「本気の朝礼」でスタッフのやる気を引き出すてっぺん

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掲載企業DATA:株式会社てっぺん

株式会社てっぺん

本社所在地  東京都渋谷区宇田川町2-1 渋谷ホームズ209
代表取締役社長 大嶋啓介
設立年月日  2003年7月7日
事業内容 飲食店経営およびセミナー事業運営 株式会社てっぺん

01 毎日15分の朝礼がやる気とチームワークを引き出す

専務取締役の薄田典靖氏専務取締役の薄田典靖氏。創業者・大嶋啓介氏の信頼も厚く、同氏の右腕として、てっぺんを統括する。

大きな声で夢や目標を語る「本気の朝礼」で、日本一元気な居酒屋を目指している株式会社てっぺん。毎日わずか15分の朝礼で、アルバイトや社員を含めたスタッフ全員の夢とやる気に火をつけ、熱いチームに変身させるという。

通常の朝礼というと、業務についての報告・連絡、情報や理念の共有、その日やその週の目標の確認などが中心。しかし、てっぺんではこれらのことは朝礼前のミーティングですべて済ませている。

では、てっぺんの朝礼ではどんなことが行われているのだろうか。そのほとんどが、スタッフ一人ひとりが手を挙げて「伝える力」や「聴く力」を磨くスピーチ訓練、自分の夢や目標を宣言するナンバーワン宣言、そしてとびきりの笑顔と大きな声で行われる本気のあいさつ訓練に費やされるのだ。

この本気の朝礼がスタッフのモチベーションを引き出し、いつも元気いっぱいなハイテンション状態に持っていく。笑顔と大きな声を出すことで、自然とモチベーションが上がり、目の前の仕事に集中できるようになる。朝礼を毎日続けることで、スタッフ全員がお互いの夢を共有し、最高の人間関係と最強のチームワークが築くことが可能となるという。てっぺんでは、この本気の朝礼を通じてスタッフのメンタル面を強化し、スピーディーな人材育成を図っているのだ。

同社専務取締役の薄田典靖氏は、「朝礼が終わる17時の開店時は、スタッフ全員、最高の心の状態で、お客さまをお迎えします。そして最高の状態で営業がスタートできるのです」と語る。

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02  てっぺんで働くかは応募者自身が朝礼に参加して判断

てっぺんのスタッフは、社員約9割、アルバイト約1割という構成。てっぺんでは“独立道場”という言葉を掲げるだけあって、社員のほとんどは将来的には自分のお店を持ちたいという独立開業を志望している。「一応3年間を区切りに、その中で店長を経験して、独立することを前提として採用しています。当社は自分の夢をかなえるための修行の場、己を磨く道場であると位置づけています」と薄田氏

一体、てっぺんではどのようにして、意識が高く優秀な人材を集めることに成功しているのか。てっぺんでは採用条件に「てっぺんザ・ルール」に共感できる人を挙げ、方針として「目標日本一」「いつでも本気。100%参加」などを掲げる。そのため、アルバイトであっても中途半端な気持ちで入ってくるメンバーはいない。大学の学業と並行して、てっぺんでは人間力の磨き方を学び、将来の夢の実現のために自分を成長させたいという学生が多い。それだけに社員、アルバイトとも、当初からモチベーションが高い人材が集まるというわけだ。

また採用方法もユニークで、面接後は朝礼に参加して、志望動機などをスピーチしてもらう。そのうえで、応募者自身がてっぺんで働くかどうかの最終的な判断、自分で決めるというスタイルを取っている。そのため、採用後にてっぺんの朝礼になじめないというメンバーは皆無で、スタッフ全員の意識は極めて高い。

「多少の個人差はありますけど、自分で覚悟を決めてきたメンバーばかり。今日もやるぞって決めて出勤してきているし、朝礼のときに手を挙げないメンバーはまずいません」

独立して自分の店を持ちたいという起業精神旺盛なスタッフにとって、ここは「夢」を育む場でもある。

朝礼以外にスタッフ同士のコミュニケーションやフォローアップにも学ぶべきことは多い。日本一の居酒屋を目指しているので、当然厳しい指示になることもある。叱ることを躊躇する現場が多い中、てっぺんでは相手のことを真剣に考えるからこそ、きちんと相手を叱る。相手に本音を伝え、本気で関わることを大切にする。「お互いに信頼関係があれば、厳しく言われても素直に聞けると思うんですよ。相手の夢を知っているからこそ、当人のためには、これは伝えてあげなきゃ、これは言っとかなきゃとなりますよね」と薄田氏は強調する。

また、自分の夢や目標をしっかり朝礼で主張できるような人を採用しているとはいえ、採用後に迷いが生じたり、夢を一時見失いそうになったりする人もいる。その場合も、柔軟にフォローしている。

「ケースにもよりますが、周囲の人の夢を一緒に追いかけてみてはどうか、などとアドバイスしていますね。実際に、先輩の夢を一緒に追いかけて独立した人もいます」

さらに同社の特徴としてあげられるのが、店長は1年ごとの交代制で、スタッフ全員の選挙で選ばれること。立候補者も多く、スタッフの半数が立候補する。

「店長というのは、文字通りお店のトップ。一番大きな責任を担うことで、ほかの誰よりも一番成長するんです。一人でも多くのメンバーに成長してほしいし、均等に成長の機会を与えたいということで、店長1年交代制になったんです」

アルバイトからでも店長に立候補できるぶん、接客はもちろん、食材の仕入れから売り上げ管理まで、アルバイト、社員の仕事に線引きはない。また、スタッフ全員がクリアすべき社員条件も設けられている。その社員条件とは、1.仕事の基本的な心得10カ条、2.朝礼の仕切り、3.公開朝礼の前にお客さまに朝礼の目的などの説明ができること、4.各スタッフの誕生会開催の仕切りができることの4つ。この社員条件はスタッフ全員の承認があって合格となり、1つずつステップアップしていく仕組み。すべてクリアすることが店長に立候補できる条件にもなっている。

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03 「本気の朝礼」を公開する理由

このような本気の朝礼は、てっぺんの創業者であり、同社代表取締役社長の大嶋啓介氏が始めたもの。同氏が独立する前、勤めていた居酒屋をどうしたら繁盛させられるかを模索していたころ、多くの研修やいろいろな会社の朝礼に参加して、“いいとこどり”で形にしていったものだという。

通常なら、競争力維持のためにこうした人材育成のノウハウは非公開の企業も多いが、てっぺんでは、この朝礼を一般客も含めて誰もが参加できる公開制にしているのも大きな特徴となっている。

朝礼が始まると、店内は一気に元気、パワー、笑顔、熱気が充満し、ハイテンションの状態で開店を迎える。朝礼が始まると、店内は一気に元気、パワー、笑顔、熱気が充満し、ハイテンションの状態で開店を迎える。

「てっぺんの大きな目標・使命として、『居酒屋から日本中を明るく元気にしたい』という思いがあるんです。そのため、同業者はもちろん、たくさんの方に朝礼に参加していただき、少しでも元気になっていただきたいのです。自分のところだけ繁盛すればいいのではなく、“共に学び、共に成長して、共に勝つ”ことを大切にしています」。

ほかにも、外部の人間が参加することで見られているという意識が生まれ、刺激が常にある状態で朝礼が行えるという効果もある。

「例えば、北海道のような遠方から朝礼を見に来たんだよと言われると、メンバーも襟を正しますし、一期一会ではないですけど、出会いを大切にしたいという思いや、熱い思いを伝えたいという気持ちも働きますから」

同社の朝礼の参加者は年間約1万人、累計では10万人を超える。てっぺんのエッセンスを取り入れた朝礼は、企業ばかりではなく、高校の部活動や小学校でも行われているという。

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04 “ヒト”重視を軸にスキル向上の仕組みづくり目指す

今後はスキル面の充実も図るという。とはいえ、「本人にやる気がなければいいものは生まれない」と“ヒト”への思いが根底にある。今後はスキル面の充実も図るという。とはいえ、「本人にやる気がなければいいものは生まれない」と“ヒト”への思いが根底にある。

てっぺんが今後目指すビジョンは、1つは世界に通用するビジネスモデルになりたいということ。そしてもう1つは、てっぺんの朝礼が日本中の企業や学校に取り入れられ、少しでも日本が明るく元気になることに貢献したいという。

「学生アルバイトの90%は飲食業に就くといわれています。その業界がちょっとでも元気で、人に夢を与えられるような環境になれば、日本が良くなることにつながるし、そんな大きな志を持って働いてほしい」と薄田氏は語る。

今は精神面ばかりにスポットが当たっている同社の人材育成だが、今後は、より効率的に知識やスキルを成長させる仕組みづくりも計画されている。ただ、「どんなにいい腕や技術をもっていたとしても、本人にやる気がなければいいものは生まれないと思うんですよ。いい人材でなければ、いいサービスは生まれないし、おいしい料理だってできませんから」と薄田氏が強調するように、企業のベースにあるのはあくまでも“ヒト”であるとの強い思いはぶれない。

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