話を聞かないスタッフが変わる! 今日から使える「心をつかむ」フレーズ集

  • コミュニケーション・人間関係
「なぜ話を聞かないんだろう?」「どうして指示通りに動けないんだろう?」アルバイトスタッフの気の利かない言動にイライラしてしまうことはありませんか? 「でも、その原因は店長ご自身にあるかもしれません」。そう話すのは、飲食店を中心としたコンサルティング業務を手がけるアンドワークス代表の加藤雅彦さん。シニアコンサルタントの武笠彰範さんも交えて、現場でありがちなお悩みシーン別に効果的なフレーズをご紹介します。

話を聞かないアルバイト……実は店長が原因!?

加藤さん(右)と武笠さん加藤さん(右)と武笠さん

加藤 時折、店長職の方から「最近のアルバイトは話を聞かない」という嘆きの声を聞きます。でも、よく話を聞いてみると、店長のほうがスタッフと話すことに苦手意識を持っていて、「わかるように話せていない」「聞きたくなるように話せていない」ことがほとんどなのです。つまり、店長のコミュニケーションの取り方に問題があるんですね。

例えば、「わかるように話せていない」ケースとは、力量「1」のスタッフに対して、店長が「3」まで対応できると勘違いして話しているような時。当然、「1」の力量しかないスタッフは、店長の話を理解できません。

また、「聞きたくなるように話せていない」ケースは、自分が店長であることを考慮せずに話しているような時です。店長の発言には役職のパワーが働くため、普通に言ったことも命令のように聞こえかねません。このパワーをきちんと考えて発言しないと、スタッフが素直に指示を受け入れられないです。

武笠 ほかにも、「スタッフが楽しそうに働いてくれない」、「言い訳が多い」、「叱ったらふてくされる」といった悩みも、解決のカギとなるのはコミュニケーションをきちんと取れているか否かです。「コミュニケーション」というと大げさですが、もっと気軽な声掛けや伝え方の工夫一つで、状況はガラリと好転するのです。

加藤 今回は、現場で起こりがちなシチュエーションを例に、“言葉”で解決していく方法をご紹介しましょう! 実践していただければ、きっと職場の人間関係や現場のムードが見違えるように変わるはず。さっそく1つ目のシチュエーションから順に見ていきましょう。

お悩み1 スタッフが楽しそうに働いてくれない

スタッフ 「いらっしゃいませー」(仏頂面)
店長 「ちょっと何、その顔。もっと笑顔で働こうよ?」
スタッフ 「だって、オーダーがこんなに来て……とにかく、すごく忙しいんです!」
店長 「た、確かに忙しいけどさぁ……」

<解決法> みんなのテンションを上げる一言をマスターせよ!

率先してスタッフたちの気分を盛り立ててください率先してスタッフたちの気分を盛り立ててください

加藤 いきなり楽しく働こうと諭しても、スタッフの心には響きません。こんな時は、まず「お客さんを喜ばせよう!」「ミスをなくそう!」などのゴールを設定しましょう。 そして、ゴールに近づくごとに、店長自身が目いっぱい喜ぶこと。注文が山ほど来た時に、店長が「たくさんオーダーが来たね、最高!」と言えると、働く人の気持ちや場の雰囲気はガラッと変わります。

店長自らが楽しいムードの発信源になり、スタッフたちを巻き込んでいきましょう。

楽しいムードを作るフレーズ6つ

・最高だね!
・楽しくなってきたね!
・お願いしますね!
・(盛り付けなどが)美しい!
・ありがとうございます!
・頼りにしています!

お悩み解決! みんなのテンションを上げるためのフレーズ例

スタッフ 「店長、オーダーがこんなに来て……忙しすぎます!」
店長「大丈夫。オーダーがいっぱい来るのはみんなが頑張っている証拠だよ! 最高だね! さ、がんばろう!

武笠 逆に、避けるべきフレーズもあります。「最悪だよ」「どうしよう」などのネガティブな言葉は基本的にNG。さらに、つい言ってしまいがちな「(忙しそうだけど)大丈夫?」も、実はNGワードです。聞かれた相手は大丈夫としか答えようがないため、解決になりません。具体的なアクションにつながるように、「困っていることはない?」「手伝えることはある?」と言い換えると◎。

仕事が慌ただしい時は、ちょっとした発言がスタッフの気持ちを逆なでするので要注意。事態の好転につながらない無駄な声掛けではなく、困っていることや手伝ってほしいことを引き出す声掛けを心がけるとよいでしょう。

店舗が忙しい時に気をつけたいフレーズ例
NG例
店長 「忙しそうだね。大丈夫?」
スタッフ 「だ、大丈夫です(としか言えない……)」

OK例
店長 「困ってることはない? 手伝えることがあったら教えて!」
スタッフ 「ホールの人手が足りないんですよ、お願いできますか?」

●お悩み2 スタッフの褒めどころが見つからない

スタッフ 「おはようございます。本日のメニュー、黒板に書いておきました!」
店長「おお、ありがと……」(うわっ汚い字!!)
スタッフ 「? 間違ってます?」
店長「い、いや、アリガトウ……」

<解決法> 「褒める」のではなく「認める」こと!

武笠 スタッフとのコミュニケーションで「褒める」ことは必須ですが、店長にとっては“できて当然”のことが多いため、スタッフを褒めるポイントが見つからないと感じる方も多いようです。そこで、自分を基準にして“褒める”のではなく、相手を基準にして“認める”方式に切り替えましょう。

もしも、以前より上達したことや自発的に動けるようになったことがあれば、完璧でなくても「成長したね」と“認める”ことが大切です。

お悩み解決! 認める形のフレーズ例

スタッフ 「店長、本日のメニュー、黒板に書いておきました」
店長 「(字は汚いけど……自分で動けるようになってきたんだな!) やるじゃん! その調子で頼むよ! 次はもっと読みやすさ重視で書けるといいね」
スタッフ 「はい!」

加藤 また、こうした例に限らず、スタッフの変化を発見したり、ちょっとした声掛けを行ったりしたい時に私たちが使っているのは「SOS話法」。どんなことにもポジティブにリアクションができる便利なフレーズです。

褒めたい時に思い出して! 3つのフレーズ “SOS”

「(S)素晴らしいね!」
「(O)驚きました!」
「(S)ステキです!」

●お悩み3 叱ったらスタッフがふてくされてしまう

店長「またビールこぼしたの!? 気をつけてって前も言ったよね!?」
スタッフ 「すみません」
店長「なんで直せないの!?」
スタッフ 「チッ……サーセン!!」
店長(逆ギレ!?)

<解決法> 叱る時は感情スイッチをOFFにせよ!

加藤 スタッフのミスに腹が立っても、感情をぶつけてしまうのは絶対にいけません。冷静に、間違った行為や行動に対して叱ること。感情のスイッチを「喜ぶ時はON」、「叱る時はOFF」と、しっかりと切り替えましょう。

声掛けを工夫すれば、意思疎通がスムーズになります声掛けを工夫すれば、意思疎通がスムーズになります

武笠 また、叱るだけでなく、「なぜそうなったか」を聞くことも大切です。このシチュエーションは実際にあったケースですが、「なぜ何度もこぼしちゃうんだろう?」と一緒に考えてみたら、彼がお盆の持ち方を教わっていなかったことがわかりました。

失敗を繰り返さないためにも、次のようなフォローの言葉を掛けてあげることが重要だと思います。

叱った後のフォローとして使ってほしいフレーズ3つ

「なぜそうなったかわかる?」
「どうして繰り返しちゃうんだろう?」
(単純ミスなら)「誰でも一度は通る道だから、早めに覚えようね」

 

お悩み解決! 叱る時のフレーズ例

店長 「またビールこぼしたの?」
スタッフ 「すみません」
店長 「どうして繰り返すのか考えてみた? 何か心当たりはある?」
スタッフ 「実はお盆の持ち方がよくわからなくて……」
店長 「習ってなかったのか! ごめんな、すぐ教えるよ!」

●お悩み4 スタッフが思った通りに動いてくれない

店長「A卓のお客様、今月よく来てくださるよね。何かサービスしておいて」
スタッフ「はい!」
店長「お疲れ! A卓様、どうだった?」
スタッフ「はい! いつもよりスマイルを多めにサービスしておきました!」
店長「そ、そういうことじゃないんだよー!」

<解決法> 思い通りに動けるほうが奇跡! 具体的な指示を出そう

加藤 スタッフが自分の思い通りに動いてくれたら……とは、店長なら誰しも夢見ることですが、現実にはめったにありません。

しかし、一つひとつ「具体的な指示」を出すことで、こちらのイメージ通りに動いてもらえる可能性を高めることができます。例えば「それ、タオルで拭いてもらえる?」というところを「それ、キッチンにある食器用の布巾で拭いてもらえる?」という具合です。

 

お悩み解決! 的確な行動につながるフレーズ例

店長 「A卓のお客様、今月よく来てくださるよね。いつも餃子をオーダーされているから、今日は水餃子を一品サービスしてみたら?」
スタッフ 「なるほど! わかりました!」
店長 「お疲れ! A卓様、どうだった?」
スタッフ 「はい! 喜んでくださいました。好きなメニューを覚えておくって大切なことなんですね」

●お悩み5 スタッフが後ろ向き

店長「もっとドリンクのサーブ早くならない? ちょっと遅いと思うんだ」
スタッフ 「無理ですよ。これでも精一杯なんです」
店長「せめてビールだけでも……」
スタッフ 「いやー、無理だと思いますけど」
店長「試しもせずに、すぐ無理無理って!」

<解決法> スタッフの「できない」は改善のチャンス!

武笠 スタッフの「できない」には確かにムッとしますが、「お悩み3」の叱られてふてくされるケースと同様、感情を露わにするのは禁物。スタッフが無理だと言う理由を考えると、これまで見えなかった問題点に気づきます。

店長の「してほしい」という要望に対して「できない」と返ってきた時は、お店をもっと働きやすい空間にするチャンスなのです。

「できない」というスタッフと改善策を考えるフレーズ
「なぜできないと思う?」
「どうやったらできるかを一緒に考えよう!」
「使いやすくなるように一緒に実行しようよ!」

お悩み解決! できないことを実現する建設的なフレーズ例

店長 「もっとドリンクのサーブ早くならない? ちょっと遅いと思うんだ」
スタッフ 「無理ですよ。これでも精一杯なんです」
店長 「そうなの? 何が原因なんだろう? どう思う?」
スタッフ 「ドリンクサーバーまでの距離が遠いと思います 」
店長 「そうか。じゃあ近くに棚を設置して、そこに置こう!」

加藤 こうして解決策を提示したら、必ず実行しましょう。そして改善の結果が出たら、「お、今日は早いじゃん!」「成果が出たね!」と良くなったことを褒めてあげてくださいね!
コミュニケーションの苦手意識を克服するために、毎日行うべき3つの習慣

コミュニケーションの苦手意識を克服する3つの習慣を身につけましょうコミュニケーションの苦手意識を克服する3つの習慣を身につけましょう

加藤 以上、5つのお悩みと解消法をご紹介しましたが、最初からすべてを実践するのは難しいかもしれません。そこで、まずは店長ご自身のコミュニケーションの苦手意識を克服するために、次の3つのことから始めてみませんか?

日々徹底すると、みるみるコミュニケーションが上達する3つの習慣

1.挨拶は積極的に自分から
2.一日一つ他人を褒める
3.ゴールを共有する

加藤 これらを実践する時のポイントは、相手への尊敬の念と、感謝の気持ちを欠かさないこと。「人手不足の時に来てくれてありがとう!」「力を貸してください!」という思いは、必ず自分の表情や声から伝わって、いい効果を生みます。

武笠 また、冒頭でも述べたように、店長の言葉は役職という大きなパワーが働いた状態でスタッフに伝わります。だからこそ、謙虚な姿勢を意識して相手に歩み寄り、なんでも話せる関係を築くことがとても大切です。その最初の一歩となるのが、上に挙げた3つの習慣です。ぜひ実践してみてくださいね!

アンドワークス代表取締役 加藤雅彦、アンドワークスシニアコンサルタント 武笠彰範

加藤雅彦 /Masahiko Kato
アンドワークス代表取締役
1971年生まれ。焼肉店「薩摩 牛の蔵」などを経営するとともに飲食店を中心に小売店やホテル、レジャー関連企業まで幅広く人材育成コンサルティングに関わる。主な著書に『お店のバイトはなぜ一週間で辞めるのか』、『飲食店完全バイブル接客の法則50』などがある。
武笠彰範 /Akinori Mukasa
アンドワークスシニア・コンサルタント
1983年生まれ。飲食店やバーの業務を経験し、アンドワークスに入社。
飲食店のマネージャーや店長を経て、現在はコンサルタントとして飲食店の現場に入り直接指導している。

アンドワークス:http://www.andworks.co.jp/

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