2010年下半期・人材戦略のポイント-求職者の働く理由・辞める理由2010年版

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景気も底を打ち、徐々にではあるが景気が回復に向かいつつある今、
求職者の働く意識にも変化があるのではないだろうか。
昨年、「アルバイト・パートの働く理由、辞める理由」
不況の影響から「生活費を補う」が働く理由第1位になったことをお伝えしたが、
今年はどのように変化したのだろうか?
2010年の求職者の特徴を分析し、人材戦略の方向性を探る。

今月のポイント

生活費を補うために働く層は昨年よりも増えているが、一方で趣味にお金が必要だから働く層も増加。ゆとりのない求職者の心理状況に変化の兆しが見えてきた。
希望する条件を妥協する求職者が増加し、また、他に良い条件の職場が見つからないから働き続ける層も増えたことに注意が必要。流出を防ぐためにも職場では絶えず環境に気を配り、安定した人材確保を行いたい。

INDEX

調査概要

■調査手法:インターネットリサーチ
■調査対象:北海道、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)、東海(愛知)、関西(大阪、京都、兵庫、滋賀)、九州(福岡)在住 かつ  1年以内に非正規雇用に就業した15-34歳の男女

■2010年
・調査時期:2010年3月
・サンプル数: 7,071名

■2009年
・調査時期:2009年3月
・サンプル数:7,608名

■2008年
・調査時期:2008年3月
・サンプル数:8,866名

1 働く理由・辞める理由2010年版

求職者心理に変化の兆し

まずは「働く理由」から見ていこう。

2010年の調査で最多回答となったのは「生活費を補いたかったので」で、50.3%と過半数を超えた(複数回答。以下同様)。前年の2009年も同回答が最多だったが、その割合は42.9%で、1年で7ポイント以上も上昇していることになる。この結果だけを見れば、長引く不景気の影響はさらに拡大しているとも思える。しかし、2位以下を見てみると一概にそうは言えないことに気づく。

2010年に2位となった回答は「趣味に使うお金が欲しかったので」で39.2%。これも前年より3ポイント上回った。また、4位だった「時間を有効に使いたかったので」も34.5%と、わずかであるが前年より1ポイントアップしている。

以上から、働くことが生活費と直結している求職者が多い状況に変わりはないものの、求職者の心理状態には変化の兆しも現れていることが、2010年と2009年の「働く理由」の比較から見て取れる。

一方、「辞める理由」はどうだろう。2010年での最多回答は「店長や社員の人の雰囲気が悪いから」で、23.8%。2009年も最多回答は同じで、割合も24.2%とほとんど差がなかった。ここでは、上位で違いが出た「楽ではない、疲れる仕事だから」と「給与が低いから」の2つの回答に着目したい。前者が2009年は15.0%だったのに対し、2010年では15.9%とわずかだが上昇している。対して、後者の回答は2009年が16.1%だったが、2010年は13.8%と逆に下げが目立った。

この変化から、2010年は給料よりも仕事内容が辞めるきっかけになる傾向が強まった、とも考えられる。その点で「働く理由」と同様、就業者の心理状態に変化が生じていることが感じられる。

図1:働く理由

図2:辞める理由

2 2010年・求職者の特徴

「給与を妥協して就業」が浮き彫りに

別のデータ比較からも、2010年の特徴を探ってみたい。

まず「就業に際しての妥協点」について、回答の第1位となったのは33.1%を占めた「特に妥協したことはない」。この数字は、2008年の結果より9ポイント近く下げている。対して、2位となった「給与を妥協した」は、2008年は26.9%だったのが、2010年には30.9%となり、逆に4ポイント上昇している。次に、「仕事を続ける理由」では、2010年と2008年ともに、各回答の数値はよく似ているものの、その中で「ほかにもっとよい条件がないから」の上昇が目を引く。この2年間で、5ポイント近くも上げているからだ。

これらの結果から、給与を妥協しても就業を優先し、その一方でほかに良い条件の職場がなく、結果として働き続けているといった就業者の姿が浮き彫りになってくる。

採用側にとって注意が必要なのは、このように妥協して仕事を選び、好条件の就業先がないため働き続けている就業者の存在だ。なぜなら、これは裏を返せば好条件の募集があればすぐに移る可能性があるということだからだ。従って、職場環境については絶えず見直し、より良くしていくことが、人材の定着には必要になってくる。景気回復が進み好条件の募集が増えてくるという意味でも、2010年下半期は、先を見越して今のうちに人材確保のための手を打っておくことが非常に重要な時期だと言えるだろう。

図3:就業に際しての妥協点

図4:続ける理由

vol.37 : PDFダウンロード

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