『an』の営業が考える「超・バイト採用難時代」に今すぐすべき対策
- お役立ちインタビュー
今年6月の有効求人倍率は1.51倍を記録し、バブル期を超える水準にまで到達しており大きく話題になっています。
各企業は「何か対策を講じなければならない」として時給アップや外国人積極活用などに踏み切っているものの、十分な人員を集めるには至っていないケースも多くみられます。仕事を探す求職者にとってアルバイト先の選択肢が増えていくなかで、他社と差別化し、求職者に選んでもらえる企業になるにはどうすれば良いのでしょうか。
そこで今回は『an』の営業として採用の最前線に携わる、関西営業部 エキスパートの畑中正さんと同営業部 ゼネラルマネジャーの川人真次さんに登場いただき、「採用成功に向けて現場・経営陣それぞれが今すぐすべきこと」というテーマで語っていただきました。
畑中正さん(写真左)、川人真次さん(写真右)
目次
- 採用現場で起きている課題とは
- 重要ポイントその1:「応募者の取りこぼし」をゼロに近づける
- まとめ
採用現場で起きている課題とは
時給アップや外国人活用だけではもう人が採れない!
畑中正さん/20年以上求人広告に携わる採用のプロ
――アルバイトの採用難と言われて久しいですが、多くの現場・経営陣が抱える悩みとは具体的にどんなものなのでしょうか?
川人:現場の人事部や店舗は上から「コストを抑えて効率良く、一定数以上のアルバイトを必ず採用しろ!」と言われ困っていますし、経営陣はサービスの維持・向上のために、良い人材が採用できるなら多少コストはかかっても良いと感じる反面、「これ以上採用コストや人件費をアップすると減益になってしまう。事業の拡大を一度ストップする、あるいは計画を下方修正する必要があるかもしれない…」とやはり困り果てています。
畑中:2016年度の人材業界の市場規模は前年比110%ほどと言われています。つまり、それだけ皆さんが採用に悩み、関連予算を増額しているということです。
加えて①採用対象を広げる、②就業条件(勤務日数・時間・シフトの組み方など)を柔軟にする、③時給を上げる、といった取組みも多くの企業で行われているのではないでしょうか。ですが多くの企業が行っている分、差別化しきれず、その拡大には限界があるのも実情です。
――そうしたなかで、採用担当者が着手すべきこととは何でしょうか?
畑中:短期的には「貴重な応募者と確実に連絡を取ること」、中長期的には「求職者の価値観に対し訴求すること」の2つが重要ではないか考えています。
どちらにも共通で言えるのは、「求職者を尊重する企業姿勢」が非常に重要ということです。
重要ポイントその1:「応募者の取りこぼし」をゼロに近づける
――それではまず「貴重な応募者と確実に連絡を取ること」について、詳しく説明してもらえますでしょうか
畑中:まず、応募があった場合、出来る限り面接に繋げる工夫です。有効求人倍率が上昇し、採用競争が一層激しくなる中で、1件の応募は大変貴重です。特に意識せず、今まで通りの連絡の仕方や対応で、採用できなかったら「仕方がない」「縁が無かった」という企業様もあるかもしれませんが、1件の応募の取りこぼしに課題認識し、意識的に取り組みを行わない限り、採用に至るまでの歩留まりは改善しません。有効求人倍率が上昇し続けている中、今後ますます面接に至るまでの“取りこぼし”をゼロに近づける取り組みが、一連の採用活動の取組の中で重要になります。
当社のグループ企業ではコールセンター業務も行っているため、採用担当者の代わりに応募者対応を行う提案をしたことがあります。私が担当したケースですと、ある1件の応募に対して、連絡がつくまで丁寧に連絡しようということで、応募のあった当日に3回、翌日に2回、3日後に1回、4日後に1回と計7回の電話をかけました。
その際、以下のような細かい改善策も実施しました。
不明な電話番号からの連絡に不審がられない工夫
→ 電話をして繋がらなかった場合は「応募の御礼」と「再度掛け直す」旨もメールする
繋がる確率を上げ、集中的に連絡する
→ 連絡した時間の履歴を残し、繋がりやすい時間の傾向を把握する(例えば、10時、12時、15時、16時の時間帯繋がりやすい、など)
その結果、それまで応募に対して約50%しか求職者と連絡がつかなかったところ、代行の受託後はそれを80~90%にまで高めることができました。例えば月間100件の応募であれば、30~40名の面接増加ですから、劇的な改善です。
当初は「そんなに何度も連絡して嫌がられないか?」といった懸念もありましたが、応募者の方も「たまたま授業中で電話に出られず、折り返せずにそのままで…」や「知らない電話番号だったけど、何度か連絡が合ったので安心した」などの意見もあり、その心配は杞憂に終わりました。
企業姿勢として応募いただいた方には丁寧に対応する。繋がらない場合もメール等でサポートする、そういった一つ一つの姿勢が求職者の印象に繋がり、結果として面接が増える、という事例だと思います。
価値観や働き方が多様化してきている今、必ずしも条件だけが求職者にとって魅力に映るのではなく、従業員を大切にしてくれる会社か、多様な働き方や考え方を受容してくれそうか、といった点も重要視されてきているのかもしれません。
そういった中で、応募者対応1つとっても、企業姿勢が問われる世の中に変わってきている気がします。
畑中正さん(写真左)、川人真次さん(写真右)
――2つめの重要ポイントに挙げて頂きました、「求職者の価値観に対し訴求すること」についてもうかがえますか?
川人:「働くことに対しての価値観」と言っても、正社員層と、アルバイト層では大きく異なります。高校生・大学生などは「仕事の経験がない/少ない」こと、主婦は「時間等の勤務条件に制約がある」ことなどから、正社員層と比較すると働く理由や価値観が多様です。
また、当社『LINEバイト』でユーザーアンケート(2016年4月実施、有効回答数3,672名)を取ってみたところ、約67%の人がアルバイト探しに苦労しており、中には「具体的にやりたい事が分からない」方も多くいらっしゃいました。
このような、時代背景や事実を正しく前向きにとらえ、個々人の価値観を受容することが、様々な取り組みの出発地点になります。
LINEバイトのユーザーアンケート結果
畑中:求人サイトの利便性が向上し、細かな条件で検索できるようになる一方で、前段の様に、「具体的にやりたい事がわからない」という人も明確に存在するわけです。そうした方に対してこれまでの採用活動は言わば“待ち”の対応しかできませんでしたが、これからの時代は、有効求人倍率の上昇も踏まえると、企業側から積極的に求職者とコミュニケーションを取ることが重要です。
川人:例えば、ネットショッピングでも、「あなたにはコレ」「それを買ったらコレも」と、自分に対してレコメンドされることで、気持ちが動くことはありますよね。
採用活動でも「あなた向けのメッセージ」として、「〇〇な点を魅力に感じておりますので、ぜひうちで働いてみませんか?」と理由とセットでアプローチした方が求職者の印象や気持ちが動くため、応募に結びつきます。
やりたい事が明確ではない求職者にとって「企業側から誘いが来る」ことは、応募や働く動機に繋がっていくのではないでしょうか?
川人真次さん
――「多様な価値観」という話がありましたが、「それに対して訴求する」というのは具体的にどんな施策を行えば良いのでしょうか?
川人:「1人1人がどのように働きたいか」という多様なニーズを捉え、その中で決めたターゲットに対して「当社ならそのニーズを叶えられますよ」という選択肢を積極的にアピールすることが非常に重要です。
例えば、
- 「配達物を運んでいるうちに、自然と身体がダンサーみたいになります!」(痩せたい、細マッチョになりたい、という方に訴求)
- 「隙間時間にいつでも自由に働けます!」(主婦の方や、働ける時間が明確でない方に訴求)
といった表現が重要ということです。
“アルバイトを通じて何が得られるか”ということをストレートに示した方が求職者の心に響きやすくなっていると言えるでしょう。
――ここまでは現場でできる話をうかがってきましたが、経営陣はこれからどんなことを意識していくべきでしょうか?
畑中:経営陣の方には働きがいの部分にアプローチして頂きたいですね。価値観は多様化してきておりますが、アルバイトをされている方にインタビューすると、お客様や社会に貢献する事をモチベーションにされている方はたくさんいらっしゃいます。そういった意味では、各企業が事業を通じて提供したい価値と、現場でのアルバイト業務の内容をいかに接続してあげるかがより重要になってきます。
お客様へのサービス提供を通じてどんな風に喜んでもらえるのか、自身の業務が企業理念・ミッションの達成に対してどんな風に役立てるのかということを、働いている方にも伝えるべきですし、求人サイトなどできちんと訴求すると良いと思います。
また、そのようなアプローチを通じて「働いてみたい」と感じてくれた人に対して、多様な価値観にフィットした働き方の選択肢を提供できるかどうかも、採用数に大きく影響してくるでしょう。
――それは「採用対象を広げる」、「就業条件を柔軟にする」とは異なるということでしょうか?
畑中:今のアルバイト募集に対してだけでなく、今後増加が予想されるニーズに対しても先取りして選択肢を提供する必要があるということです。
例えば
- 正社員の副業解禁→スキマ時間での労働スタイルのPR
- 子育てと両立→在宅ワーク制度のPR
- 外国人の積極活用→マニュアル整備のPR
- AI/機械化の発展による業務効率化→身体の負担軽減。シニアの働きやすさPR
などが挙げられます。
それをPR・表現するには、今後より多様な雇用形態、勤務時間、業務内容の整備が求められるようになっていきます。ここも経営陣の方に是非取り組んで頂きたい点ですね。
川人:また、こうした雇用形態の多様化は、採用数・採用率のアップだけではなく定着率のアップにも繋がります。いくら採用数がアップしても、定着率が低ければ人事の現場は疲弊するばかりです。そうした意味でも、アルバイトスタッフが誇りを持って気持ちよく働ける環境づくりは今後より重要になってくるでしょう。
――ありがとうございました
まとめ
『an』の営業インタビューの前編・後編を通して、アルバイト採用を成功させるための
- 「応募者の取りこぼし」をゼロに近づける
- 企業がアルバイト候補を直接スカウトする
- 「多様な価値観」にフィットした表現をする
という、3つの手法を語っていただきました。
そこには、アルバイト求職者を尊重し、「貴重な応募者と確実に連絡を取る」、多様な価値観を受け入れ、その一人一人の「求職者の価値観に対し訴求する」という姿勢そのものが、採用での差別化を果たし、「この職場なら自分のニーズを満たしてくれる、自分にとってプラスになる」と求職者が感じるということではないでしょうか?
本稿がご覧いただいた各企業の皆様の採用成功に繋がれば幸いです。
取材・文:神保勇揮(INCLUSIVE株式会社)
営業担当紹介
畑中正さん
大手の派遣会社と、物流関連企業の2社を担当。どちらのお客様とも20年以上担当している。主な業務としては「an」や「DODA」といった自社求人媒体活用の提案・出稿と、採用業務の改善提案。他にも、採用管理システムの提案や運用フォロー、採用代行業務の提案、といったものがあり、担当企業様の課題に応じ、様々な業務に取り組んでいる。
川人真次さん
主に採用数の多い全国規模の顧客を担当する部署の営業責任者。現場の店舗・人事部から経営陣に対して様々なソリューション提案を行っている。
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