実はあと『10.1時間』もシフトに入りたかった!?既存スタッフ稼働最大化のススメ

  • お役立ちインタビュー

昨今、アルバイトの新規採用に苦戦し、慢性的に人手不足に悩まされている、という店長、管理者の方も多いことでしょう。人手不足が深刻化すると、サービス低下、さらには経営にも影響が出る可能性もあります。そうした事態を避けるためにも、人手不足を解消する手段を今一度、真剣に見つめ直す必要があると言えます。

人材の採用が今よりも難しくなかった時代は、人が足りなくなったときには募集をかければ人材を補充することができました。しかし昨今は、そう簡単に人材を採用できる時代ではなくなっています。それゆえに、求人広告を掲載して新たに人材を採用する一方で、例えばヘルプの有効活用のように、いま雇用している人材リソースを最大限活用する方法を考える必要性がでてきています。

そこで今回は、パーソル キャリア株式会社のビジネスプロデューサーである藤澤専之介さんに、人手不足を解消する1つの手段である人材活用のポイントについて、お話を伺いました。

 

調査結果から見えてくるアルバイトスタッフの本音とは?

──今、店長さんをはじめとする多くの管理者の方が人手不足に悩んでいますが、この問題を解決するためのカギはどこにあるのでしょうか?

人手が足りないのであれば、新たに募集をかければよい、というのが従来の考え方でした。しかし、実際のところ、新規に採用するのはなかなか難しいというのが現状です。そうした中で、近年着目されているテーマが「既存スタッフの稼働最大化」です。このテーマにスポットが当たるようになった背景を裏付けるものとして、ある調査結果がでています。

 

図1:シフトの理想と現実

 アルバイトスタッフに「シフトの理想と現実(図1)」について調査してみると、1週間あたりの理想の勤務時間が24.8時間であるのに対し、実際にシフトに入っている時間は14.7時間と、約10時間ものギャップが発生しています。この結果から実はアルバイトスタッフはもっとシフトに入りたいと考えていることがわかります。それではなぜ? シフトの勤務時間について、ここまで理想と現実に差があるのかと疑問がでてくるかと思います。

 

図2:働きたい時間とギャップの要因

 その理由を「働きたい時間とギャップの要因(図2)」から見てみると、「先の都合がわからないので控えめにシフトを組んでいる」という回答が54.2%と半数以上を占めていました。シフトを組むスパンは月1回、あるいは半月に1回という店舗が多いと思いますが、先の都合が読みづらい学生にとっては、そのサイクルが大きなネックになっているわけです。

 

図3:学生のスキマの発生

 一方で、普段からもともと入っていた予定が急になくなる学生も調査結果を見ると約半数にあたる59%もいることがわかります(図3:学生のスキマの発生)。つまり、その時間は学生たちにとって“スキマ時間”が発生してしまうことになります。

 

図4: スキマの時間をバイトで活用

 学生たちに“スキマ時間”の活用をバイトで対応したいか? と聞いてみると約84%とほとんどの学生が思うと回答(図4: スキマの時間をバイトで活用)。実は、急に発生してしまった“スキマ時間”にバイトに入りたいという学生の本音が確認できます。

 

学生たちのスキマ時間は、どうすれば埋められるのか?

──ここまでの調査結果からどういったことが見えてきて、人手不足を解消するために有効な方法はあるのでしょうか?

店舗側としては「人が足りない」状況なのにも関わらず、今回の調査結果では、アルバイトスタッフ側からは「シフトに入れない」という矛盾が生じている状況が把握できます。つまり、各店舗には潜在的に働ける人材がいる可能性が高いという結論が見えてきます。

どう人手不足を解消していくのかについては先ほどもお伝えしました「既存スタッフの稼働最大化」が必要になってきますが、これには2つの方法が考えられます。1つは、今いるスタッフの稼働率を上げる方法です。シフト希望が少なく少数人数のスタッフで乗り切ると決めた日でも、直前にもう一度、自店舗のスタッフに確認することで、急に予定が空いたスタッフが入ってくれる可能性があります。

自店舗のスタッフだけでは解消できない場合には、2つめの方法として他店舗のスタッフに来てもらう、いわゆる「ヘルプ」という方法がありますね。一つのエリアに何店舗も展開しているような業態の場合、自店舗ではシフトに入れるスタッフがいなくても、他店舗だったらシフトに入れるスタッフがいる可能性があります。

自店舗スタッフの稼働率を上げることはもちろんですが、それだけでは人手不足を解消できない場合には、系列の他店舗スタッフと連携して全体の稼働率を上げる「ヘルプ」制度を有効活用することがカギになるのではないでしょうか。

実は難しい、ヘルプ制度の運用

──これまでにも、ヘルプ制度を取り入れた経験のある店舗も少なくないとは思いますが、なかなかうまく定着しないというケースも多いようです。

ヘルプがうまくいかない原因はいくつか考えられるのですが、そのうちの1つは、連絡調整にかかる工数の多さです。ヘルプを依頼するには、自店舗のスタッフや他店舗の店長、本社など、複数の関係者と連絡をとって調整する必要があるため、思っている以上に多大な工数が発生してしまいます。

もう1つは、アルバイトスタッフへのフォロー対応です。企業内でしっかりと体制が整っていないと、ヘルプに行った先でスタッフが不快な思いをしたり、ストレスを感じたりする場合もあります。そうしたマイナス要素はスタッフにとっては大きな負担となり、「もうヘルプには行きたくない」という感情につながりかねません。

こうした事態を避け、ヘルプを有効活用するためには、いかにアルバイトスタッフの目線で考えることができるかが非常に重要です。そのうえで大切なのが、次の3つのポイントです。

1. 業務を標準化できている
2. インセンティブ設計をしっかりする
3. 情報の連携が密にとれる仕組みをつくる

──それぞれのポイントについて、具体的に解説していただけますか?

 

<後篇に続く>

 

まとめ

前篇の今回は、人手不足解消のための既存スタッフの稼働について教えていただきました。

アルバイトから提出されたシフトが少なすぎて真っ青、という状況でも、実はスタッフは余力を残していたり、急に予定が無くなったりして、実はシフトに入れたのに入れなかった、というミスマッチが起きている可能性があります。

諦めて少ない人数でお店を回したり営業時間を短くする前に、直前でもう一度自店舗のスタッフに予定を聞いてみたり、系列店がある場合はヘルプを頼んだりしてみると、思いのほかシフトが充実する可能性もあります。

特に多店舗展開企業はヘルプの有効活用が重要になってきますが、ヘルプ制度もそう簡単に運用できるものではありません。次回は、そんなヘルプを有効活用するための3つのポイントについて、引き続き藤澤さんにお話を伺います。

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