したり、決裁できる項目を決めておくことです。例えば、5万円までの経費は自分で判断して使用してもよい、当日の販売強化商品を決定してもよい等です。正しく育成するとは、これらの権限を正しく行使できるように判断の基準を学ばせ、適切でない判断をしないように教えていくことです。これは上司のコントロールのもとに行なわれなければなりません。 これらを教える具体的な育成方法は、次の2つが効果的です。ひとつは「権限委譲」で、もうひとつは「エンパワーメント」です。

「権限委譲」とは、単に権限を譲り任せていくということではありません。判断を要するような仕事の方法や手順、考え方に至るまで上司がきちんと部下に教え、上司のコントロールのもとで実践を繰り返す。そして部下ひとりである程度できるようになったら少しずつ任せていく、それこそが「権限委譲」なのです。例えば、商品発注を権限委譲する場合、店長は部下に発注の仕組みや在庫確認の方法、予想販売数の計算方法など教えていきます。部下に一部の商品について発注書を作成させ、実際の発注前に再度チェックをします。ほぼ間違いなく発注が繰り返しできるようになったら、店長のチェックを徐々に省き、部下に全てを任せていくのです。これによって部下は、自分で責任を持って判断する経験を積み重ね、能力と自信を高めていきます。これが「権限委譲」のトレーニング方法と委譲のプロセスです。

一方、同じように権限を与えて育てていくのですが、そのやり方までも任せてしまう方法があります。これが「エンパワーメント」です。エンパワーメント(Em+Power:パワーを与える)とは部下が目標に対し意欲的に自発的に行なえるよう、現場の自主性を高め、結果につなげるために権限を与えることです。権限だけ与えて仕事を丸投げすることではありません。先ず、店長は部下に、仕事の達成度や目標を明確に伝え、その仕事を行う方法については自由に考えて実行してもらうようにします。自分が考えて計画し、やりたいように行えることでモチベーションは高まります。任せるにあたり、一緒に取り組むスタッフの人数、使用する費用の限度枠など条件だけは示しておきます。そして途中経過の報告を定期的に行なわせます。このように、店長が望む目標に対し部下が自発的に取り組み、部下のやり方で結果を出せるように環境を整え、部下に機会を与えるようにしていくことが「エンパワーメント」です。

これらの方法を活用し、部下が自分で考え、判断し、実行し、成果を出すという経験を積み上げて自立を促すことによってリーダーとしての能力や経験を身につけさせるのです。「権限委譲」と「エンパワーメントリーダーシップ」で自立した強いリーダーを育成して下さい。

松田尚文 / Naohumi Matsuda
日本マクドナルド(株)に17年間在籍し、店長、スーパーバイザー、海外駐在(3年)、本社人事部統括マネージャーを歴任。1993年よりコンサルタントとして活動開始し、1999年人材育成ベーシック社を設立。
コンサルタントとしてメーカー・サービス業・チェーン店企業を中心に、人材育成、チェーンオペレーション開発、人事制度等のコンサルティングを行う。東洋経済社「日本のコンサルタント101名」の1人に選出される。

著書

1999年7月:『八方ふさがりを突破する本物店長マニュアル』明日香出版社
2001年:『実践!強い店長学』明日香出版社
2002年:『飲食店業務マニュアル』アーバンプロデュース社
2003年:『小売店業務マニュアル』アーバンプロデュース社

ページトップへ

 

おすすめの記事