まだその採用手法で大丈夫?ドトールコーヒー人事部長が「HR Techの活用」「エリア採用」など新しい戦略を次々に打ち出す秘訣を探る【いま、あの人に聞きたい!】<ドトールコーヒー様/前編>

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アルバイトの約8割が学生という株式会社ドトールコーヒーにおいても、人手不足の波は例外なく押し寄せています。同社は現在、ドトールコーヒーショップを中心に直営店334店舗、加盟店985店舗の合計1,319店舗を全国に展開(2019年12月実績)。今回はアルバイト領域にフォーカスし、同社における現在の採用状況や今後の取り組みについて人事部長の平本氏にインタビューしました。

<プロフィール>
株式会社ドトールコーヒー 人事部長 平本 智也
大学卒業後、大手人材派遣会社に入社し営業として8年間勤務。
2009年にドトールコーヒーに入社し現職。

変化する優先順位、多様化する価値観

──アルバイトにおける最近の採用状況や傾向を教えてください。

地方はもちろん、都心においても人材不足を実感しています。その背景には、学生一人あたりのアルバイト時間が短くなっていることがあげられます。一昔前は1日8時間・週5日働くというのもめずらしくはありませんでしたが、現在は1日3~4時間・週3日を希望する学生が多くなりました。加えて、大学の授業やインターン、就活のために長期休暇を取るケースも増えており、優先順位の変化や価値観の多様化を感じています。その一方で、家庭の経済状況などにより自ら学費や生活費を捻出しなければならない学生もいますので、 “そこそこ”と“ガツガツ”の両極端になっているのではないでしょうか。ただ、“ガツガツ”稼ぎたい学生はあまりカフェ業態を選びません。当社はどちらかと言えばそこそこの収入を希望するアルバイトスタッフが多く、シフトを埋めるのに苦戦している店舗が増えています。もちろん、なかにはアルバイトが充足している店舗もありますが。

人が集まる秘訣は店長の人間力

──人材確保に成功している店舗に共通する点はありますか。

一口に言って「店長の人間力」。これに尽きます。上手くアルバイトやパートをまとめ上げる力があり、お客様に支持されるお店づくりを行える店長の元には自然と人材が集まってきます。そもそも、そういう店舗はアルバイトが辞めないんですよね。スタッフが大学を卒業する時に、自分の穴埋めとして後輩を紹介してくれることもあるそうです。

成功例の一つに、慢性的に人材不足だった店舗を半年で人員を充足させた店長がいます。それも、店舗の場所は東京で特にアルバイトが集まらないと言われる千代田区。その店長が就任するまでは応募が少ないのはもちろん、やっと採用できたと思ってもすぐに辞めてしまうような状態でした。そこでまず、スタッフたちに自分がお客としてこの店に来たいかどうかを聞いたそうです。頻出する「他の店を選ぶ」という回答に、なぜそう思うのか、来たいと思うようになるためにはどうすればいいかをとことん話し合ったそうです。そこから、環境や接客の改善とともにアルバイトスタッフの意識も変化。働くスタッフの士気の高さがお客様や面接に訪れた応募者にいい印象を与え、「人材」の面でも「集客」の面でも人が集まるようになったんです。

また、新人アルバイトには「とりあえず洗い場に配置する」という店舗が多い中で、同店は新人教育に時間をとっていることも注目すべき点です。出勤初日にまずは会社やお店の方針を伝えることからスタートし、一つひとつのオペレーションをマンツーマンでゆっくり教えていくとのこと。こうした、アルバイトに当事者意識を持たせる工夫や、実際にスタッフを大切にする姿勢が結果につながったと思っています。

ブランド全体で目指す採用成功

──ドトールの主な採用手法を教えてください。

採用は各店舗で行うことが基本です。今いるスタッフから紹介してもらう「友だち採用」が理想ですが、現在はまだ有料求人媒体を使って応募を獲得している状況です。以前から有料求人媒体の利用数が年々増えていることに危機感を覚えていましたが、この採用難では有料求人媒体に頼らざるを得ないところもあり、ジレンマを感じていました。それに、はじめから「ドトールで働きたい」と考えている方にとっては有料求人媒体よりも自社採用サイトの方が求人を発見しやすいはず。そこで、2015年に導入したのがアルバイト採用管理・支援システム「HITO-Manager(以後ヒトマネ)」です。

「ヒトマネ」で自社の採用サイトを設けたところ、期待通り元々ドトールに興味を持っていただいていた方からは直接応募してくださるようになったと実感しています。加えて、ヒトマネでは応募から採用に至るまでのプロセスが全て可視化されるため、どこに問題があって採用に至っていないのかなど、改善すべき課題をキャッチアップしやすくなりました。そのため、非常に良いサイクルを回せるようになってきています。有料求人媒体もこれに倣い、エリアごとの実績や、求職者に響く文章・キーワードを分析し、コストのみで選ぶのではなくエリアにとって効果的な有料求人媒体を選べるよう整備を進めているところです。

──2019年が普及元年と言われるHRテックですが、ドトールではかなり早い段階から取り入れていたのですね。「ヒトマネ」以外にも導入しているテクノロジーはありますか?

実は、特別早いとは思っていません。これからの採用活動にテクノロジーの力は不可欠だと言えるでしょう。「ヒトマネ」以外では、スマホで簡単に発注を行える求人広告発注システム「x:eee(以後エクシー)」を2018年より導入しています。有料求人媒体は数種類の求人サイトを使用していますが、これまでは必要に応じてその都度それぞれの媒体に発注しておりました。しかし、「アルバイトは欲しいけど求人広告を発注する時間がない」というケースが多く、どうしても採用活動が後回しになっていたんです。ところが、「エクシー」を導入してからは、求人広告の準備にかかる時間が激減。3日以上かかっていたのが3分程度にまで短縮されました。まだテスト段階ということもあり、現在は一部の店舗しか導入していませんが、使っている加盟店オーナー様や店長からは総じて高評価をいただいています。

加速する人材不足のなかで採用成功していくためには、こうしたテクノロジーを各店舗に浸透させることに加えて、店舗ごとに個別で採用を行うのではなくブランド全体で採用活動を行うことが重要であると捉えています。そこで、今後ドトールでは地域環境に合わせて「エリア採用」を取り入れたいと考えています。

──「エリア採用」とはどういった採用手法ですか。

ドトールは同じ駅に複数の店舗を展開していますので、直営店・加盟店を問わず店舗(オーナー)単位ではなく一定エリアの店舗が合同でアルバイトを募集・採用しようという方法です。たとえば、応募者の希望条件が「月曜日と火曜日の夕方勤務」とし、A店舗は充足しているけどB店舗は欠員がある場合、B店舗に配置するというわけです。応募者の方には働きたい曜日と時間帯を優先していただく代わりに、勤務先の店舗はこちらに任せてくださいというやり方。これが実用化できれば、「月曜日はA店で火曜日はB店」という働き方も可能になります。

鍵になるのが、応募者に「どの店舗でもいい」と思ってもらえるような明るく働きやすい職場環境づくりです。エリア採用は、まずはこれら店舗側の条件面が整ってはじめて実現できること。まだまだ課題は山積みですし、賛同してくれる加盟店がどれほど存在するかも未知数ではありますが、本部としてはエリア採用が実施可能な地域では強くしていきたいと考えています。

──なるほど。応募者にとっても店舗にとってもメリットがありますね。

ただ、現状では雇用主が異なるため他の店舗で働くことはできません。派遣方式であれば可能になりますが、ブランドが同じだからこそ、求めるスキルレベルが高くなることが予想されますので、派遣元の創意工夫が必要になるでしょう。そのため、スタッフが複数のアルバイトを掛け持ちするという形が現実的だと思います。たとえば社内ポータルサイトなどでスタッフが足りない店舗とシフトに入りたいスタッフが情報をやり取りできるような環境を作っていきたいと考えています。

まとめ

アルバイトスタッフを充足させる秘訣は店長の「人間力」。そして、直営店・加盟店が一緒になって採用活動を行う「エリア採用」が今後の人材不足に立ち向かう鍵であると伺いました。インタビュー<後編>では、2020年4月から施行される「同一労働同一賃金」はピンチか、それともチャンスか。さらに、いま注目を集めるHRテックの可能性について伺います。

 

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