コスプレイヤーはアルバイト人材としても万能だという説をイベントに潜入して検証!

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コスプレイヤーはアルバイト人材としても万能だという説をイベントに潜入して検証!

アニメなどのキャラクターの衣装を着込んでばっちりメイク、目を剥くような出で立ちで、普通の人々の理解の外側にいるのがレイヤーことコスプレイヤー。そんなコスプレイヤーに対して優秀人材掘り起こしに命がけの「アルバイトレポート」がとうとう目をつけた!

「複雑な衣装制作からパフォーマンスまでキャラクターにまつわるアレコレをトータルで自己プロデュースできるその力は、働く人材としても万能なはず!」というコスプレイヤー万能説をぶちあげたのだ。

それを今回検証するのは、ボーカロイド音楽を商業誌で初めて掲載するなど同人文化と無縁ではない音楽雑誌「月刊歌謡曲(ゲッカヨ)」の編集長を務めていた清水りょういち(Twitter@gekkayoboss)。「コスプレイヤーは人材としても万能」を検証するべく依頼を受け、東京タワーの麓で開催されたコスプレイベントに副編集長で妻の清水葉子(Twitter@gekkayo)とともに潜入してきました!

時は2015年6月7日(日)。場所は東京タワーの麓に位置する東京タワースタジオで開かれたのが、コスプレイヤーが世界各国から集結するというイベント「Cool Japan国際交流会(International Event of Cool Japan)」。コスプレなどのサブカルチャーを外国人留学生とともに楽しもうというコンセプトです。

ここです!

目の前は存在感あふれる東京タワー。
入口は至って普通なので心配になりましたが、

中に入ると開演前ですがコスプレイヤーの方々が続々集結し始めていました。なるほど、確かに明らかに留学生っぽい人がたくさんいます。

スタジオ奥にプロジェクター映像が映し出されていて近未来な感じ。そうこうしている内にイベントが始まりました。

影絵に合わせてモンスターをバッサリ斬ったりする高等技術を見せつけてくれた霜月紫さん。世界コスプレサミット2012の世界覇者!

テニプリこと「テニスの王子様」キャラでラケットぶんぶんしていたり、初音ミクなどのボカロキャラ(ボーカロイド・キャラクター)に扮して歌っていたり。

その様子を真剣に見つめたり、写真を撮るお客さん。

不思議な人も見ています。

ステージ終了、記念撮影はカオス。

ということでそんなカオスなコスプレイヤーの方々にいよいよアルバイト話を聞いてみることにします。

■ コスプレイヤーのバイト観

● 一社にひとり、コスプレイヤー!

まずはアイマスこと「アイドルマスターシンデレラガールズ」の島村卯月コスをしていた23才の刹菜(せつな)さん。高校時代から始めたということでコスプレ歴は約7年のベテランさん。コスプレ好きが高じて被服系の学校に入って洋裁・和裁の検定も取っているツワモノ。

高校時代からずっとファーストフード店でアルバイトをしているそう。 「長く続けているので(お休みの)融通がきくんですよね。イベントではいろいろな人と交流するので、接客は得意ですね。誰とでも仲良くなれます! あとイベントの時にお休みをもらえさえすれば、あとは一生懸命がんばります(笑)。レイヤーはお金がかかるので」

そんな彼女の強みはいろいろ。
「こうした衣装も売っているわけではなく自分で作るので、手先は器用になりました。アニメやマンガの衣装って、複雑なのが多いんですよね。衣装だけじゃなくてウィッグのカットもするし、小物も作るんですけど…。例えば「進撃の巨人」の立体機動装置とか。マニュアルがあるわけではないので絵を見て考えるしかないので。器用さの上に考える力も要求されるんですよ」

ということで彼女のオススメ なのが、
「一社にひとり、コスプレイヤー!
手先も器用だし、いろいろ考える力もあるし、人と接するのも得意な人が多い上に、イベント締め切りのために徹夜も大丈夫な体力もあるんで、もう万能ですよ!」とのこと。
確かに言われてみると仕事力に通じるスキルなのかも。なるほどー。

● 職場って、人間。一緒に働く人が良ければ良い職場!

そしてマスクを取るとイケメンだけど、コスプレ時はマスクをしているのでわからない、「東京喰種トーキョーグール」カネキ姿の年令非公開の男性、コスプレ歴4年のまじめさん。こんな状態で”まじめ”さん。ステージではキレッキレのダンスを披露していました。

「東京湾の屋形船のアルバイトやレストランのホールなど、学生時代はいろいろなアルバイトを経験しました。やったことが無いことをやるのが好きで。今はごく普通の一般企業に勤めています。会社では大人しい方だと思います(笑)」

屋形船のアルバイトでは船の底から屋根の上まで清掃するなど、ハードながら楽しく働いていたそう。
「基本ビクビクしているんですけど、怖いもの見たさ・知りたさでいろいろ挑戦してしまうんですよね。4年前にコミケ(コミックマーケット)に行った時も、みんなが楽しそうなので、つい。あとコスプレ同様かたちから入るタイプなので、アルバイト先の制服を着るとスイッチが入りましたね。屋形船の時はハチマキをギュッとするとたちまちピシっと(笑)」

制服もコスプレ…。確かにそんな気がしてきます。そんな彼に働きやすい職場について聞いてみました。
「理解のある上司ですね。結局職場って人だと思うんです。良い人柄の上司や同僚がいればのびのび頑張れるから。ただどんな職場だってストレスが溜まる時があるのもわかってます。だからコスプレ。こうしていることで精神のバランスを保っている部分はありますね」

● コスプレイヤーは裏方の仕事にも向いている!?

もともとアルバイトをしながらタレントを目指していたというコスプレ歴半年の新参レイヤー、「アイドルマスターシンデレラガールズ」渋谷凛コスのぱーるさん・23才。現在はタレントとマンション・オーナーをやっているそうで…。ええっ!?

「友だちが「踊ってみた」(ニコニコ動画のダンス投稿)をやっていて、誘われるがままライブでコスプレして踊ったら見事にハマりました(笑)。それまで全然興味なかったんですけど。なので私の中ではコスプレはイコール、コスプレパフォーマンスで、踊っている時が一番楽しいですね」

わずか半年前にコスプレを始めた彼女。しかしその効果は絶大で、タレントの仕事が一気に増えたとか。アルバイトはコンビニで接客から発注までこなし、そしてタレント活動を本格化するために一人暮らしを始めた時にはホテルの清掃の仕事を2年くらいやっていたそう。
「コスプレの衣装制作ってすごく地味な作業。コツコツもくもくとやっていくこと。それに共通していたのがホテルの清掃。誰とも話すことなく淡々とシーツを変えていく、そんな仕事が意外と性に合ってたんです。お客さんがベッドの上で暴れてシーツが破れた時には縫い物の腕を買われてよく指名されました(笑)」
ベッドの上で暴れる?……それってつまり……!?

そんな彼女は裏方があるからこそ表の仕事が成立するということを語ってくれた。
「コスプレもほとんどはそうした衣装を作るなどのコツコツとした作業がほとんど。その上でステージにやっと立てる。でも裏方仕事がなくちゃできないんですよね。なのでコスプレイヤーは派手な表に立つ仕事もできるかもしれないけど、人知れずコツコツやる作業にも向いていると思います。イベントの締め切りに向けて徹夜などの無理をするのも大丈夫ですし(笑)」

● 「進撃の巨人」はカナダからやって来ました

会場全景を撮影している時にやたらと写り込んでいた巨人。大きさが人間サイズだと「バンテリンコーワ」にも見えてしまう巨人。その正体は3月に初来日したという22才のカナダ人の経営を学ぶ留学生、ヤシン・ベンヘンネタさんでした。

本国カナダで約11万人を動員するアニメ系イベント「オタクトン」で一年前からコスプレを始めたそう。目覚めたきっかけのアニメは「Angel Beats!(エンジェル ビーツ)」。本格的な発音で言われると違う作品のような気がしてしまいます。

日本語の勉強は2年間+アニメでの自主トレ。日常会話は普通にペラペラでした。
「神社とお寺とアニメが好きデス。コスプレは……、イベントの時しかシナイヨ」
と言いますが、日本人もまあ日常生活では普通コスプレしてません。

「コスプレして、ダンスして人を笑わせるのがスキ。いろんな人に話しかけてもらえるのがタノシイヨ」
と終始ニコニコ。カナダではクルマ関係のコールセンターでアルバイトしていたそうです。
「楽しくはなかったけど、お金が欲しかったからネ」とドライに割り切って仕事してたんだとか。

コスプレという同じ趣味があるからというのもあるんだろうけど、種々雑多な国籍の人たちと普通に笑顔で交流できているのには驚きました。
日本語、英語、中国語…などカタコトの世界の言葉で人種を超えて気さくにコミュニケートしていくレイヤーたち。
グローバル社会で役立つ人材としても彼らはきっと有能な人材になるんでしょうね。

● コスプレイヤーなら面倒くさい客も楽々こなせる!

初音ミクと同じクリプトン社の人気ボーカロイド・キャラクター「鏡音レン」に扮していたのはコスプレ歴10年・秘書検定2級の芥琵(あくたび)さん。驚いたことにかつて私が作っていた「月刊歌謡曲(ゲッカヨ)」の読者でした。
「小さくですけど、コスプレ投稿写真が誌面に載ったこともあるんです!」
とは何たる奇遇!

地元の同人誌即売会イベントで「ハリー・ポッター」のコスプレで目覚めたとか。
「普段はオタクって周りには言えないんですけど、コスプレしてイベントに行くとみんなやさしい人ばかりなので、一気に友だちが増えましたね。それはもう国内外問わずで」

アルバイト経験は喫茶店、メイド喫茶など。現在は営業事務のお手伝いなどをしているそうです。メイド喫茶は萌え萌えな感じではなくて、お客さんに冷たくして、それに萌えてもらうというメイド喫茶の中でもさらにまた深みにハマったマニアックなお店だったんだとか。

そんな彼女は仕事をする際に、コスプレ趣味が非常に役立っているそう。
「面倒くさいクレームの電話って、どんな仕事にも付き物だと思うんですけど、そういうのは得意ですね(笑)。営業なら営業用のキャラクターを用意しておいて、パッと変身する。するとものすごく丁寧に謝るのも余裕でできます。
電話だけでなくヘンなお客さん対応は、普段からコスプレイベントでいろんな人達と交流しているおかげで全然怖くないです」
確かに周囲を見回せば変わってる人ばかりです、うん。
そんな芥琵さんの働きやすい職場とは?
「現場をわかってくれる上司です!それで辞めたこともあるので。最前線のことをわからずに上の方の人がやいのやいの言ってくるところは厳しいですね。あと同僚に社長令嬢がいて、その人には誰も逆らえないとか…」

コスプレイヤーの人材としての利点も聞いてみました。
「土日などイベントのある日の休みさえきちんと固定してくれれば頑張れます。みんな徹夜も得意だし(笑)」
やはりそこか…。みんな無理してるんだね、普段から。納期の厳しい作業の多い中小企業のハードワークにうってつけの人材なのかもしれませんね。

そんな彼女にとってコスプレとは何かと聞きました。
「酸素です!無かったら死んじゃう(笑)」

と、心の叫びを聞けたところで、友好の証で一緒にポーズ。なんか2次元の人と3次元の人みたいになってしまいましたけど。

■ サブカルつながりで至って簡単に実現するグローバル

ちなみにこのサブカルチャーを通じて留学生の国際交流を実現するイベント「Cool Japan国際交流会」は、今後もまた開催される可能性があるんだとか。
確かに様々な人種が国籍無用でとんでもない格好をしながら笑顔で交流しているその姿はたいへんインパクトがありました。

共通の趣味があるというだけで、こんなに異なる民族が共感できるとは!
「クールジャパン」という言葉ばかりが先行して実体が見えにくいというのが今の現実。
でも国と国との争いが消え去って、人類が全てお互いを尊重して認め合い、笑顔で共存できる社会というのは、実はこうした場所が発端になるんじゃないかなと思ってしまいました。

[取材・文]
ゲッカヨ編集室http://gekkayo.biz/
[主催・協賛・協力]
Cool Japan国際交流会
http://www.cooljapanevent.com/#!worldcos/crh3

<編集後記>
コスプレイヤーは働く人材として万能だった!
コミケなどの様子がメディアでたびたび報じられ、コスプレ文化は広く世間に知れ渡ることになりました。
とは言えそれが”白い目で見られない”と言うことではありません。
分別のある大人にとってはまだまだ眉をひそめざるをえない存在がコスプレイヤーでしょう。

でも今回出会ったコスプレイヤーは皆、世間では偏見を持たれがちだけれど、彼らなりの生き方としてコスプレを楽しんでいるように思えました。皆とてもフレンドリーで抜群のコミュニケーション能力もありました。そしてその際、他人に合わせるだけでなく、きちんと自分をアピールできる技術があるというのが印象的でした。

自分を表現することが苦手な 日本人の中にあって、彼・彼女たちはお互いを尊重しつつ自分をしっかりと出していける、より深いコミュニケーション・スキルの持ち主だったのです。
これこそ主張の強い外国人と渡り合える世界標準の技術なのではないでしょうか。

全ての作業を一括プロデュースできる万能自己プロデュース力
コスプレイヤーが卓越しているのは、全てを自分の力で成し遂げるプロデュース力です。
アニメ、マンガからの素材選定に始まり、衣装を手縫いで仕上げていきます。ウィッグもキャラクターに合わせてカットしていきますし、メイクももちろん自分の手で仕上げます。

さらにキャラクターに合ったポージングもこなし、撮影される度胸も備えています。さらには写真も自分の好きにグラフィックソフトで加工する画像加工技術も持っています。

一言で言えば万能。
目的を果たすためにあらゆることに挑戦して技術を習得してしまうこと自体が優れた能力なのではないでしょうか。

ただたった一つクリアしなければならない条件があるとしたらそれは「休み」。コスプレイヤーにとってイベント参加は生命の次に大切なモノです。

逆に言えばそのイベント当日をしっかり休ませてあげさえすれば、ものすごい集中力で仕事を成し遂げる万能人材なのです。
彼・彼女の行動は、大人の理解を越えてしまっている部分もあるかもしれませんが、そうした偏見を捨ててみればとても優秀な人材であることに気づくはずです。

今回はコスプレイヤーでしたが、今後もさまざまな人々の声を聞いて、みなさまにお届けしていきたいと思います。ご自身と比べながら、知るべきは価値感の多様性。そこに理解を深めさえできれば、採用活動に大いに役立つことでしょう!

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