「仕事をきちんと教える」 人材育成ベーシック 松田尚文

  • お役立ちインタビュー

新人を迎える前にやるべき3つの退職防止策について、
「働く環境を整える」では新人が入る前に必要な準備を、
「早期離職を防ぐ人間関係の築き方」では新人が入ってからの人間関係の築き方をご紹介させて頂きました。

連載最終回になる今回は、
新人が入った後、しっかりとした戦力に育てていくにはどうすればよいか?
「仕事をきちんと教える」際に大事になってくる、4つのポイントについてご紹介いたします。

働く環境を整え、人間関係を築くことによって勤務開始直後の早期退職は効果的に防止することができます。しかし、その後も退職を考えることなく店の戦力にしていくには「仕事をきちんと教える」ことが必要です。

仕事をきちんと教えるためには「教えられる人の意欲」、「プログラム」、「トレーナーの能力」、「成功体験」の4つのポイントが欠かせません。ひとつも欠けることなくトレーニングが進むと、仕事に意欲的な人材が増えるとともに早期戦力化が実現でき、退職が発生する可能性はぐっと減ります。

「教えられる人の意欲」は前回で説明したとおりですが、マンツーマンのパートナーが重要で、コミュニケーションは不可欠です。同時に、教えた仕事の理解度をていねいに本人と確認する、仕事を教えるスピードを個別に調整するといった配慮も大切です。本人の後ろについて、常にフォローできる態勢を整えておくと新人も安心感があり、仕事にも意欲的になります。

前向きで意欲的な人材には多くのことを教えやすいのですが、教えるトレーナーによって教える手順や方法、基準が異なると戸惑いや不満が生まれます。そこで手順、方法、基準を明記したマニュアルや手順書を準備します。そして教える項目と進行の順番を定めたトレーニングのチェックリスト、進行予定表もそろえます。これら全てを含めたものが「プログラム」です。プログラムを活用できればトレーニングが正しく効果的に実施され、進行も無駄がなく不満も生じにくくなります。

準備段階が整えば、あとは教える「トレーナーの能力」次第です。トレーナーは経験が豊富で作業も素早くできることも求められますが、最も大切なことはマニュアルや手順書に基づき正しく仕事を行なえることです。もちろん、正しい知識も欠かせません。トレーニングは現場で実践することが基本で、最も効果が上がる極意はやって見せることです。手順や方法のお手本をトレーナーがゆっくりと実践し、それを何回か見せます。相手が充分に理解できるよう1回だけでなく、最低3回は行うとよいでしょう。もちろん見本となるレベルでなければなりません。そのためトレーナーは、正しい方法で模範となるレベルになるまで事前に練習し確認しておきます。トレーナーはこうしたトレーニングができるよう能力アップに努めなければなりません。

トレーナーは相手の意欲も高めなければなりません。相手が認められるレベルになったらそれを本人に伝えます。「素晴らしい」「良くできました!」「いいよ!」など、きちんと認めて褒めることです。これが「成功体験」です。小さな成功でもそれをトレーナーがきちんと認め、褒めることによって自信が生まれます。これをいくつも経験すると、仕事を楽しいと思えるようになるでしょう。

「きちんと教える」とは人材を育成し戦力化することです。そのプロセスのなかで新人は成長し、成功を体験し、同僚と同様な仕事ができることによる仲間入りが果たされます。こうなれば、退職などを考えることもなく、仕事に意欲的に取り組むようになるのです。

「仕事をきちんと教える」を正しく実行し、退職防止と戦力化を同時に手に入れましょう。

松田尚文 / Naohumi Matsuda
日本マクドナルド(株)に17年間在籍し、店長、スーパーバイザー、海外駐在(3年)、本社人事部統括マネージャーを歴任。1993年よりコンサルタントとして活動開始し、1999年人材育成ベーシック社を設立。
コンサルタントとしてメーカー・サービス業・チェーン店企業を中心に、人材育成、チェーンオペレーション開発、人事制度等のコンサルティングを行う。東洋経済社「日本のコンサルタント101名」の1人に選出される。

著書

1999年7月:『八方ふさがりを突破する本物店長マニュアル』明日香出版社
2001年:『実践!強い店長学』明日香出版社
2002年:『飲食店業務マニュアル』アーバンプロデュース社
2003年:『小売店業務マニュアル』アーバンプロデュース社

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