10~20代の“生活&はたらく”を徹底解剖『若年層白書2012』vol.3/将来の『はたらく』をどう見ているか

  • 求職者動向

 

アルバイトレポートでは、15歳~25歳までの若年層の生活スタイルやアルバイトに対する意識、将来のとらえ方を調査し、3回にわたってその結果をお届けしている。
第2回目の調査で、若年層の中にはアルバイトでの経験や知識を、就職など将来につなげたいと考えている人が少なくないとわかった。第3回では、そんな若年層が、実際のところ将来の「はたらく」をどう見ているのか。さらに深く掘り下げ、考察していきたい。

調査概要

  • 調査名:若年層ライフスタイル調査
  • 調査期間:2012年4月20日~22日
  • 調査エリア:全国
  • 調査対象:15歳~25歳の男女で、下記条件を満たす人
  • これまでにアルバイト・パート経験がある人
  • アルバイト経験はないが、アルバイトをしたいと思っている人
  • サンプル数:2,447 (これまでにアルバイト・パート経験がある人:1,227)

※原稿内の「大学生」は、短大生、大学院生を含む
※「やりたい仕事」「やりがい」のタイプはアルバイトレポート編集部の独自カテゴライズによるもの

若年層にとって「将来=就職」

「将来」と言われてイメージするものを尋ねたところ、全体平均では「就職」(46.7%)、「社会人生活」(20.1%)で合計66.8%を占めている。中でも大学生の場合は「就職」だけで61.4%を占めており、「社会人生活」(22.4%)を足すと83.8%と、彼らにとって「将来」と言えば、「就職」と直結していることがわかる。(グラフ1)

また、数字だけの紹介となるが、「将来のことを誰に相談するか」と聞くと、圧倒的に「親」が多く、全体の65.5%を占めた。大学生だと69.7%にのぼる。第2回で紹介したアルバイトについての相談相手は「親」、「友達」、「誰にも相談しない」が多かったが、将来のことに関しては「親」が圧倒的に多く、相談しない人は10.6%ほどしかいなかった。近年、親子の関係が密接になり、大学生の就活も親の役割が高まっているという話題が多いが、そうした背景が結果となって表れているようだ。

グラフ1:将来のイメージ

働くのは「自己実現」よりも「お金を稼ぐため」

「社会人になって働くのは何のためだと思うか」をたずねたところ、「お金を稼ぐため」が最も多く、64.2%。次に多いのが「生活するため」(49.2%)、「自立するため」(33.0%)で、「人として成長するため」(17.9%)、「社会に貢献するため」(14.4%)、「自己実現のため」(12.3%)などよりも、はるかに多かった。若年層の多くは、夢や何かを成し遂げるためというよりは、現実的に「はたらく」を見つめていることがこのデータから浮かび上がってきた。(グラフ2)

グラフ2:なぜ働くか?

若年層が「やりたい仕事」は具体的でわかりやすい職種

そんな彼らが、将来、やりたいと思っている仕事は何か。自由記述でたずねたところ50.0%が「プログラマー」や「看護婦」「教師」「家電製品の開発」「営業」などといった、ある特定の業種や職種を回答した。また、学校の専攻に関係ありそうなもの、例えば「情報科学の研究職」「微生物の研究」「看護師」「医師」や、自分たちの生活に身近で、若年層でもその商品やサービスに触れることが多い「ゲームクリエイター」「声優」「イラストレーター/アニメーター」「教師」といった仕事も多かった。

「抽象的な仕事のイメージ」の回答は12.6%で、「楽しそうな仕事」「人と関わる仕事」「自分を生かせる仕事」「役に立つ仕事」などが挙がっている。なかでも、「自分の特性を生かせるもの」「向いている仕事」といった具合に自分に合っているかどうか、そして人や社会に役立つ仕事かどうかを重視する人が目立った。

また、「特になし」「わからない」などの回答も37.2%と多かった。約4割が「やりたい仕事」のイメージがまったくつかめていないようだ。

グラフ3:「やりたい仕事」の図

求める「やりがい」は人からの感謝

さらに、「仕事にやりがいを感じるのはどんな瞬間か」についても、自由記述で聞いてみたところ、回答は大きく次の3タイプに分かれた。(図1)

1)自分満足追求タイプ

達成感や充実感など、自分自身の満足度が上がったときにやりがいを感じるタイプ

2)相手貢献追求タイプ

お客から感謝や「ありがとう」の言葉をもらったり、自分の「はたらき」に対して何らかの結果や評価、報酬が得られたなど、人からの反応があったときにやりがいを感じるタイプ

3)社会影響追求タイプ

社会に対して何らかの影響を及ぼせたときにやりがいを感じるタイプ

最も多かったのは、「相手貢献追求タイプ」だ。特に「やりたい仕事」として、「販売/店員」を挙げた人にこのタイプが多く、相手から「ありがとう」などと感謝されたり、自分のサービスに対して喜んでもらえたときという回答が圧倒的に目立った。第2回目のレポートで、アルバイトでやる気が出るのは「人に褒められたとき」が多かったのだが、就職もその延長で、感謝や人からの評価が得られる仕事に就きたいと考えるようだ。

一方、「やりたい仕事」として「IT系」「商品開発」「クリエイティブ」など、ものづくりに関わる仕事を挙げた人には、「自分満足追求タイプ」と「社会影響追求タイプ」が多く、「自己満足追求タイプ」は「一つの仕事をやり遂げたとき」「成果が出た時」、「社会影響追求タイプ」は、「自分の考えた商品が実物化すること」「研究が生かされたとき」といったやりがいをそれぞれ求めていることもわかった。

図表4:「やりがい」のタイプ図

「将来」と言われ、イメージするのは就職で、悩んだときの相談相手は親。就職は「お金を稼ぐため」であり、やりたい仕事は、見聞きしたことのある業種や職種、やりがいとして求めるものは、「感謝されること」や「褒められること」。第3回目のレポートで浮き彫りになった若年層の仕事観、職業観を一気に並べてみたが、いかがだろうか。特に「やりたい仕事」が、比較的身近で見聞きできる業種・職種が多いこと、主な相談相手が「親」であることなどから、案外狭い視野と行動範囲の中で、将来の職業選択を行っているようにも感じられる。そのため、なかなか日常生活の中では出会えない仕事についても、その存在をまず知ることができるような場の提供が、若者の就業において重要な意味を持つのではないだろうか。

まとめ

以上、3回にわたって若年層の「生活&はたらく」に関する意識・行動について紹介してきた。

 第1回「ライフスタイル」では、うまくバランスをとって友人関係を保持しようとしていたり、漠然と人生に悩みを感じたりしている若者像が浮かび上がった。また第2回の「アルバイト観」では、多くの人がアルバイト経験を自身の成長やスキル向上など今後に役立てようという考えを持っているものの、やる気をアップさせるものは自分自身の成長や達成感よりも、「褒められるとき」など他者からの評価であることが明らかになった。さらに第3回の「仕事観」でもまた、他者からの感謝が仕事のやりがいと感じる傾向が見られた。

特にアルバイトや仕事に関しては、自分で目標を設定して達成していくよりも、与えられた目標を達成し、評価されることを求める傾向が強いようだ。アルバイト経験を就職など将来にも役立てたいと考える若年層も多かったことを踏まえると、アルバイトも社員登用を見据えて採用するなど、若者の特性やモチベーションをプラスにとらえて、彼らを生かす目標設定やアルバイト採用を行っていく努力が、若年層を雇用する上でますます重要になってくるのではないだろうか。

アルバイトとしても新入社員としても、若い力をうまく活用し、主戦力に育てるために、3回に分けてお伝えしてきた「若年層白書」が少しでもヒントになれば幸いだ。

『第1回 若年層のライフスタイル』記事を見る

『第2回 若年層のアルバイトに関するイメージと意識・行動』記事を見る

vol.57 : PDFダウンロード

若年層白書 全文

成長環境やライフスタイル、アルバイト事情から将来の仕事観まで、若年層の特性をまとめて読む。

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