「社員登用制度」の魅力と有効性

  • 雇用主向け法律情報

職場のキャリアや能力が一定の基準をクリアすれば社員に登用する内部制度。
そんな「社員登用制度」は、正規雇用件数が減少する中、今にわかに脚光を浴びている。
では、この制度はどの程度認識され、どんな点が重要視されているのか。
今回は、社員登用制度を多角的に掘り下げながら、その魅力を浮き彫りにしてみたい。

今月のポイント

  • 社員登用制度の認知度はおしなべて高いが、実際の登用基準は知られていない。
  • とくに正社員希望者には、社員登用制度は採用の有効ツールとなる。
  • ユーザーの20%~35%は、社員登用制度を活用したいと思っている。
  • 応募時に社員登用制度の有無は、少なからず重要視されるている。

調査概要

■調査方法:インターネットアンケート
■調査対象:北海道、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)、東海(愛知、静岡、岐阜)、関西(大阪、京都、兵庫、滋賀)、九州(福岡)在住、
かつ 1年以内にアルバイト・パート、契約社員、派遣社員のいずれかに就業した15-34歳の男女、かつ 現在、学生である人を除く
■調査期間: 2008年7月
■サンプル数: 合計1,838名

1.社員登用制度の認知度1・制度と内容

~もっとも認知度が高い派遣社員希望者~

社員登用制度について深く考えてみるにあたり、まずは、その認知度を検証していくことにしよう。まず、今後の希望雇用形態別にどの程度、社員登用制度が認識されているか(図1)。もっとも多く「制度の中身についても知っていた」と回答したのは「派遣社員希望」で70%。「正社員希望」も65%と高かった。
一方、「パート・アルバイト希望」は52%とさほど高くなく、「契約社員希望」は半数以下の45%にまで落ち込んだ。また、「契約社員希望」は社員登用制度について「名前は聞いたことがあるが内容は知らない」も45%を占めたのが大きな特徴だろう。「特に希望なし」では、その19%が「名前すら聞いたことがない」と回答している。

図1. 今後の希望雇用形態別 社員登用制度の認知

 

2.社員登用制度の認知度2・基準

~契約社員希望でポッカリ空いた認知度~

社員登用制度の認知度について、さらに深く見ていくことにする。最近就いた職場に社員登用制度があった人に対し、どのような基準で登用されるかを知っているかについて、〈1〉と同様、今後の希望雇用形態別に聞いてみた(図2)。
もっともその基準を知っていた割合が多かったのは「特に希望なし」の44%。次いで「正社員希望」の43%。〈1〉の結果から、「派遣社員希望」も認知度は高いのではと思われたが、33%とさほど多くなかった。逆に、もっとも知らない割合が多かったのは「契約社員希望」の75%。実に4人に3人が知らなかったことになり、実際にそういう登用制度への認識は「正社員希望」者が強く、逆に「契約社員希望」者は総じて低い、という特徴が見て取れる。

図2. 今後の希望雇用形態別 社員登用制度基準の認知

 

3.社員登用制度の認知度3・満足度

~よく知っている人ほど満足度は高い~

次に、就いた職場の社員登用制度の基準を知っている人と知らない人に分けた場合、その制度への満足度の違いがあるだろうか調べてみた(図3)。
まず「知っている」人の場合、もっとも多いのは「やや満足」の51%。続いて「あまり満足ではない」が27%、「大変満足」が14%となった。対して「知らない」人の場合は、もっとも多かったのがやはり「やや満足」で47%。次いで多かった「あまり満足ではない」は37%で、知っている人より10ポイントも多い。また「大変満足」が3%と極端に少なく、「まったく満足していない」も13%と多かった。

図3. 社員登用制度基準の認知による満足度の違い

 

4.社員登用制度の魅力1・魅力度

~契約社員で「魅力あります!」急増~

ここからは社員登用制度の魅力について触れてみる。まず、制度自体の魅力の有無、その度合はどの程度なのか、探っていきたい(図4)。
希望する雇用形態別では、どれももっとも多かった回答が「やや魅力的」だった。しかも、「パート・アルバイト」を除く全ての雇用形態が「大変魅力的」との合計で50%を超えている。とくに「正社員希望」は「大変魅力的」が36%と他を大きく引き離し、「やや魅力的」と合わせると86%にも達した。
対して、「派遣社員希望」は、認知度では「正社員希望」より高かったアンケート結果もありながら、「大変魅力的」が8%、「やや魅力的」が44%と、思った以上には数値が伸びていない。しかも、「まったく魅力的ではない」が17%と、その多さが目立っている。一方、「パート・アルバイト希望」は「大変魅力的」が5%と少なく、逆に「あまり魅力的ではなない」が41%と多かった。

図4. 今後の希望雇用形態別 社員登用制度に感じる魅力

 

5.社員登用制度の魅力2・社員の魅力

~社員になりたい理由は「やりがい」より「安定」~

社員登用制度が魅力的と感じている層は、総じて多いことはわかった。では、なぜ正社員として雇用されることは魅力的なのか。その具体的な理由を聞いてみた(図5)。
その結果、どの希望雇用形態も最多回答(複数回答)となったのが「収入が安定していそうな点」。とくに「正社員希望」は56%が理由として挙げている。また、「正社員希望」の特徴として「生活が安定しそうな点」が47%と、目立って多い。
また、全体としては「福利厚生がしっかりしていそうな点」の支持も高く、逆に「いろいろ経験できそうな点」「将来役立つ資格や技術が身に付きそうな点」はどれも10%台もしくはそれ以下の数値にとどまっている。

図5. 今後の希望雇用形態別 社員の魅力

 

6.社員登用制度の魅力3・採用の違い

~決して少なくない、あえて回り道をする人々~

社員登用制度は、最初から社員として採用される場合と比較すれば、正社員希望者にとって明らかに “回り道” となる。それを踏まえた上で、社員登用制度の魅力を再度探ってみよう。
正社員・契約社員として最初から採用されるのと、社員登用制度によって正社員・契約社員になるのでは、どちらが魅力的か。希望する雇用形態別に聞いてみた(図6)。その結果、「社員登用制度の方が魅力的」ともっとも多く回答したのは「派遣社員希望」で、全体の35%。しかも、「最初から正社員・契約社員採用される方が魅力的」よりその割合が高かったのも「派遣社員希望」だけだった。
対して、「最初から正社員・契約社員採用される方が魅力的」の回答率がもっとも高かったのは「正社員希望」の56%。「契約社員希望」も51%と過半数に達している。「パート・アルバイト」希望では「最初から正社員・契約社員採用される方が魅力的」が37%、「どちらとも言えない」が38%と拮抗している。 ともあれ、どの雇用形態希望者にも「社員登用制度の方が魅力的」という回答が20%~35%もあった点が興味深い。

図6. 今後の希望雇用形態別社員へのステップ

 

7.社員登用制度と募集職種の相性1・制度の重要性

~正社員志望にとってはほぼ不可欠な存在に~

次に、実際に仕事探しをする際、社員登用制度は応募先を決める大事な条件となるのだろうか(図7)。
その結果だが、「大変重要な条件になる」「やや重要な条件になる」ともにもっとも回答が多かったのは「正社員希望」で、合わせて64%。全体の約3分の2を占めた。この両者で半数を超えたのは実はこれだけで、残りの希望雇用形態はすべて半数に届いてはいない。それどころか、「パート・アルバイト希望」は17%、「派遣社員」は22%にとどまっている。また「契約社員希望」は順位的にはその中間に位置し、合わせて41%だった。
しかし、半数を超えないからと単に少数派と片付けてしまうのどうだろうか。たとえばパート・アルバイト希望者でも、その17%がこの制度を重視する。約5人に1人ほどは、社員登用制度に注目しているかもしれない。そのことに注目すべきともいえる。

図7. 今後の希望雇用形態別社員登用制度の条件の重要性

 

8.社員登用制度と募集職種の相性2・制度の期間

~1年以内希望者が85%も~

社員登用制度についての大事な要素として、登用までの期間がある。そこで、どの程度なら許容できる期間なのか、アンケートしてみた(図8)。
許容期間として最多回答となったのは「3ヵ月程度」と「半年程度」で、ともに30%。次いで「1年程度」の25%と続く。つまりは、1年を明らかに超える期間は全体の85%が許容できないと回答しているわけで、これは最長期間のボーダーラインと考えていいのではないか。また、その期間を3ヵ月~半年に設定すればほぼ満足が得られることも見えてきた。

図8. 登用制度における登用までの許容期間

今月のまとめ

  • 社員登用制度の認知度は、「その中身まで知っている」「名前だけなら聞いたことがある」を合わせて、どの雇用形態の希望者も8割~9割に達した。その意味で、制度は十分に浸透していると考えていい。しかし、直近の勤務先における同制度の登用基準については、もっとも「知っている」が多い正社員希望者でさえ43%と、半数に満たない。この数値的ギャップを埋めることが、採用側のひとつの課題であり、制度のメリットを今以上に活かすひとつの方法だろう。実際、制度基準を知れば、その65%、つまり3人に2人は内容に「満足する」と回答している。ぜひ取り組みたい。
  • 社員登用制度の魅力について、パート・アルバイト希望者を除くすべての雇用形態希望者で、50%以上が魅力的と感じている。とくに正社員希望者は86%がそう感じているという結果が出た。この制度は、とりわけ正社員を志望する応募者に対して、募集する雇用形態が何であれ、応募を増やす有効のアピールポイントになるそうだ。
  • どの雇用形態希望者もその20%~35%は、社員採用されるより、社員登用制度を利用して社員になることに魅力を感じている。数値は小さいが、この結果の意味は決して小さくない。なぜなら、その理由の多くが適性を見極める期間になるから、というものだからだ。結果、この制度は応募者側はもちろん、優秀な人材確保という意味で採用側にも十分メリットをもたらすのである。
  • 社員登用制度の有無が、実際の応募に大きく影響するということも、アンケート結果から見えてきた。正社員希望者はその3分の2が応募の際の条件として重要と答えている。パート・アルバイトは17%に過ぎないが、それも無視できない数値である。社員登用制度の整備は、採用さらには離職防止に効果を発揮すると考えていいだろう。面接時や募集広告などで、有効的にアピールしたい。また、制度の中見については、登用までの期間は6ヵ月以内、長くとも1年以内が大事なポイントのひとつになっている。

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