フリーターの半数が正社員を希望 不安定な生活に「生活保護にすがるしかない」などの声 ~フリーターの正社員意向に関する調査~

  • 求職者動向

「フリーター」の志向性を分析するシリーズ。今回から彼らのキャリアプランにクローズアップします。フリーターという職歴はキャリアとして認められることが困難で、長期化するほど正社員への道は狭まってしまうと言われています。その実情はどうなのか、また、フリーター自身はどのようなアプローチで正社員を志向しているのでしょうか。2回連載で彼らのキャリア観を掘り下げていきます。

調査概要

【調査地域】全国(インターネットリサーチ)
【調査対象】1500サンプル
未婚かつ学生を除く人で、アルバイト・パートに就業している人
本調査では高年齢のフリーター(35~44歳)も対象
■1500サンプルの内訳
男性/18~24歳:113サンプル、25~34歳:387サンプル、35~44歳:250サンプル
女性/18~24歳:250サンプル、25~34歳:250サンプル、35~44歳:250サンプル
【調査期間】2016年5月21日~5月23日

01 加齢とともに正社員希望者は減少

はじめに、正社員を希望する人がどれぐらいいるのかフリーター1500人にアンケートをとって調査しました。

上の円グラフを見ると、フリーター全体では約5割が正社員を希望していることが分かります。これを男女別で見ると男性の方がやや正社員希望者が多いのですが、さらに年齢別に見ると正社員希望者は年齢が上がるにつれて減少する傾向が見られました。男性では「18~24歳」が58%、「25~34歳」が56%、「35~44歳」が53%と微減傾向となりますが、女性ではその傾向が顕著となり、同様の年齢区分で56%→47%→38%と、年齢が上がるにつれて正社員の道を希望しない人が急増していく現状が明らかになりました。この点について見ていくことにします。

男女限らず「年齢が上がるにつれ正社員希望者が減る」理由として考えられるのは、「①自身の年齢によるあきらめ」です。回答者の声として、以下のようなものがいくつか挙がっています。

回答者フリーコメント

  • 「もう長年パート生活なので、正社員でなくてもいいやというあきらめのほうが大きい」
  • 「今更正社員になれるとは思えない」
  • 「正社員になりたいと思った時期もあったがなれなかった」

(あきらめの背景には、加齢とともに正社員への転職が厳しくなる事情があるのですが、この詳細は次回の更新で触れていきます)

さらに、女性においては上の年齢層ほど「②体力や精神的な負荷を抑える」人が多いことが考えられます。女性では年齢が上がるにつれて「プライベート・トラブル型」フリーターが多く、「仕事の負荷を抑えるためにフリーターを選択している」人が多いため、心身の負担が大きい正社員への道を希望しない人が多くなるものと思われます。このタイプの回答者の声として、「身体が弱く、いつ休まなければいけないかわからないため責任がある仕事を受けられない」という声も見られています。

「フリータータイプ別」の正社員意向についてもう少し触れると、正社員の希望率が最も高いのは、正社員を希望して就職活動を行ったものの結果が出ずにフリーターを選択した「正規雇用志向型」で、割合は64%。逆に正社員希望が少ないのは、芸能関係、職人・フリーランス型の職業につきたいという明確な夢を持っている「夢追求型」です。正社員希望は3割前後で、さらに小分類で見ると「芸能志向型」が28%、「職人・フリーランス志向型」が36%という数字が出ています。このようにフリーターのタイプ毎に見ると正社員希望者の割合は大きく異なるのです。

02 正社員の志望理由は「生活の安定」 厳しい収入事情が明らかに

今度は、第一章のアンケートで「正社員になりたいと思う」と回答した人に、その理由を聞いてみました。その結果、「安定した雇用」「収入」という2つの理由で9割以上を占めており、不安定な雇用、低収入に大きな不安を抱えるフリーターの姿が浮かび上がりました。タイプによって志向性が異なるフリーターですが、「生活の安定」を強く求める点ではみな共通しているのです。

不安定な現状を示す回答として実に様々な声が挙がりました。上の年齢層の中には「生活保護にすがるしかない」という深刻な意見も見られました。

回答者フリーコメント

  • 「ただでさえ少ない収入から割高な国民年金や国保を払うと何も残らない」
  • 「いつ解雇されるかわからないのに給料が安い。不安定な地位だからこそ正社員以上の時給でもよいのでは」
  • 「保障がない。保険とか自分でやらなきゃいけない」
  • 「解雇される心配が常に付きまとう」
  • 「ボーナスがないので生活レベルが上がらない」
  • 「正社員じゃないと収入が安定していないので、結婚が難しい」
  • 「将来があまりに暗い。最終的に生活保護にすがるしかない」

これらのことから、「生活の安定・向上」がフリーターの「求人募集時」においては他社との差別化になり、「長期雇用」という視点でも有効であると言えます。採用側として検討すべき点としては、賃金や昇給制度の見直しに加え、一般的な正社員への転換推進措置や、短時間正社員のような多様な正社員制度の導入が挙げられます。フリーターの正社員への転換は、長期間にわたって人材を観察できる点で人物や能力の見極めがしやすく、また、政府の「キャリアアップ助成金」が受けられることもあり、採用側にも大きなメリットがあります。キャリアアップ助成金については厚生労働省のこちらのページに詳細が載っていますので参考にご覧ください。

上のアンケートでは、「仕事の幅を広げたり、責任のある仕事」を第一に求めて正社員を目指す人は4%に留まりました。しかし今回の調査において「フリーターではスキルや責任感が身につかず、正社員への転職には不利」と、実戦的なスキル・キャリアが積めない現状に不安を抱えているフリーターの声が多く見られました。この点は次回の記事にてもう少し詳しくお伝えすることにします。

今回の記事では、加齢とともに正社員希望者が減少すること、フリーターが生活の安定を求め正社員を希望していることが分かりました。それでは、正社員を目指し転職活動をするフリーターはどんな困難に直面しているのでしょうか?詳しくは次回の記事で見ていきます。

 

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