団塊世代、定年後の就業意識とは?50~60代のシニア労働力を知る
- 市場動向
いわゆる「働き手」は、時代とともに様変わりしている。50代や60代を引退間近の人たちみる考え方は、もはや通用しないだろう。少子高齢化による労働人口の低下、団塊の世代の定年ラッシュ。それでなくとも、日本は世界に誇る長寿国である。シニア層を積極的に採用することが、当たり前の社会になるとしたら…。そこで今回は、シニア層と呼ばれる人たちの働く意識や希望条件など多角的に探ってみることにする。
目次
調査概要
調査方法:インターネットアンケート
調査対象:首都圏の50-69歳男女、下記いずれかにあてはまる方
①現在非正規雇用に従事する男性・女性
②現在無職で、今後非正規雇用で働く意向がある男性・女性
③現在正規雇用に従事し、定年退職後非正規雇用で働く意向のある男性
調査期間:2007年6月
サンプル数:2325s
ウエイトバック:実際の人口構成比にあわせるため、総務省統計局「平成14年就業構造基本統計調査」による
非正規雇用就業人口に基づき、「性別・年代」ごとにウエイトをかけた
1.シニアの働く理由
~生活費やお小遣い稼ぎのほか、健康維持や社会との接点も大きな理由~
シニア層の労働力を探っていく前に、そもそもシニアたちはなぜ働きたいのか。それについて、調べてみたい。(表1-1~1-3)
現在正規雇用の男性(50代が75%を占める)が、定年退職後に働きたい理由-それはずばり「生活費のため」。2位以下の「健康によい」「自分自身のお小遣いを増やしたい」を大きく引き離してトップだ。
一方、現在無職の男性(60代が65%を占める)・現在無職の女性(50代が61%を占める)では、ともに「自分自身のお小遣いを増やしたい」がトップ。男性ではそのほか「健康によい」、女性では「社会との接点が欲しい」が高いのが特徴的だ。現在正規雇用の男性と違って、現在無職の男性では「生活費を補いたいから」がやや低いのが特徴的だ。
対して、現在正規雇用(=正社員)で働いているシニア層たちの働く理由(図1-4/複数回答)はどうだろう。最多回答は67.1%を占めた「生活費を補いたいので」。57.7%の「働いた方が健康に良いと思うので」が続き、現在無職のシニア層ではトップだった「自分自身のおこづかいを増やしたいので」は3位に後退している。
この現在正規雇用の男性を、さらに現在経済的に満足している層と満足していない層に分けてみると、満足層では「働いた方が健康に良いと思うので」がトップに。さらに「今持っているスキルや資格を活かしたいので」と「社会に貢献したいので」の多さが目立った。満足してない層では「生活費を補いたいので」が断トツのトップで84.6%に達している。また、「ローンや借金の返済に使いたいので」の多さも目を引いた。
2.希望の仕事内容
シニア層でも「事務」は大人気
では、シニア層は具体的にどんな仕事に就きたいのだろうか。(表2-1~2-3)でランキング化してみた。
現在正規雇用の男性・無職の男性・無職の女性すべての属性において、「事務」が一番人気。特に無職の女性では圧倒的に高い(6割近くが希望)。この層ではついで「スーパーなどのスタッフ」「医療福祉関連」も人気だ。
現在正規雇用の男性では「事務」は3割程度。ついで「商品検査・仕分け」「製造・組立作業」「営業」と オフィスワークでない仕事に分散している。一方、現在無職の男性では、トップの「事務」以下、「商品検査・仕分け」「製造・組立作業」のほか「web関連専門職」「医療・福祉関連」など、ややオフィスワーク人気の傾向が見られる。おそらく、60代の比率が高い現在無職の男性は、体力的なこともあって、座ってできる仕事を希望する割合が高いのだろう。
3 仕事選びの重視点
シニア層はイエチカが重要
次に、実際に仕事を選ぶ際の重視点を見てみよう。(図3-1)
現在正規雇用の男性では「仕事内容が自分に合っていること」(59.2%)がトップに。僅差で「勤務地が自宅から近いこと」(58.3%)2位。ついで「「仕事内容に興味が持てる」「持っている技術や経験をいかせる」など、仕事内容への積極的な興味・重視度が高いことがうかがえる。
それに対して無職の男性ではトップが「勤務地が自宅から近い」。無職の女性でも同様の結果に。無職の男女は、仕事内容もさることながら、「「時間の融通がきく」「1週間あたりの勤務日数が少ない」「1日に働く時間が短い」など、条件面への重視も高いことが分かる。
4 働くことへの不安
シニアの不安は一に体力、二に能力
シニア層が抱える、働くことへの不安とはどのようなものだろう。(図4-1/複数回答)。実際に働いた場合の不安として、もっとも多かったのは「自分の体力で続けられるかが心配」。現在正規雇用の男性、無職の男性、女性のすべてでトップ回答となった。以下「自分の能力で働けるかが心配」「人間関係が心配」と続く。
また、無職女性は、先の上位3つの不安について、どれも数値が正規雇用の男性や無職の男性よりも10~15%も高く、その結果からも無職女性の不安の高さが伝わってくる。一方、無職女性はさほど多くないが、正規雇用の男性や無職の男性に多い不安として「雇用形態がよくわからない」や「仕事の内容がよくわからない」があった。
今月のまとめ
- シニア層は、現在の状況や性別によって、働く目的や希望条件が明確に異なってくることがわかった。採用側から見れば、それを十分理解することで、より効果的に採用が見込めることになる。シニアだからと、ひとくくりに「高齢者」としてイメージすることは避けたい。
- シニアが働く目的としては、「自分のおこづかいを稼ぐ」か「生活費の補うため」といった収入面での理由がやはり高い。また、勤務場所は「イエチカ」がやはり人気で、その点からも求人エリアは考慮したい。
- 働くことの不安要素を払拭することが、シニア層活用のポイントである。体力面と能力面での心配が多く、それゆえ事前の仕事の説明や、研修、トレーニング制度があるのならそれもきっちり説明するなど、細かい配慮をしたい。合わせて、仕事の楽しさを伝えられれば有効だ。