「全国No.1居酒屋のチーム育成術」 – 食彩浪漫 HERO海

  • お役立ちインタビュー

掲載企業DATA:食彩浪漫 HERO

本社所在地 熊本県熊本市手取本町2-17 すがをビル3F
代表 三瀬広海
開店 2007年11月

01 日本一の居酒屋を決めるコンテスト“居酒屋甲子園”

2008年8月20日、パシフィコ横浜で日本一の居酒屋を決める『第3回 居酒屋甲子園』が開催された。コンテストを主催しているのは、外食産業の活性化に取り組むNPO居酒屋甲子園で、“共に学び、共に成長し、共に勝つ”の大会理念に賛同した全国770店舗もの居酒屋が参加。味、店の雰囲気、料理の提供時間、スタッフの気配りなど総合的なサービスを覆面モニター調査で評価し、選りすぐられた6店舗が決勝大会に出場した。決勝大会では、各店舗が店の特徴や取り組みについてVTR映像を交えて自由にプレゼン。来場者のコイン投票により、もっとも感動と気づきを与えた店舗を決定した。
そして、今回、見事に日本一の栄誉に輝いたのは熊本県の『食彩浪漫 HERO海』。実はこの居酒屋は、オープンしてからわずか9ヶ月しか経っていないのだが、短い期間のなかで頂点へと駆け上がることができたのは、なぜなのだろうか? その理由に迫ってみた。

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02 故郷を愛するスタッフが集まった食彩浪漫 HERO海

食彩浪漫 HERO海の代表、三瀬広海さんが生まれたのは熊本県天草市の南に位置する牛深という港町。しかし、江戸時代からカツオ漁で栄えた九州屈指の漁港も、現在は過疎化がすすみ、漁業不振も深刻化している。三瀬さんは、そんな故郷の町に活気を取り戻したかったという。
「やっぱり、牛深という町が好きなんですよね。それに10代の頃はヤンチャをして、周りの方に迷惑をかけたこともあったんで、今は故郷に恩返しがしたいという気持ちが強いんです。そこで、牛深を知ってもらうには、牛深で手に入る新鮮な魚介類を食べてもらうことが一番なんで、そのための場として、ビールと一緒に刺身が楽しめる居酒屋に挑戦したいという気持ちになったんです」
オープンにあたり、三瀬氏はまず自分が一緒に働きたいと思える保育園からの同級生たちにスタッフとして参加してもらえないかと声を掛けた。ダイニングバーやホテルの厨房で働いていた者から、まったく飲食業界に関係がない自動車整備工やニートまで、さまざまな境遇にいた同級生たちが、三瀬氏の真っ直ぐな思いに動かされ、不思議とすんなりスタッフが揃ったという。その後、第二回居酒屋甲子園で優勝した愛知県の店舗で半年間修行し、オペレーションや経営について学んだ三瀬氏は故郷に戻るとメンバーと共に店のコンセプトや接客のマニュアルなどについて、徹底した意思疎通をはかった。そのとき繰り返したのは「人間、やろうと思って、できないことはない。オレたちは死ぬ気でやるぞ」という言葉だった。
そして、2007年11月、食彩浪漫 HERO海がオープン。以来、店内には「この魚、牛深で今朝獲れたばかりなんですよ」といった、牛深産の魚を使ったメニューをおすすめする、スタッフの明るい声がいつも充満している。

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03 “ありがとう”の気持ちを形にすれば、お客様も満足してくれる

食彩浪漫 HERO海 代表 三瀬 広海氏

「お客様に対する“ありがとうございます”という感謝の気持ちが強かったから。それが伝わったのかなと思います」
居酒屋甲子園で日本一に輝いた理由をそう語った三瀬氏。ビルの3階に店舗を構えていることもあって、わざわざ階段を上がって来店してくれるお客様には、常に感謝しているという。
「結婚記念日のお祝いをしたいとう予約が入ったことがあって、そのとき『おめでとうございます』という気持ちをメッセージカードに書いて、さりげなくトイレに貼っておいたんです。そうしたら、カードをご覧になった奥様が涙を流して喜んでくださって。それからというもの、本当に店を応援していただいてるんです。『ありがとう』の気持ちを何とか伝えようとして行動すれば、逆にお客様から『ありがとう』と言ってもらえるんですよね」
そんな感謝の気持ちは随所に表れ、お見送りの際、スタッフはお客様のほうを向いて、顔を見て話をしながら後ろ向きで階段を降りるようにしている。このほうがコミュニケーションを取りやすいからだ。また、お客様ノートをつくって、さまざまなデータを保存したり、トイレの備品を充実させ、脂取り紙、綿棒、マウスウォッシュのほか、夏場は制汗剤を置くなど、細かな心配りも忘れない。この店で働くスタッフ全員が「お客様を感動させたい」という純粋な想いを共有できている。そのことが、そのまま接客に活かされているのだ。

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04 スタッフ同士の深い結びつきがチームを育てる

幼馴染という関係に甘えず本気でぶつかりあう

食彩浪漫 HERO海は幼少期から同じ町で育った5人がスタッフとなって開店した。昔から知っている仲間同士なだけに、やりづらいこともあるのではないだろうか?「小さい頃からの仲間だから、注意しづらいなと感じることもありますよ。でも、幼馴染みだからといって、馴れ合いの関係には絶対になりたくないんです。だから、『もうちょっと、きれいに盛り付けろよ』とか、注意するべきときはお互いにしています。ちょっとしたことで言い争いになることもありますけど、すべては店をもっともっと良くしたいという気持ちから生まれていますから、そうやって言葉や行動にしたとき、幼馴染みが言った意見だからこそ、一言ひとことに重みがあるんですよね」
つまり、お互いがお互いを真剣に思いやっていれば、馴れ合いの関係にはならないということ。「スタッフはみんな本気の付き合いをしています。そして、相手のことを気づかって、励まし合ってきたことが相乗効果になって、お互いを高め合ってこれたんだと思います。だから、自分は仲間がいなければダメなんですよね。仲間がいたから、ココまでこれたんです」 気付いたことは声に出し、チームと共に成長してきた三瀬氏。今後も、「さらに美味しい料理とサービスを追及するため、もっともっと勉強していきたい」と意欲的に語ってくれた。

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05 食彩浪漫 HERO海から何を学ぶか

第3回居酒屋甲子園で日本一となった食彩浪漫 HERO海。その代表である三瀬氏が語るのは、ありがとうの気持ちや情熱は周囲の人間を動かし、どんどんと連鎖していくということだ。そして、お客様に気持ちを伝えるためには、まず働いているスタッフが本気でなければいけない。
だから、食彩浪漫 HERO海は、故郷への深い愛情をベースにスタッフ間の信頼を強め、高いモチベーションとパフォーマンスを維持している。結果、店長として働くものも、調理を担当するものも、「お客様を感動させたい」という想いを共有できている。店として、集団として、理想のイメージを持つことで、スタッフ各々が本気で「良いサービス」に向かって全力で取り組んでいる。だからこそ、常に創意工夫を凝らし、決して仕事には手を抜かないという姿勢を維持できているのかもしれない。
どのような業態の企業であっても、大きくなるにつれシステム化は避けられない。効率化、最適化は必要だ。だが、従業員6名の居酒屋が教えてくれたのは、現場で汗をかいているのは人間であり、人間の心を動かすのは、やはり人間の心でしかないということ。たとえ効率化や最適化を進めたとしても、その裏側で、スタッフ全体でビジョンを共有し、気持ちを一丸とすることは、とても大切だということ。それは、どんな大企業でも同じはずだ。食彩浪漫HERO海は居酒屋甲子園を通じて、そんな基本的なことをさわやかな感動とともに思い出させてくれた。

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