「パートナーさん」が生き生きと働くスーパー「ヤオコー」 – 株式会社ヤオコー
- 企業採用成功事例
掲載企業DATA:株式会社ヤオコー
本社所在地 | 埼玉県川越市脇田本町1番地5 |
代表取締役会長 | 川野幸夫 |
代表取締役社長 | 川野清巳 |
代表取締役副社長 | 川野澄人 |
設立年月日 | 1957年7月(創業1890年) |
事業内容 | 埼玉県を中心にスーパーマーケット122店舗を展開 株式会社てっぺん |
01 パートナーさん」が活躍する注目のスーパー
アルバイトやパート従業員を多く抱える企業では、非正規雇用者のやる気や業務に対する取り組みが即業績に影響を与える場合も少なくない。そこで、非正規雇用者の人材育成に注力することになるのだが、言われたことをやるだけで、自分から改善方法や提案をしてくれない、あるいはもっと主体的に働いてもらいたいと指摘しても、煙たがられて終わってしまうこともしばしば。一体どうすればスタッフのやる気を引き出して、積極的に仕事に取り組んでもらえるのかと悩む人事担当者も多いはずだ。
ザ・マーケットプレイス川越的場
そこで今回は、埼玉県を中心に122店舗(2013年1月現在)のスーパーマーケットを運営する株式会社ヤオコーの人材活用や育成方法をご紹介。非正規雇用者のマネジメントを考える際の一助としていただきたい。
同社は長引く不況の中にありながら、23期連続で増収増益を続けている。同社では、いわゆるパートタイムで働く従業員を尊敬の念を込めて「パートナーさん」と呼んでおり、彼らの働きぶりが原動力となっている。
02 生活者のプロの力を活用
豊富な惣菜は、売り場のすぐ脇で調理加工しているため、お客さまとの会話や、お客さまにあわせた品ぞろえが時間帯に合わせてできる。
ヤオコーは食品に特化したスーパーで、「豊かで楽しい食生活提案型スーパーマーケット」をモットーに事業展開を行う。店内を歩いてみると同業他社に比べて、売り場のすぐ脇で調理加工される惣菜コーナーの充実ぶりに驚かされる。
「ヤオコーでは、店員がお客さまと直接触れ合うことで、お客さまに買い物を楽しんでいただくことを大切にさせていただいています」と話すのは、同社人事部採用育成担当部長の滝口敦士氏。
その楽しさの演出、工夫を一番表しているのが「クッキングサポートコーナー」だろう。これは、その日の夕食や翌日の昼食のメニューを実際に店員が調理して、見本品として展示・販売を行うコーナーだ。メニューやレシピを考えたり、調理、ディスプレイしたりするのもすべてパートナーさんたち。各自が自ら考えて行っている。
「私たちがパートナーさんと呼ぶのは、生活者のプロとしての働きをしてもらいたいという考えに基づいています。実際にその地域に住み、生活する主婦の立場で考えられたメニューだからこそ、お客さまに支持されるのだと思います。自分たちが提案したものに対して、反応がダイレクトに返ってくることはパートナーさんたちにとっても大きな働きがいにつながります」と滝口氏。
この「クッキングサポートコーナー」は、当初は一部の店舗で行われていたものが、他の店舗にも拡大し、今では当たり前のコーナーになった。現在は本部メニューと店舗独自のメニューが存在する。それが販促とも連動して、チラシにも掲載されるまでになったのだ。
おすすめのメニューを提案するクッキングサポートコーナー。笑顔とお客さまとの会話も大切な要素だ。
同社では、そのほかにも従業員から出されたアイデアによって売り上げアップにつながった成功事例をシートにして各店舗のバックヤードで掲示するなど、数々のノウハウの蓄積や共有化が図られている。こうした取り組みによって、パートナーさんの日ごろの気づきが、すぐに全店舗での実際的な収益向上につながることをパートナーさん一人ひとりに意識づけているのだ。
さらに同社では、そうしたパートナーさんによる成功事例の発表会を「感動と笑顔の祭典」と名付けて月1回開催しており、2013年1月には80回を数えた。
「会長、社長をはじめ役員部長、店長が一堂に会する中で、毎回9チームのパートナーさんがそれぞれの成功事例を15分間にわたって発表します。これまでプレゼンをした経験がないような主婦の方が行うのですが、自分が実践してきたことなので説得力があります」
発表者には、アメリカのスーパー業界の視察旅行などといった表彰や手当といったインセンティブも設けられており、パートナーさんのモチベーションアップにもつながっている。
03 情報開示と決算賞与でやる気アップ
このほかにも、ヤオコーの人材育成には様々な特徴がある
バックヤードには、従業員から出された数々のアイデアシートが掲示されている。
「私たちは、人材教育にあたっては社員とパートナーさんの区別をしませんし、仕事の区別もしていません。『販売計画や管理をやりたい』といったパートナーさんの意欲にも応えるようにしています。そうすると仕事がおもしろくなるし、やりがいも出ます」と滝口氏。
さらに同氏はこう続ける。「自分の子どもにわが家の家計は火の車という話をすれば、当然子どもの振る舞いは大きく変わってきますよね。企業も一緒で、ヤオコーではパートナーさんにも売り上げや利益といった情報を開示しています。自分の所属している部門が儲かってないと知れば、ほとんどの方は働き方が変わってくるんです」
また同社では、設定された目標以上の利益が出た場合は、従業員に還元する形で決算賞与が出される。しかも、社員だけでなく、パートナーさん、アルバイトも含めた全従業員が対象なのだ。
04 受け継がれる企業風土と精神
パートナーさんの採用についても、新店オープンするときは新卒社員採用と同様に会社説明会を開催して、募集を行っている。「そこでも単なるルーチン業務を決められた通り行うというより、生活者のプロとしての働きを期待しています、というお話をさせていただきます」
ヤオコーに入社して23年となる滝口敦士氏。バイヤー、店長などを務めた後、採用育成部門を担当。
採用されるパートナーさんたちは、周辺に住む主婦がほとんどだが、過去に金融や一般企業に勤めていた方が多く、もともと資質が高く、働く意欲や意識も高いのだという。
また入社後は全員に一冊の本を配布して読んでもらう。『日本一強いスーパー ヤオコーを創るために母がくれた50の言葉』(産経新聞出版発行)という本だ。これは同社の川野幸夫会長、川野清巳社長の母であり、ヤオコーを八百屋から近代的なスーパーに発展させた実質的な創業者である川野トモ氏の言葉を集めたもので、ヤオコーの経営哲学が凝縮されている。社員のみならずパートナーさんに対しても、企業風土や精神の理解と継承に努めている。
同社のモデル店には連日引きも切らず他企業からの見学者が訪れるというが、「経営理念や哲学、ぶれない経営があると考えています」という滝口氏の言葉には、しっかりとした自負が伺えた。