バイト・パートが辞める理由・続ける理由と、定着のための対策
- アルバイト育成・管理
手間とコストをかけて採用した人材がすぐに辞めてしまう……そんな悩みを抱える採用担当者もいるだろう。そこで今回は、アルバイト・パート就業経験者に、仕事を「辞めた理由」と「続ける理由」を聞いた。
どんな理由があって辞めるのか? もしくは続けていくのか? という就業者の心理をしっかり理解し、属性別の特徴から退職防止策を考えていきたい。
目次
今月のポイント
[ 全体 ]
学生/フリーター/主婦(主夫)のどの属性も、「続ける理由」「辞めた理由」はある程度共通している
[ 大学生 ]
効率良く稼げることが特に重要。給与面での満足感を与え、学年や季節ごとに変化する時間の使い方に対応できるシフト体制を整えると良い
[ フリーター ]
仕事内容や職場の雰囲気などを特に重要視している。気持ちよく長時間働けるように配慮すると共に、交通費を支給したり、採用時に雇用条件の認識のズレがないようにしたい
[ 主婦(主夫) ]
家庭のための時間を重視しているので、シフトを融通したり、通勤時間を短縮できるようにし、無理なく長く働ける環境を整えることが大切
調査概要
・調査期間:2013年5月31日~6月3日
・調査方法:インターネットリサーチ
・調査対象:全国5エリア(北海道、関東、関西、東海、九州)に在住かつ、直近1年以内にアルバイト・パートに就業した15~34歳の男女
・サンプル数:5,653名(※グラフ中のn数は、各設問における回答者数を指す)
1 アルバイト層全体の「続ける理由」「辞めた理由」
読み取れるポイント
- 「続ける理由」の1位は「勤務地が自宅から近いから」で、4割以上もの人が理由としてあげている
- 「辞めた理由」の1位は「店長や社員の人の雰囲気が悪いから」(12.7%)
- 「続ける理由」と「辞めた理由」にランクインしているのは、「職場の雰囲気」「勤務地までの距離」や「仕事内容への興味」など共通した事柄が多く、その良し悪しが継続/非継続の決め手になっている
職場の雰囲気や仕事内容への興味などが、続けるか辞めるかのキーポイントに
ランクインしている項目を比較してみると、順位の違いはあっても、「店長や社員の雰囲気」や「仕事内容への興味」「勤務地までの距離」など、「続ける理由」と「辞める理由」の項目はある程度共通していることがわかる。これらの要素は、学生もフリーターも主婦(主夫)も重視する、基本的なポイントだといえるだろう。
つづいて属性別の特徴を見ながら、アルバイト・パートの退職を防ぎ、長く働いてもらうためにするべきことを考えていきたい。
2 大学生の「続ける理由」「辞めた理由」と、定着のための対策
読み取れるポイント
- 「給与が高いから」が、他の属性よりも重要視されている
- 忙しい大学生にとって、通勤時間を節約できたり、時間の融通がきいたりする職場は魅力的
忙しい生活の中で、効率良く稼げる体制づくりが重要
学業やサークル活動に忙しい上に、行動範囲や人間関係が広がってプライベートでお金が必要な大学生は、アルバイトで効率的に稼ぎたいと考えているようだ。責任や負荷に応じて昇給できる制度を整えるなどして、給与面で満足感を覚えてもらえるようにしたい。
また、忙しい生活を送りながらアルバイトを続けていくために、通勤時間が節約できたり、時間の融通がきいたりすることは非常に重要なようだ。大学生は、学年や季節によって忙しさがまったく異なることもあり、希望に合わせてシフトを組むなど柔軟な対応をとると良いだろう。
過去の調査結果では、働くことによって自分を成長させたい人や将来やりたい仕事のために経験を積みたいと望む人が多かった。大学生へのヒアリングでも、自己の成長を感じたり、将来へのステップにつながる形で成果を出せたりすることが、継続のポイントに上がっていた。給与以外にもいろいろな業務を通じて成長の手ごたえを感じてもらうことが長く続けてもらう材料になると考察される。
3 フリーターの「続ける理由」「辞めた理由」と、定着のための対策
読み取れるポイント
- 「職場の雰囲気」や「仕事内容への興味」が、長く働いてもらうための重要なポイント
- 「続ける理由」に「交通費が支給されるから」「服装や身だしなみのルールが厳しくないから」といった、他の属性にはない項目がランクインしている
- 「辞めた理由」に「求人募集に記載されていた内容と、実際の仕事内容・条件が異なるから」がランクイン
良い人間関係の構築や交通費の支給によって、長期勤務したくなる環境づくりを
働く時間が長く、生活費を稼ぐ必要性からも、生活におけるアルバイトのウエイトが非常に高いフリーターは、「自宅からの距離」や「職場の雰囲気」「仕事内容への興味」など、心地良く意欲を持って働ける要素が揃っていることが重要なようだ。「服装や身だしなみのルールが厳しくないから」がランクインしているのも、ストレスなく働きたいという意思の表れだろう。フリーターが気持ち良く働けるように、普段から配慮しておきたい。
また、「交通費が支給されるから」がランクインしているのもフリーターならでは。毎日のように勤務する人も少なくなく、アルバイトの給料で生活していくフリーターにとって、交通費が自腹になることは大きなマイナス要因なのだろう。もし、交通費を支給していないようなら、改めて支給制度について検討してほしい。
そして、「辞めた理由」に「求人募集に記載されていた内容と、実際の仕事内容・条件が異なるから」がランクインしている。フリーターはアルバイト経験が豊富なことも多いため、求人広告に掲載されている勤務条件や労力と報酬のバランスを特にシビアに見ているのだろう。正確な募集原稿を作成するのはもちろんのこと、採用の際には、雇用条件などに認識のズレが生じないよう、雇用契約書を取り交わすなど、しっかり確認しておこう。
4 主婦(主夫)の「続ける理由」「辞めた理由」と、定着のための対策
読み取れるポイント
- 「勤務地が自宅から近い」「時間の融通がきく」「1日に働く時間が短いから」など、家庭と両立しやすくなる項目が「続ける理由」の上位にランクインしている
- 「続ける理由」の「自分でもできる仕事だから」が3割以上と、他の属性に比べて高い
家事・育児との両立が可能で、無理なく働ける環境を
家事・育児と両立しながら働くことが多い主婦(主夫)は、通勤時間を節約できる職場や、なにかあったときに時間の融通がきいたり、拘束時間が短い職場に魅力を感じることが多いようだ。継続して働いてもらうには、特に時間面で家庭と両立しやすい労働条件を整えることが大切だといえる。
また、主婦(主夫)は「自分でもできる仕事かどうか」を特に重視している。その背景には、仕事に対して大きな責任を負ったり、スキル磨きに時間をかけたりできないとの考えがあるのかもしれない。また、出産や育児で仕事に長いブランクがあって、自信を失っている可能性もある。主婦(主夫)がすでに持っているスキルで、無理なく能力を発揮してもらえるような仕事を任せると良いだろう。
過去の調査でもわかっている通り、主婦(主夫)はひとつの職場で長く働きたいという意識も強い。他の属性と同様、長く働くにあたっては「職場の雰囲気」も重要なポイントとなるので、日頃から職場の人間関係の良化に努め、ストレスを感じずに楽しく働いてもらえる環境を構築したい。