「クルー開発プログラム」 – 日本マクドナルド

  • 企業採用成功事例

掲載企業DATA:日本マクドナルド株式会社

日本マクドナルド株式会社

本社所在地  東京都新宿区西新宿6-5-1新宿アイランドタワー
代表取締役社長  原田泳幸(永幸)
設立年月日  1971年5月1日創業2002年7月1日設立
資本金  日本マクドナルド株式会社日本マクドナルドホールディングス 1億円(2010年3月)241億円(2010年3月)
事業内容  ハンバーガーレストランチェーンの経営並びにそれに付帯する事業

01 なぜ、マクドナルドでは人が育つのか?

外食業界の代名詞であり、その躍進を絶えずトップランナーとして牽引し続けている日本マクドナルド。その強さの秘密を探っていくと、ひとつの疑問が浮かぶ。

「なぜ、マクドナルドは人が育つのか?」

店舗で顧客と接するのは、クルーと呼ばれるアルバイトやパート従業員がほとんどだ。しかも、彼らの多くは短時間勤務で、学生や未経験者が多数を占める。にもかかわらず、多岐に渡る業務を高いレベルでこなし、質の高い接客を行うクルーを短期間で育て上げる。その卓越した「人材育成」とは、いかなるものなのだろうか…。

ページトップへ

02 ブランドプロミスを支え続けるCDPの役割

日本マクドナルドの人材育成システムのひとつに、クルー開発プログラム(CDP=Crew Development Program)がある。ひとことで言えば、マクドナルドにおける仕事の知識とスキルをトレーニングするクルー向けのツール、ということになる。

そこにはすべてのメニューの作り方はもちろん、清掃やサービス業務全般が集約されている。それはまた同時に、企業理念「QSC&V」への理解を浸透させるものでもある。世界共通の高い品質(Quality)、顧客に心地よい空間を提供するホスピタリティーサービス(Service)、清潔さの維持(Cleanliness)、そしてそれらが最高の形で結びついたときに生まれる価値(Value)。この意識の徹底こそが、CDPの根底にある。

マクドナルドは誰もが認める世界的ブランドだ。そのブランドを掲げている以上、世界中のどの店舗も常にベストな商品をベストな状態で提供することを、ブランドプロミスとして顧客に約束していることになる。それゆえ、CDPという、詳細かつ効率的な店舗オペレーションに関する「マニュアル」は不可欠なのである。

ページトップへ

03 必ず誰かがあなたの仕事を見ている

「必ず誰かが見ている状態こそ重要」と語る飯澤さん「必ず誰かが見ている状態こそ重要」と語る飯澤さん

しかし、同社人事本部ピープル・ディベロップメント部部長の飯澤祥久さんが口にしたのは意外な言葉だった。

「マニュアルはマニュアルでしかないのです。」

たとえば注文から60秒で顧客にハンバーガーを提供できる、といったことだけをCDPは目指しているわけではない。マクドナルドの強さはマニュアルにあるのではなく、それを活かす仕組みにこそあるという。

「確かに、正しいプロシジャー(Procedure=一連の動きをひとつにまとめた手順)を身につけることも目的のひとつです。しかし、もっと重要なのは、人を育てるということです。その際、大事なのは誰かが必ずその仕事を見ているという環境作りです。新人クルーを常にトレーナーが見て、トレーナーをリーダーが見る。そしてそのリーダーを店長が見る…といったように、必ず誰かに見てもらっていることが重要なのです。加えて、適切なフィードバックを行うことも重要です。例えば、あるクルーが、以前より作業が早くなったとします。すると、教える側のトレーナーたちは、それを必ず評価します。誉めたり、課題を一緒に解決していくと同時に、もっとレベルアップするためのアドバイスを必ず行う。誉められたり、新たな目標ができることで、クルーはモチベーションが上がり、働く動機づけができる。例えば、1時間で前回よりもプラス数組のお客様と応対するとか、ドレス(調理)でさらに見栄え良く仕上げる、といったように。すると、そこにまた達成の喜びを感じることができます。」

そういった「誰かが見ている」環境を支えているのが、店長からクルーまでが持つ、周囲へのフォローアップを常に心掛ける姿勢であり、つまりは店舗内のチームワークである。毎日の挨拶であったり、相手への配慮、他人への関心。そういった日ごろのコミュニケーションから醸成される人材育成の土台こそが、マクドナルドの強みなのである。

ページトップへ

04 変化に気付くか?店長の資質は人への興味

【変化に気付くか?」従業員に興味がなければ気付きません「変化に気付くか?」従業員に興味がなければ気付きません

人材育成を円滑にする店舗内のコミュニケーション。しかし、すべての店舗で、十分に、かつ正しく意思疎通を図ることは、決して簡単ではない。そのとき重要となるのが、店長の存在である。クルーや店長出身である飯澤さんにとって、最後の店長経験は新宿歌舞伎町店。日本初の24時間営業の店舗だった。

「ピーク時には200人のクルーが働いていました。全員の顔と名前を覚えることすら至難の業です(笑)。しかも1日8時間、週5日しか店舗にいないとなれば、1人で全体を把握するのは不可能。だからと言って、クルーの1人か2人を見落としてしまったばかりに、その人たちが辞めてしまうということがあってはなりません。したがって、店舗の各レンジの人を活用しながら、絶えず全体にフォローが行き届くよう、管理・調整していくことが必要になってきます。」

では、そんな店長に求められる資質とは一体何なのだろうか。

「人間に興味があるか、ということに尽きると思います。クルーが多くて一人ではフォローしきれないとしても、たとえば、店舗に入ったときクルー全体に元気がないと感じたり、あるいは一人ポツンとしている子がいることに気付いたり。そういった変化にいかに気付くかどうかは店長にとって重要な資質でしょう。人に興味がなければ、その変化にも気付かない。変化にすぐ気付き、担当のトレーナーに尋ねるなど、すぐに行動をする。そういった積み重ねによる従業員の成長を自分の成長のように喜べてこそ、真の店長ではないでしょうか。」

ページトップへ

05 マニュアルはツール、重要なのはそれを使う人の育成

マクドナルドにとって欠かすことのできない人材を育成するCDPは、実に完成されたマニュアルであり、さらに日々アップデートを重ね、進化している。そして、それは企業理念である「QSC&V」をクルーが理解し、日々の業務の中で具現化するツールでもある。

しかし、それが人材育成のすべてではない。大事なのは、それを使いこなす人材を育てるということだ。

「マニュアルは万能ではありません。いろいろなお客様に対応する、すべてのQ&Aが記されているわけではないのです。例えば想定外の場面に遭遇したらどうするか。回答はひとつ。自分の責任の範囲内で、誠意を持ってお客様に対応する。それだけです。我々はそういったQSC&Vが体現でき、成長できる人材を育てています。我々はピープルビジネスなのです。」

ページトップへ

おすすめの記事