無断欠勤、悪ふざけ、バイトテロ…… パターン別“問題児バイト対策”

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人材不足の最中、ようやく新しいスタッフを獲得してホッとしたのもつかの間。新人は平気で遅刻し、勤務中にはケータイをいじり、目上のスタッフにタメ口をきく“問題児”だった! 社会の常識が通じない、叱っても聞かない……そんな彼らに店長はどう接するべき? アルバイト・パートの現場を数多く知るコンサルタント・白岩大樹さんに、問題児のタイプ別コミュニケーション術を伺いました。

問題児バイトの実態とは?

問題児バイトの行動が、お店の存続に関わるケースもあります問題児バイトの行動が、お店の存続に関わるケースもあります

 コンサルタントとして多くの現場を訪れるなかで、アルバイト・パートスタッフの素行に頭を抱える店長さんは少なくありません。特に10~20代の若い世代のスタッフの働き方に、ご自身とのギャップを感じてイライラされている方も……。“問題児”たちの実態として耳にするのは、例えばこんな行動です。

“問題児”アルバイト・パートスタッフの実態

遅刻を繰り返す
目上の人にタメ口をきく
陰で他のスタッフの悪口を言う
無断で商品を持ち帰る
始終ケータイを気にする
挨拶をしない
指示を聞かずに独断で行動する
シフトの日を忘れて欠勤する
隠れてタバコを吸う
退職の連絡をメールで済ます

ほか、「SNSにうかつな書き込みを行う」なども、問題行動の一つと言えるでしょう。スタッフが投稿した悪ふざけや内部情報の暴露などが、TwitterやFacebookから広がって炎上する「バイトテロ」で、営業停止に追い込まれる店舗や破産する企業さえ出ています。

すぐ叱るのはNG! 問題児の個性を見抜くべし

問題行動が目につくと、「とにかく叱らねば!」と思いがちです。しかし、ガミガミ叱るのはもちろん、冷静に叱ったとしても、今の若い世代は「負の感情を向けられた」と判断し、シャットダウン(完全拒否)状態になってしまいがち。そして、一度シャットダウンしてしまえば、どんな話も受け入れなくなるのです。

もしスタッフが何かミスをしたとしたら、それが過失であっても、悪意のある行為であっても、感情的にならずに「なぜそういった行為をしたのか?」「なぜそのように思ったのか?」を聞いてあげましょう。すると、問題行動の根っこには、それぞれ異なる欲求や理由があることに気づきます。例えば、私が現場でよく見かける問題児は次の5タイプです。

問題児たちのタイプ5つ

●天然無知型 「えっそうだったんですか?」
性質:のんびりしており、一般常識もあまりよく知らない。
⇒知らないがゆえにトラブルを起こしてしまう。
●武勇伝アピール型 「俺ってスゴイんだぜ!」
性質:自分のことを認めて、褒めてほしい。
⇒評価してもらえないと行動をエスカレートさせる。
●お笑い芸人型 「みんな、もっと笑って笑って~!」
性質:みんなを楽しませ、面白い人だと思われたい。
⇒楽しんでもらいたい一心で悪ふざけがすぎる。
●雇用形態回避型 「私、アルバイトなんで……」
性質:冷静で、自分で線引きした範囲以上の仕事には深入りしない。
⇒アルバイトという雇用形態を理由に業務に協力的でない。
●レジスタンス型 「店長ムカつくんだよ!」
性質:感情的に考えやすく、店舗や企業に対する不満を溜めている。
⇒店舗や企業が不利になるような行動に出る。

問題行動の裏にはさまざまな欲求が隠れています問題行動の裏にはさまざまな欲求が隠れています

 例えば、何も知らずに問題行動を起こしてしまうのが「天然無知型」です。高校生や大学生など、社会人経験のないスタッフのほとんどがこのタイプと思ってよいでしょう。

過去にSNSで炎上した、アイスボックスに寝ころんだスタッフ、あるいはピザ生地を顔に張り付ける悪ふざけをしでかしたスタッフも、ある意味「天然無知型」であり、同時に「武勇伝アピール型」「お笑い芸人型」でもあります。

一方、「アルバイトにすぎない自分がそこまで働く必要はあるのか」と考える「雇用形態回避型」の意見は、雇用側の要求が大きすぎる場合には正論であるケースも存在します。しかし往々にして、彼らには「アルバイトだから遅刻してもいい」「無断欠勤もOK」と、労働に対して甘い考えを持つ傾向があります。

最後に、店舗や企業に対する不満が溜まった結果、故意にトラブルを起こそうとする「レジスタンス型」には、バイトテロを起こして企業を窮地に追い込むようなケースが当てはまります。

問題児を変えるコミュニケーション術

このように、問題児たちの行動にはそれぞれ異なる理由があり、欲求に沿った接し方をしない限り、なかなか改善されません。大切なのは、問題児たちを“叱って矯正する”のではなく、彼らのタイプに合った接し方で根気強く“教える”ことです。

タイプ別コミュニケーションの取り方

●天然無知型
× 「なんでできないの?」「そんなことも知らないの?」
○ 「~だから、こうしなきゃだめだよ」「次はこうしよう」
ポイント:素直な性格であるため、きちんと説明して理解してもらうことが大切。していいこと、悪いことを何度でも教える。理由とセットにすると効果的。
●武勇伝アピール型
× 「別にすごくない」「あの子のほうがすごいよ」
○ 「今、いい動きしてたね!」「周りのレベルも引き上げてあげてよ」
ポイント:存在を認め、頑張っている点を褒めることで承認欲求を満たす。「ありがとう」の声掛けも◎。
●お笑い芸人型
× 「あんまり面白くない」「ふざけないでくれる?」
○ 「盛り上げ上手だよね」「あのテーブルは常連さんだから、サービスしてあげて!」
ポイント:接客や渉外など、エンターティナーの持ち味を生かした仕事や役割を与えること。人を楽しませることが好きなので、その気持ちをお客さんへのサービスで発揮してもらう。
●雇用形態回避型
× 「人としてどうなんだ」「責任感を持ちなさい!」
○ 「社会人として大切なことだよ」「この経験が将来役に立つよ」
ポイント:一人前の社会人として扱っていると理解してもらうこと。自らの成長につながるなど、業務に携わるメリットを教える。
●レジスタンス型
× 「店の印象が悪くなる」「不機嫌な顔をするな」
○ 「何があったか聞かせてほしい」「落ち着いて話をしよう」
ポイント:お店に対する不満から反発心を抱いているケースが多いので、理由を聞く機会をきちんと設け、聞く姿勢を見せる。意見を受け止め、真摯に対応を。

面接時の応対や業務中の姿をよく観察して、タイプを見極めましょう面接時の応対や業務中の姿をよく観察して、タイプを見極めましょう

「天然無知型」は、社会経験が少ない分うまく教えてあげれば、グングン成長します。同時に、「武勇伝アピール型」「お笑い芸人型」はそれぞれの良さを認めてあげることで持ち味を発揮し、スタッフ内のリーダーやムードメーカーとなってくれるはず。

冷静な「雇用形態回避型」も、コミュニケーションを重ねることで心を開いてくれれば、自らの責任の範囲を広げて力になってくれます。そして、「レジスタンス型」も本人の不満をきちんと聞き、店の状況や方針を理解してもらうことで頼れる仲間に戻ります。

店長のコミュニケーションの取り方次第で、彼らの短所は長所へと変わるのです。

問題行動の予防は“質より量”のコミュニケーションから

スタッフたちは店長の行動をきちんと見ていますスタッフたちは店長の行動をきちんと見ています

 また、どんなに忙しくても、日頃からスタッフとのコミュニケーションを欠かさないことも大切です。60分のミーティングを1回行うよりも、1日1分のコミュニケーションを60日積み重ねるほうが、スタッフも受け入れやすい。「おはよう」「お疲れ様」といった一声をかけるだけでも効果があります。一人ひとりに声をかける時間が取れないなら、まずは日々の売上を全スタッフにメールで送ることから始めてみてください。

大切なのは、現場のスタッフたちを絶えず気にかけている姿勢を見せること。こうした日々のコミュニケーションが問題行動の抑止になるだけでなく、信頼関係の構築にも役立ちます。もし、何らかのトラブルで辞めるスタッフがいても、最終出勤日には花を渡したり送別会を開いたりして、今までの感謝を込めて送り出しましょう。これは、残るスタッフの心をケアする意味もあります。

スタッフたちと良い関係を築ければ、大切な仕事や新人教育を少しずつ任せられるようになり、1年後には自身の業務も楽になるはず。彼らの素行に悩まされる今こそ踏ん張りどころ。お店の未来のために、頑張って乗り切りましょう!

アップ・トレンド・クリエイツ 白岩大樹

白岩 大樹 /Daiki Shiraiwa
アップ・トレンド・クリエイツ代表
1976年、熊本生まれ。中央大学卒業後、板前として和食「なだ万」に勤務。その後「牛角」のスーパーバイザーを経て、2004年に株式会社OGMコンサルティングの集客コンサルタントへ。2009年4月にアップ・トレンド・クリエイツを設立、「汗を流すコンサルタント」として現場支援を行う。必ず数字を変える強烈な執念から「笑顔の鬼軍曹」なる異名も。執筆、マンガシナリオ、新聞などでも活躍中。

アップ・トレンド・クリエイツ
http://upt-c.jp/

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