「迎える準備やオリエンテーション」 人材育成ベーシック 松田尚文

新人の退職防止策について、前回新人を迎える前にやるべき３つの退職防止策をご紹介しました。
しかし具体的にはどういったことを行えば良いのでしょうか？『プロに聞け』では、この３つの退職防止策を３回に分けてご紹介いたします。第１回目の今回は「働く環境を整える」。是非ご覧下さい。

新人の勤務初日の心境は「頑張ろう」と「大丈夫かな」が半々です。そこで温かく迎えられるかどうかで気持ちはどちらかに大きく傾いてしまいます。早期退職の主な理由の一つに「店長たちの雰囲気が悪い」がありますが、特に初日の雰囲気は新人に大きな影響を与えると心得ましょう。初日で店長の態度に対するものだとすれば結果は明らかです。逆に歓迎されれば、頑張ってやっていこうという気持ちになり、辞めなかったかもしれません。

前回、３つの退職防止策をご紹介しましたが、今回はそのうち「働く環境を整える」について、詳しくご説明したいと思います。ポイントは大きく３つあって「全員が温かく迎える気持ちでいる」、「働く場所を快適にしておく」、そして「店や会社についてオリエンテーションを行う」の３点です。新人が何の説明もなくいきなり現場に立たされ仕事をやらされる、しかも、そこが不潔で劣悪な設備や室温であったら退職をさせるために採用したようなものです。ぜひこの「働く環境を整える」３つのポイントを実行し、新人がやる気を持って望めるように環境を整えましょう。

環境を整えるまず第一歩は従業員全員が新人を「温かく迎える気持ちでいる」ことです。事前にどのような人が入ってくるのかを掲示板や朝礼、連絡ノートなどでわかるようにしておき、全員にあいさつや声をかけるよう伝えておきます。拍手で迎えられれば「歓迎」を実感してもらえるでしょう。もちろん形だけではいけません。

次に「働く場所を快適にしておく」ことが大切です。毎日不潔で不快な場所で働かなければならないとしたら苦痛で仕事を続ける気持ちにはなりません。働く場所の印象は清潔さ、整理整頓で決まります。特に新人が来る日は注意を払いましょう。仕事に使う用具や用品、消耗品など状態をチェックし、質・量ともに揃えておきます。これにより新人の印象は格段に良くなるでしょう。また、現場や休憩室の室温も確認しておきます。既存の従業員にも夏場の高温や冬場の寒さはつらいものです。エアコンの効き過ぎも配慮しなければなりません。

そして「オリエンテーション」を実施することは退職防止に最も効果的です。私の顧問先でもこれを導入した会社は早期退職が激減しています。このオリエンテーションとは店や会社のこと、働くことに関する説明をすることです。トイレに行きたくてもどこかわからない、いつ言いだせばよいのかわからないでは不安でいっぱいになります。オリエンテーションは次の手順で行うとよいでしょう。まず、自己紹介、そしてスタッフ紹介です。次に働く現場、店内や社内をツアーして回ると全体像がつかめやすいでしょう。そして仕事内容やどのように働くのかを説明します。これで新人の不安は軽くなります。また、勤務時間、休憩、仕事内容、休日、給与、手当他などの労働条件については相互確認が大切で、求人広告と相違がないよう書面で説明し信頼関係を築きます。店や会社のポリシーや考え方も伝えておくと雰囲気がわかります。そして最も関心が高いのはトレーニングについてです。誰がいつどのように仕事を教えるかをきちんと伝えておくと新人も安心できます。

オリエンテーションが成功するかどうかはやり方次第です。時間や誰が行うかなど事前に計画し、必要な書類や資料を揃えておけばスムーズに進められます。開始時には緊張をほぐす話などしておくとお互い壁が取り除かれ、新人も受け入れやすくなります。もちろん仕事であることを伝え、有給で行います。時間は１～２時間で、リラックスしてもらうために休憩室などで行うとよいでしょう。情報量が多い場合は新人の吸収するペースに合わせるよう調整も必要です。

退職防止の第一歩はなによりも新人を助け、早く自分達のチームの一員にしようと思う気持ちです。温かく迎えて下さい。

著書

1999年7月：『八方ふさがりを突破する本物店長マニュアル』明日香出版社
2001年：『実践！強い店長学』明日香出版社
2002年：『飲食店業務マニュアル』アーバンプロデュース社
2003年：『小売店業務マニュアル』アーバンプロデュース社

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