人手不足解消の鍵となる「シニア採用」をするために知っておきたい現役シニアアルバイトの4タイプ

  • 採用課題

体力と意欲に溢れ活発に行動する高齢者が「アクティブシニア」と呼ばれるように、かつてのシニアとはイメージが変わってきた今のシニア世代。定年を迎えた後でもまだまだ働きたいと思う人が数多く存在する一方で、シニアをアルバイトの貴重な戦力として捉えている雇用先はまだまだ少ない上、その実態もあまり知られていないのではないでしょうか。

そこで今回のアルバイトレポートでは、60歳以上でアルバイトに従事している人がどのような価値観を持っているのかを明らかにするために、アルバイトに対する目的別にタイプ分け行い、アルバイトを選んだ背景や重視点などを調査しました。人手不足を解消するためにも、シニアの現状を理解し、採用ターゲットとして検討してみてはいかがでしょうか。

関連情報:大学生版はこちらフリーター版はこちら主婦版はこちら

目次

調査概要

【調査地域】全国(インターネットリサーチ)
【調査対象】60歳以上で、現在アルバイト・パートに従事している人
【有効回答数】844サンプル(うち、60代680サンプル、70代164サンプル)
【調査期間】2016年12月12日~12月14日

シニアがアルバイトをする4つの目的とは?

はじめに、アルバイトに対する価値観を探るために、60歳以上のアルバイト就業者に対し「アルバイトをする一番の目的」を選んでもらいました。

その結果、生活費やお小遣いといった「お金を稼ぐため」が36%で最多ではあるものの、「健康を維持するため」(25%)、「社会との繋がりを感じるため」(24%)、「仕事のやりがいを感じるため」(12%)という目的の人も一定数存在し、アルバイトに対してお金以外の部分を重要視しているシニアが多いことが分かりました。今回、これらの目的別にシニアを4つのタイプに分け、それぞれの志向性や特徴を詳しく見ていくことにします。次章より、多いタイプ順に詳しく解説していきましょう。

※2015年の労働力調査をもとにしたパーソルプロセス&テクノロジー独自推計では、アルバイト・パート就業人口は1,365万人。その内、60歳以上のアルバイト・パート就業人口は全体の約23%の315万人であると考えられます。

「お金を稼ぐため」が第一目的のシニアとは?

<このタイプのシニアイメージ>

Aさん 65歳

定年退職をしたものの、年金だけでは自分の小遣いのみならず生活を維持していくことさえ難しい。老後の生活も不安なので現在の貯蓄は減らしたくないし、毎月医療費もかかるので必要に迫られてアルバイトを始めました。少しでも自分で自由に使えるお金があると、つい孫にゲームなどを買ってあげてしまいます。

<就業データ>

平均年齢:平均64.2歳 平均月収:9万3千円平均年齢
シニア全体における割合:36%

※赤枠は特徴的な箇所を示す  ※()内の数値は全体平均を示す

このタイプのシニアで多いのは、年金だけでは生活していけないという場合や、年金までのつなぎのため、または老後に向けて蓄えるためにアルバイトをしている場合で、必要に迫られてアルバイトを始めた人が多いと言えます。

主な目的がお金を稼ぐことであるため、4タイプの中で最も多く働き、稼いでいるタイプです。週の希望シフト数が唯一の5日であり、平均月収を見ると9万3千円で最多となっています。

就業にあたり不安なことの1位は「年齢制限はないか」(50%)で、他のタイプのシニアと比べて高い割合となっています(全体平均44%)。「年齢的に自分の好みで探せる状態ではなく、何でもいいから働けて、少しでも生活費が入ればOK」「60歳過ぎて雇ってくれる所は少なかった」という声も見られたように、収入を得るために、実質的な年齢制限をしていないアルバイト先を見つけることに苦労した人が多いようです。

仕事探しの重視点では「長い期間働くことができる」ことや、「給与の高さ」(上記表ではランク外の6位)を重視する傾向があり、逆に仕事における「やりがい」を重視する人は少数派です(全体平均20%のところ7%)。やりがいのある仕事というよりも、まずは仕事自体を見つけることが先決、という状況が伺えます。就業できるかどうかを判断するために、「自分と同世代の人が実際に働いているか」を気にする人が多いのがこのタイプです。求人原稿においては60歳以上の方が実際に多く就業している点や、平均年齢などを記載すると応募に繋がりやすくなると考えられます。

アルバイトをして嬉しかったことを聞くと、シニア全体としては「感謝される」「必要とされる」「人の役に立つ」といった点がポイントとして挙がりましたが、このタイプでは、さらに「自由にできるお金がある」といった声があったのが特徴です。「自分で自由にできるお金があるのはいつでも嬉しい。孫達と遊べるし旅行にも行ける」「自由に使えるお小遣いがあるので、友人と楽しく過ごせる」といった声や「自立のために必要な金を自分で得られるほど強いものは無い」というように、働いてお金を稼ぐことの喜びを感じている人が多いようです。

フリーコメント ~アルバイトを始めた理由~

生活費が必要で時間もあるためバイトしなければならない状況で始めました。62歳から始めているが、職種が限られてくるので長く雇用してくれるところを探しました。
定年退職後1年間無職だったが、年金だけではお金が足りなかった。また何かをやる時間もたっぷりあったので午前中だけのパートタイマーとなった。
前職を早期退職したが、初老の男子が就職できる仕事はほとんどなく、年齢制限のない仕事は今の職場しかなかった。
きちんとした職に就きたくても高齢だから正社員の就職口がないため、シルバー人材センターに登録してパートの仕事を派遣してもらっている。

フリーコメント ~仕事探し全般で苦労したこと~

明かに募集年齢を決めており、面接に行くのが全くの無駄のケースが多い。
能力ではなく年齢で切られてしまう所が多く、選択肢は殆どなかった。

フリーコメント ~アルバイトをしていて嬉しかったこと~

子供や孫におこづかいをあげられる。外食、買い物が自由にできる。
自身の労働賃金で生活できることがとても嬉しいです。

「健康を維持するため」が第一目的のシニアとは?

<このタイプのシニアイメージ>

Bさん 66歳

退職後、家でブラブラしていたら体重が増えてきました。健康のためにせめて歩くぐらいの運動を…と思ってもなかなか始められなかった時に軽作業の仕事を見つけました。運動は嫌になればすぐやめてしまいますが、仕事として体を動かすことは強制的なことなので続けられますし、脳も活性化します。実際にやって見ると身体の調子がすこぶる良く充実感を味わっています。

<就業データ>

平均年齢:平均65.8歳 平均月収:7万7千円
シニア全体における割合:25%

※赤枠は特徴的な箇所を示す  ※()内の数値は全体平均を示す

このタイプのシニアで多いのは、定年退職した後に家にいることが多くなって運動不足になったり、生活のメリハリがなくなり生活リズムが乱れてしまったりするパターンで(一部、日中の飲酒が習慣になったケースも)、女性よりも男性が多数派となっています。

「ジョギングなどは、嫌になればすぐやめてしまいますが、仕事なら強制的に体を動かすことができる」というコメントも見られており、アルバイトは軽い運動を行う感覚に近いと言えます。現役時代にデスクワークをしていた人が、健康維持のため身体を動かす単純作業を意識的に選ぶケースも少なくないようです。

職種としては、梱包・仕分けなどの軽作業や、清掃のアルバイトを希望する人が比較的多いほか、警備の見回りやゴルフ場のコース管理といった「歩くことが多い」仕事が人気のようです。また、身体的な健康に留まらず、脳の活性化や精神面の健康維持というメリットを期待してアルバイトを行っている人も見られました。

体を動かす仕事を希望する人が多い分、希望労働時間は短めの傾向が出ています。仕事探しの重視点として「働く時間が短い」ことを希望する人が他のタイプのシニアよりも多く多く、その場合の平均勤務時間としては4~5時間が目安になります。

アルバイトをして嬉しかったことを聞くと、「若くいられる」という点を挙げる人がいるのがこのタイプの特徴です。「年齢よりかなり若く見られるのが嬉しい」「気を張っているので元気で若くいられる」といった声が挙がりました。

フリーコメント ~アルバイトを始めた理由~

現役終了後家で「ゴロゴロ」している状況であった。健康を維持するには規則正しい生活を考え近隣にある仕事に従事するようになった。
定年退職して健康維持のため定期的に適度に体を動かしたくて、チラシで見た洗車のバイトに応募して月11日ほど働いている。
健康に良くて、手軽な仕事で何がしかの収入になればそれで良いと思った。

フリーコメント ~仕事探し全般で苦労したこと~

ずーっと仕事をしているので体を動かすのは誰にも負けないのですが、年齢で落とされます。
年齢の制限が多く、仕事が見つからなかった。

フリーコメント ~アルバイトをしていて嬉しかったこと~

毎日の生活のリズムがあり健康対策にも良かった。
人から喜ばれたり、人から頼りにされたりすることや、人や社会とか関わりがあることで若さを保てる気がして嬉しい。

「社会との繋がりを感じるため」が第一目的のシニアとは?

<このタイプのシニアイメージ>

Cさん 66歳

会社員を65才で退職したあと、3~4か月は読書・運動や散歩、友人との会話をそれなりに楽しみました。しかし何も生み出さない日々に焦りと社会からの疎外感を感じ、社会と繋がりたい思いが強くなりました。自由に使えるお小遣いも欲しかったです。今では社会との繋がりや、若い人たちとも交流して新しい風をいただき、毎日が生き生きして有り難さを感じています。

<就業データ>

平均年齢:平均65.5歳 平均月収:7万5千円
シニア全体における割合:24%

※赤枠は特徴的な箇所を示す  ※()内の数値は全体平均を示す

このタイプのシニアがアルバイトをするきっかけで最も多いのは、定年退職後や子育てがひと段落した後、家で過ごす時間が多くなってしまい社会からの疎外感を感じてきたといったパターンです。「仕事から離れると人とのコミュニケーションが少なくなり、老化が進むのではないかと思った」「このアルバイトをしないと、世の中とのつながりが半減する」という声も挙がっており、アルバイトをすることで他者との交流を望んでいるタイプだと言えるでしょう。

回答者のコメントを見ていくと、特に「若い人との交流」を求めている人が多く、「若者と交流が出来る職場でエネルギーチャージ」「若い人との関りが有りとても新鮮」といった声が見られています。この他、「60歳を過ぎても多くの知人、友人が出来たことで新しい世界が広がった」という声も見られ、アルバイトを通して人間関係を広げている人もいるようです。「就業にあたり不安なこと」を見ても、3位の「同僚となじめるか」の割合がやや高いのがこのタイプです。

仕事探しの重視点で「やりがいがある」の割合が高めになっていますが、アルバイトを通じて社会に恩返しをしたい、人の役に立ちたいという声が挙がっています。「自分が現役時代に仕事をしている時に保育園や学童クラブに支えられていたので、その仕事を終えた今、何らかの形で恩返しがしたい」「高齢者の人権、尊重が守られるために役立ちたい」というように、社会貢献志向が高いことも特徴だと言えるでしょう。求人原稿においては「若い人とのコミュニケーション」や「仲間づくり」ができること、またアルバイトを通じて人の役に立てる点などをアピールすることがポイントになりそうです。

フリーコメント ~アルバイトを始めた理由~

会社員を65歳で退職したあと、3、4か月は自由でのんびりしたが、だんだんと毎日の生活がむなしく感じるようになり、社会とのつながりが必要と感じたから。
60歳で定年退職し、1年間無職だったが、社会との繋がりがなくなったようで寂しく、パートを始めた。介護関係の仕事は、人手不足で、利用者に感謝され、やりがいがあると思った。
定年退職後、特にすることが無くまた田舎なので若い世代と接触機会が少ないので老化が心配になった。60歳の時、ハローワークに行き職を探していると、ハローワークで働かないか?と言われ勤めました。

フリーコメント ~仕事探し全般で苦労したこと~

年齢的にも資格的にも業種が限られること。
自分の年齢で受け入れて貰える仕事。立仕事ではなく座って出来る仕事。

フリーコメント ~アルバイトをしていて嬉しかったこと~

感謝、頼りにされること。名古屋のおばあちゃんと言われ、嬉しい。
定年で人生のほとんどが完結したような気分だったが、60歳を過ぎても多くの知人、友人が出来たことで新しい世界が広がった。また、地域との結び付も深くなった。
社会と繋がっている緊張感が持てること。自身の良い刺激となる。生活にメリハリ・リズムができる。

「仕事のやりがいを感じるため」が第一目的のシニアとは?

<このタイプのシニアイメージ>

Dさん 66歳

54歳から自分の専門を生かせる時間制の塾講師の仕事を継続して勤務しています。教えていく中で子供たちが変化していく姿を見ることに喜びを感じます。退職した友人は仕事がなくてさびしいと聞くので、社会参加で健康管理を兼ねて、定年なしのこの仕事ができるまでは続けたいと思っています。

<就業データ>

平均年齢:平均65.7歳 平均月収:8万4千円
シニア全体における割合:12%

※赤枠は特徴的な箇所を示す  ※()内の数値は全体平均を示す

仕事探しにおける重視点において「やりがいがある」ことが1位(同率)になっている通り、このタイプの人にとってアルバイトを行うことはまさに「仕事のやりがい」を感じるためだと言えるでしょう。フリーコメントから現在の職種を選んだ背景を見ていくと、長年勤めていた以前の仕事の経験や得意分野を生かしたアルバイトを行っているケースが多く見られました。また、定年した後に資格を取得した人もおり、「自身の能力を発揮し、社会に役立ちたい・必要とされたい」という思いが共通して伺えます。

希望職種を見ると、講師・インストラクター、医療・福祉・介護が多めで、梱包・仕分けや清掃などの軽作業系を希望する人がやや少な目です。職種については今回の調査対象者の偏りもあるかもしれませんが、「自身の能力を発揮したい」という思いから過去の就業職種を希望する傾向があり、キャリアや高いスキルが求められる職種や、各々が得意な仕事・好きな仕事が選ばれていると見て良いでしょう。

「アルバイトをして嬉しかったこと」を聞くと、「教師としての経験からの助言で保護者が喜んだ」「難しい問題を解決して感謝された」といった声が挙がっており、「専門性的な能力を発揮して役立てた」という趣旨の内容が多く見られたのが特徴です。また、「年齢で疑問を持たれたが、実際に仕事をしたら若い人に負けない作業に感心された」という声も挙がっています。このタイプのシニアの募集のポイントとしては、年齢ではなく本人の能力や意欲を採用で重視している点をアピールしたり、実際に活躍しているシニアの実例を挙げると良いでしょう。

フリーコメント ~アルバイトを始めた理由~

会社定年後、経験を活かし人から喜ばれる仕事として相談業務を始め、その後更に上位のカウンセラー資格も取って現在続けている。
介護職は以前していましたので慣れているし、高齢者との触れ合いが好きですから迷いなく選びました。
65歳で塾講師の仕事を始めました。英語が好きなので何かそれに関わる仕事をしたいと思いました。単にお金を稼ぐということだけでなく、人の役に立ち、また自分も成長できるのではというのも理由です。

フリーコメント ~仕事探し全般で苦労したこと~

今までのキャリアが活かせる仕事がない。
なかなか興味のある業種がなかった。勤務体系も要望に一致する物がなかった。

フリーコメント ~アルバイトをしていて嬉しかったこと~

相談業務を終えて相手が納得し、明るい表情になり終了した時。
管理業務でPCを有効に使用しておらず、Excelでの活用法を教えて喜んでもらえた事。
自分が作ったポスターを見て、お客さんが来てくれた時。

【まとめ】

「アルバイトレポート」に掲載されている記事・図表の著作権は、全てパーソルプロセス&テクノロジー株式会社または正当な権利を有した第三者に帰属しています。
当該著作物を利用する場合には、出所の記載をお願いします。
また、編集・加工等をして利用する場合には、上記出所に加え、編集・加工等を行ったことをご記載ください。
WEBサイトに掲載される場合はこちらからお問い合わせください

ページトップへ

おすすめの記事