2008年4月、雇用機会を創出する『ジョブ・カード制度』施行

  • 雇用主向け法律情報

掲載企業DATA:厚生労働省

所在地  東京都千代田区霞ヶ関1-2-2
事業内容  2001年(平成13年)1月の省庁再編成時に、厚生省と労働省の機能を再編して厚生労働省が誕生。人の誕生から雇用、老後の保障まで、複合的な政策に取り組むことが可能になった。

※改正の詳しい内容・最新情報に関しましては、厚生労働省のホームページへ

Intro 国が乗り出した新たな就職対策

「ジョブ・カード制度」という言葉をご存知でしょうか? 正式名称は「職業能力形成システム」。政府主導により、2008年4月、つまり来月から運用がスタートします。その目的は、“正規採用の機会に恵まれない人”に対して、安定的な就職活動を目指すもので、求職者の能力アップとその正しい評価を行っていくということが、その主たる内容です。
フリーターや一度退職した主婦たちが正社員としての採用を望んでも、なかなか実現しない実態は相変わらず。一方で、企業側もよりよい人材の確保には苦心しています。このジョブ・カード制度は、その両者の希望を満たす切り札となることが期待されていますが、まだまだ広く認知されていないという側面も持っています。

そこで今回は、この制度そのものの具体的な内容に触れるとともに、求職者側、企業側それぞれの観点から、どのような変化、メリットがあるのかを見ていきましょう。

01 コンサルティングと訓練の2本柱

ジョブカード
ジョブ・カード制度を理解するには、まず「ジョブ・カード」について知る必要があります。ジョブ・カードとは、求職者のこれまでの職務経歴や取得資格の情報をまとめ、さらには、後ほど説明しますが「ジョブ・プログラム」の修了証ともなるものです。用意されている項目からは履歴書に近い印象を受ける人も多いでしょう。
このカードのフォーマット自体は、厚生労働省のウェブサイトより誰でも入手可能です。つまり、ジョブカードを履歴書のように利用して自分の略歴をまとめることは、現在正社員として働いている人でも自由に行うことが出来ます。しかし、本来の目的である「求職者の能力を証明する」ものとして活用するためには、ハローワーク等に出向き、資格を持った専門のキャリア・コンサルタントによるコンサルティングを受けた上で交付される必要があります。ここが、この制度の大きな特徴のひとつ。それについて、厚生労働省職業開発能力局の担当者はこう説明します。
「求職するにあたり、自分は何をやりたいのか? また何が足りなくて、そのために何が必要なのか? こういった自分への気付きを行ってもらうことが、まずは大切だと考えています。それを踏まえた上で、職業訓練が必要な方はそれが受けられるよう、指導していくことになります」
ここでいう職業訓練は、ジョブ・プログラムと呼ばれているもので、それがきっちりと用意されていることが、この制度のもうひとつの大きな特徴となります。

このプログラムですが、その核となるのが、企業現場での実践的訓練となる「職業能力形成プログラム」と、大学・短大、専門学校等で学ぶ「実践型教育プログラム」の2つ。とくに前者は、これまで企業が社員向けに行っていた現場での職業訓練を、ジョブ・プログラムによる求職者に行っていくもので、しかもその間、求職者には賃金が支払われます。そして実習終了後、その企業の担当者が訓練内容を評価し、職業能力証明書を交付。実習受講者は、それにより一定の職業能力が身に付いたことが客観的に証明され、それが就職活動に活用されるというわけです。

02 訓練受けて、給料もらって、採用の可能性も…

職業訓練には給与が発生する(写真はイメージです)

ジョブ・カード制度の概要をざっと説明してきましたが、これを求職者の側から、もう一度考えてみましょう。そもそもこの制度は、“正規採用の機会に恵まれない人”が背景にあります。
「たとえば、フリーターの職務経験だけではキャリアにつながらず、結果、正規採用されない人たちや、結婚前のキャリアではブランクが空きすぎ、現在は通用しないのではと考える主婦層などに、実際の採用に結びつく知識・技術の習得を目指してもらう。そのための制度であり、それを利用して正規採用されることが、最大の目的となります」
もちろん、十分なキャリアや技能がある求職者もキャリア・カードを持てます。それはそれでそのカードを求職活動に活用してもらえればいい。ポイントとなるのは、先のコメントにあった、正規採用が現状では困難な人たち。キャリア・コンサルタントがそう判断すれば、ジョブ・プログラムを受けることができるからです。とくに、企業で実際に職業訓練を受ける場合、受け入れる企業はその受講者をそのまま採用することも可能。つまり、職業訓練であると同時に、採用されるチャンスでもあるということです。

もちろん本来の職業能力形成プログラムの目的は、企業実習によるスキルアップと評価であり、それを証明するツールとして職業能力証明書の交付やジョブ・カードの発行が行われます。そして、それは、就職活動の際にその人の能力の証明となっていくのです。
「これまでは、企業で研修を受けても、それはその企業でしか評価されないものでした。このジョブ・カード制度は、そういった研修によるその人の能力評価を、広く一般に通用するものに変えることが可能です。ただ研修を受けて終わりではなく、実際のキャリア・アップにも結びつくことを目指しているのです」

03 プログラム参加が採用スタイルを変える!?

では、この制度、企業側にとって採用活動にどんな変化やメリットがあるのでしょうか?
まず、募集に当たり、ジョブ・カードを提出する応募者についての対応があります。そのためには、ジョブ・カード自体の認識と、やはりそれに対しての正しい評価が採用担当者に求められるでしょう。とは言え、これまでも履歴書や職務経歴書は存在していたわけですから、これについてはそう戸迷うこともないはず。
問題となるのは、職業能力形成プログラムとして、求職者を受け入れるケース。研修内容は基本的にはその企業が考え、行うことになります。研修制度自体が確立されていない中小企業の場合、まず研修自体を一から作り上げる必要性が出てくるからです。
「もちろん、そういった企業をフォローするために、研修のモデルケースの提案を厚生労働省としても行っていきますし、受け入れ企業へは助成金も出ます。また、大きなメリットとして、受け入れた求職者を採用することも可能ですから、面接だけの採用活動より確かな人材の確保にもつながるのでは、と考えています」
職業能力形成プログラムに参加するメリットは、まだあります。求職者を受け入れ、それによって実績を重ねていくことで企業としての評価が上がり、より多くの求職者がその企業の研修を希望する。それは結果的に、よりスムーズな採用活動につながっていくはずです。

とはいえ、この制度を浸透させ、定着させるには、より多くの企業の参加が不可欠。そのために、厚生労働省は制度の広報活動を積極的に行うとともに、各都道府県に設置された地域ジョブ・カード・センターで地元の事業団体に働きかけています。同時に、企業の、とりわけ大企業の社会的責任として、参加を募っていきたいとのこと。また、現在、すでにキヤノン株式会社が試行ケースとして、茨城県に専用の研修施設を開設。実際に独自の教育訓練プログラムを稼働させていますが、そういった具体例を拾い上げ、情報として各企業に発信していくそうです。

まとめ

厚生労働省は、このジョブ・カードの取得者を当初3年間で50万人、5年間で100万人程度に。また、ジョブ・プログラムの修了者を当初3年間で20万人、5年間で40万人程度と、目標に掲げています。求職者の誰もがジョブ・カードを持ち、多くの求人広告でその必要書類に「ジョブ・カード」と記載される。そんな日が、遠からず訪れるかもしれません。

正規雇用の機会に恵まれない人が採用のチャンスを広げ、企業も安定的によりよい人材の確保を行うことができる。そういった “魔法のカード” になる可能性を秘めたジョブ・カード制度。ともあれ、求職者も、企業も今後の動向に目が離せないことだけは、確かでしょう。

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