ゆとり世代における4タイプ別傾向と対策

  • 市場動向

わがまま、常識がない、向上心がなく安定志向…、なにかと批判の多い“ゆとり世代”。
「働く」ということに対して、実際にはどういった就業意識を持ち、そして、どういった特徴を持っているのだろうか。
ゆとり世代の特徴を捉えた上で、戦力化するにはどういった対応が有効か、その検証を行いたい。

今月のポイント

  • 一口に“ゆとり世代”といってもその傾向は一様ではなく、「自己中ハリキリスト」・「こつこつ指示マチスト」・「慎重ためらイスト」・「流され甘んジスト」の4タイプに分かれる。
  • “ゆとり世代”を育成する際は、4つのタイプに基づいた対策が重要になってくる。

調査概要

【インターネットリサーチ】
■調査対象:
北海道、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)、東海(愛知)、関西(大阪、京都、兵庫、滋賀)、九州(福岡)在住
かつ 1年以内に非正規雇用に就業した22歳の男女
■調査時期およびサンプル数
・2010年3月(サンプル数 488名)
・2008年3月(サンプル数 688名)

【インタビュー】
■調査手法:対象者を会場に招いて1対1のパーソナルインタビュー
■調査対象:首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)に在住
かつ 1年以内に非正規雇用への就業経験または求職活動経験がある15~22歳の男女を同条件の23~34歳の男女と比較
■調査時期:2010年7月
■サンプル数:37名(うち、15~22歳は22名)

※尚、本文における“ゆとり世代”の定義は、
1987年4月2日生まれ(2003年度の第1学年から学年進行で実施された学習指導要領における高校教育をはじめに受けた年代)以降を定義している。

1.実はやる気に溢れる“ゆとり世代”

2008年との比較にみる“ゆとり世代”の特徴

いわゆる“ゆとり世代”に対し、仕事を探す際の重視点や仕事に対するスタンスなど、その就業意識を探った。非ゆとり世代(2008年3月に22歳だった層)と比較すると、最も差が出た回答は「将来に不安を感じる」で56.8%。非ゆとり世代の回答が86.5%だったのに対し、29.7ポイント以上も減少する結果となった。全体の半数以上が不安を感じているとはいえ、リーマンショック前の2008年3月と比較して不安が減少しているのは意外であるが、将来に対して楽観的な層が増えているという表れかもしれない。

次に差が出たのは、「できれば働きたくない」という回答。非ゆとり世代は僅か12.4%であったが、ゆとり世代の回答は38.1%と25.8ポイント上昇している。しかし、決して仕事に後ろ向きな傾向ばかりではない。3番目に差が出た回答として「仕事(またはアルバイト)はお金を得るための方法だと割り切っている」が、2008年の66.0%に対し、ゆとり世代の回答は44.5%と、21.5ポイントも減少している。そのほか「いろいろな仕事を経験したい」 、「ひとつの仕事を長く続けたい」、「仕事を通して、自分の目標や夢を実現させたい」などの項目にも上昇がみられ、仕事に対して積極的に捉えている傾向がうかがえる。

また、今回この調査とは別に、実際に16-22歳のゆとり世代22人にインタビューを実施したところ、ここでも「やれるなら色々な仕事をしてみたい」「次の仕事はずっと続けるつもり」など、アンケート調査の結果を裏付けるような発言も多く見られた。

図1.ゆとり世代の就業意識: 「ゆとり世代」と「非ゆとり世代」における意識の差

2.インタビューから見えてきた、4つのタイプ

調査から浮き彫りになった4つの傾向とは

ゆとり世代の調査やインタビューを行ううちに、彼らの仕事観や特徴は決して一様ではなく、4つのタイプに分類できることが分かった。

その分類を表したのが下の図である。

図2.ゆとり世代の4つのタイプ

まず大きく分けられるのは、「自分の意思や意見に忠実」か「他人の意見に従順」かという縦軸の分類である。

インタビューの中でも、前者には「家の近くでシフト自由・服装自由な小さい自営業のお店の販売が良い」(20歳女性フリーター)など働きたい仕事内容や条件、雰囲気などが明確に定まっていたり、「自分に合う仕事が無くても一切妥協はせず、新しい募集が出てくるまで待つ」(20歳男子大学生)などこだわりを捨てない層がいた。一方で、後者は「親が見つけてくれたのでバイトに応募した」(18歳女子高校生)、「やりたい職種は特になく、変なものじゃなかったら何でも良い。」(16歳男子高校生)など自分ではあまり考えず周囲の意見に従う発言が多くみられた。

次に分かれたのが、自発的なアクションを起こすか否かという横軸の分類である。

積極的にアクションを起こす層は「自分に合う仕事を見つけるために、数多くのサイトを毎日欠かさず全部見る」(19歳女子大学生)、「お店が自分に合いそうか、気になれば見に行った」(19歳女子大学生)、「やってみて、だめだったら考える」(16歳女子高生)という回答があったのに対し、そうでない者は「受付などをやってみたいが、自分には難しそう」(20歳 女性フリーター)、「携帯販売やアパレルに憧れはあるが、知識がないので自分には厳しそう」(19歳 女子大学生)などアクションに結びつかない発言がみられた。

3.4タイプ別 傾向と対策

“ゆとり世代”の育て方

前述したように、内面的には決して後ろ向きではない“ゆとり世代”。傾向が異なるとすれば、その対応も異なってくるはずである。各々のタイプに対しどのように育てていけばよいのだろうか。

ここからは株式会社fRee sTyle代表取締役で、みずから各種研修のトレーナーとして企業をまわり、ゆとり世代育成にも定評がある城田京子氏に監修いただき、その対応を考察した。

自己中ハリキリスト

【傾向】
相手の立場を考えたり、人からどう見られるか?といった視点に欠け、自分勝手な言動をとるタイプ。わがままというよりは、どちらかと言うと単に社会のルールや常識を知らず、自分の判断軸で動いてしまっているだけの場合も多い。いわゆる「部長・課長も友達感覚」などはこれの部類にあたる。インタビューにおいては、絶対にやりたい職種や譲れない条件等に固執する傾向が見られた。

【城田氏の解説】

「個性を重んじる」という価値観は、ゆとり教育の中で正しく機能しませんでした。さらに、親や地域社会の「しつけ」不足が拍車をかけ、このタイプの若者を生み出したのかもしれません。彼らは「自己主張」と「個性」をはきちがえており、自分という「個」が社会システムの一部であり、「個」の発展は自分が所属するシステム(組織、社会など)に貢献なしには実現しない、という認識が不十分なようです。

城田京子氏【対策】

「しっかりと言い分を聞いた上で、フェアなフィードバックを」

「自分が所属するシステム(組織、地域社会など)の発展こそが自分自身の成長につながる」という意識に目を向けさせると効果的です。また、もともと成長意欲は高いので、他人からのアドバイスが自分の成長に役立つのだということを本人に知らせてあげると、積極的に吸収するようになるでしょう。

最初は他人からのフィードバックを上手に受け取れない可能性があります。まずは本人の意見や考えをよく聴き、信頼関係を築いた上で「人はあなたをこのように見ている」というメッセージをフェアに伝えると本人の行動変容につながりやすくなるでしょう。

こつこつ指示マチスト

【傾向】
やる気が無いわけではなく、言われたことは一生懸命やるが、言われたことしかやらないタイプ。自分自身で物事を深く考えず、判断を他人に任せてしまう。すぐにネットで答えを検索したり、過剰に口コミに反応してしまうことが多く、「○○の資格が良いらしい」と聞くと、無目的にその資格を取ろうとして頑張るのもこのタイプ。インタビューにおいては、「毎日探している」ものの、その判断が消去法のみであったり、1つのサイトだけに依存する様子が特徴的であった。

【城田氏の解説】

ゆとり世代はもちろん、若者全般に「受身」である傾向が見られます。これは必ずしも「ゆとり教育」だけの結果ではなく、社会全体の変化によるものかもしれません。もちろん、教育現場において「教える」「正解を与える」ことが中心となり、「考えさせる」「発言させる」というアプローチが不十分なことは要因の一つです。しかしそれ以外にも、望まなくとも物やチャンスを与えられるという環境で育ったことや、 テレビやインターネットの情報を一方的に受け取っていることなど、多くの要因が重なっていると考えられます。

城田京子氏

【対策】

「指示という補助輪を少しずつはずしていく」

業務を指示しながら、徐々に本人の工夫を入れてもらうように促します。このタイプの人は、最初から「自分で考えてやってみて」と言われても、行動がとまってしまう恐れがあります。最初は上司の指示99%、本人の工夫1%の割合でもよいので、本人のアイディアをいれるように誘ってみましょう。そしてほんの少しでも本人が独自性を入れたら大いにほめましょう。それを続け、「自分のアイディアを少しいれるとよいことが起きる」という発想を浸透させ、徐々に指示を減らしていきます。

また、このタイプは人に対して支援的な人が多いので、業務指示というメッセージを少し変えて「やり方でちょっと困っているんだけど、何かいいアイディアはないかな?」といったような相談の形をとれば、本人にとって受け入れやすくなり、より効果的です。

慎重ためらイスト

【傾向】
自分で考え、やりたいことや憧れはあるものの、自分で自分の限界を勝手に決め「私には無理…」と挑戦をためらってしまうタイプ。インタビューの中でも「アパレルをやってみたいけど、なんか自分には難しそう」「携帯の販売は憧れはあるんですが、覚えることが多くて難しそう」など、自分の中で自分の限界に線を引き、挑戦をためらう傾向が見られた。

【城田氏の解説】

ゆとり教育や親の教育だけでなく、社会のあり方に問題があったのかもしれません。具体的には、彼らは失敗をする機会を奪われたり、行動や挑戦をしなくてもサポートを受けたりしたことで、 挑戦することの必要性を知らずに育ってしまったのでしょう。また、本人の内面の問題としては、自分の損得の枠の中だけで思考がとどまり、大きな動機づけが起こらないといった現象も見受けられます。

城田京子氏

【対策】

「とどまっていることが安全ではないことを伝える」

自分ができる範囲の中だけで、ミスする事なく仕事をこなしていくことに本人は価値を感じているのかもしれません。これまでミスをせず仕事をこなしてきたのであれば、まずはそれを認めましょう。一方で、この先そのような姿勢をずっと続けていったとしたら、どんな状況が待っているのかについても考えさせるとよいでしょう。厳しいことかもしれませんが、チャレンジしないということは成長しないということであり、同じ仕事だけをし続けるという選択肢は存在しないということを伝えるべきでしょう。

そして本人のチャレンジを支援する際には、前例や具体的な方法を提示したり、あるいは情報の集め方を伝え本人に調べてもらうことも効果的です。また、どんな小さくても最初の第一歩を踏み出したら大きく賞賛することも忘れてはいけません。

流され甘んジスト

【傾向】
自分ではあまり考えず、こだわりも特にないため、周囲の意見に流されることが多いタイプ。現在の自分にそこそこ満足し、将来もそこそこで良いと考えるためチャレンジしない場合が多い。前述の「慎重ためらイスト」が、自分で勝手に判断してためらうのに対し、こちらは自分の頭では判断せず周囲の意見に流されるのが特徴的。インタビューでも「親が見つけてきたから、バイトに応募した」「○○職は難しいらしいから辞めた」など、他人の意見や噂に流される様子が見られた。

【城田氏の解説】

自分のアイデンティティがなく行動もしないという、上司にとっては手強い相手です。彼らの特徴は、自分の実際の行動に基づく経験が圧倒的に少ないことです(知識は豊富に持っていることがあります)。実感が少なく頭の中だけで事象を評価することが多いため、情動が生まれにくく、自分自身を突き動かすドライバーが弱いと考えられます。

城田京子氏

【対策】

「少し強制力が必要です」

行動をさせながらアイデンティティを徐々に確立させていくことが必要になります。こだわりがないように見えますが、強いモチベーションが起こらないことが根本の原因である場合があります。その場合は指示的なアプローチになりますが、本人の行動を伴う体験をさせるよう導きます。行動の後にはきめこまかなコミュニケーションをとり、本人に自由に話をさせ、その対話を通じて本人が自分というものを感じていけるように支援します。

ただ、頭でっかちになりやすいので、話すことよりも行動の量を多くすることがポイントです。

 

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