店長スキルアップ塾 おろそかにはできない「店舗内のコミュニケーション」について

  • コミュニケーション・人間関係

 

日比谷 勉/ Tsutomu Hibiya
日本マクドナルド株式会社にて、採用部門の責任者として、さまざまな新しい採用戦略を実施し、計100万人のアルバイト・パート採用を推進。2018年4月、株式会社パーソル総合研究所入社。”現場”のアルバイト・パート領域に特化した調査・研究・コンサルティングを行う「フィールドHRラボ」を設立。ラボの責任者であるとともに、エバンジェリストを務める。

メニューが変わったり、サービス内容の変更があるのは、どんな店舗でも少なからず経験していることでしょう。ただ、スタッフがその情報を知らなかった場合、新サービスを期待して来店されたお客様を結果として裏切ることになってしまいます。そうしたことがないように、社内における通知・通達がなされるわけですが、忙しい店舗内では「聞いていない」「そんな文書、読んでいない」ということが起こります。そこで今回は、大事な店舗内のコミュニケーションをどう徹底していくのかについて、株式会社パーソル総合研究所のフィールドHRラボ責任者/エバンジェリストの日比谷勉さんに、店長の心得も含めて伺いました。

店舗内のコミュニケーション(インターナルコミュニケーション)が弱い店舗が多い?!

……インターナルコミュニケーションという言葉は馴染みのない方もいると思いますので、まずはどういうものか教えていただけますか。

インターナルコミュニケーションとは、店舗内のニュースやミーティングを通じての店舗内コミュニケーションのことです。
キャンペーンをよく行う店舗・会社などでは、今日から何をやるのかを周知徹底しておかなければなりません。例えば、新メニューがいつから始まって、それに付随したオペレーションはどのように行うのか。また、決め事や新しいキャンペーンなどのほか、テナントさんに言われたことや、店舗内での申し送りなど、共有しておかなければならない情報は大小関わらずたくさんあります。

こういったことは、どこの店舗・会社でも、すぐに全スタッフに伝わる仕組みを持っていると思われるでしょうが、実は意外とそうでもないのが実情です。外部に対する広報の意識はあっても、内部へのコミュニケーションに力を入れるという意識がまだまだ薄いようです。

こうした当たり前の情報をきちんと伝えることをしないと、まずお客様に迷惑をかけてしまうことになります。例えばお客様が忘れ物をしてレジで預かっているとして、それが周知されていないと、受け取りに来たお客様が怒りますよね。こうしたことは、単にチームワークが良いだけでは防げない。明確なルールを社内あるいは店舗で整備するべきなのです。

小さなことでも、「またか」ということが積もり積もっていくと、店長に対する不信につながり、スタッフが離れていく原因にもなります。「店長が言ってくれなかったからですよね」ということになると、決められたことをやらなかったスタッフよりも、決められたことを伝えなかった店長に責任があることになりますから。

ちょっとした工夫で伝達ミスは防げるもの。面倒くさがらずに実践を

……会社からの通達を伝えるのも、結局のところ店舗になると思います。ミスなく効率的に伝えるには、どうしたらいいでしょうか。

「一番伝えたいことはここに貼ってあります」「新しいキャンペーンの話はここに書いてあります」「お客様の忘れ物はレジの引き出しに付箋が貼ってあります」「育成については誰に質問してください」など、スタッフと情報共有をするためのルールをまず作っておきたいですね。その上で、店内の誰もが見る場所にちゃんと書いて掲示しておくことです。これは口頭だけではなく、文書で明示しておくことが必要です。

よくあるのが、ポスターやインフォメーションといった紙ですけど、ただ貼っておくだけでは、スタッフが読んだかどうかわかりません。ある会社では、タイムカードの横に連絡帳があって、読んだらハンコを押すというルールにしているそうです。これならば、誰が読んで誰が読んでいないのかを確認することができますよね。

店舗によっては、スタッフが閲覧できるサイトなどを作って開示しているところもあるようです。店舗スタッフ同士でチャットができる、スタッフのみなさんが書き込めるノートを休憩室に置いておくなど、いろいろな方法があるかと思いますが、ともあれ、スタッフが確実に見るであろう方法を面倒くさがらずに行うことが大事ですね。ちょっとしたことだからこそ「面倒だ」と思いがちですが、後々トラブルになってからでは遅いのです。

……いまは誰もがスマホを持っている時代。職場の連絡事項を伝えるツールとして、SNSを活用するという手もあると思いますが、いかがでしょうか。

正直言って、私はあまりSNSをお勧めしませんね。もちろん、外部に向けたコミュニケーションツールとして使うのはいいと思いますが、インターナルコミュニケーション向けのツールではないと思います。というのも、SNSはあらゆるところにオープンになっていますから、店舗内部の連絡事項をそこで行うと、思わぬ情報漏洩につながる恐れがあるからです。仮に、SNS上で業務について込み入ったことを書き込むにしても、理屈よりも先に「危ない」という感情が先に立つと思います。その意味でも、あまり現実的な方法とは思えません。

従って、業務連絡は個人のものではなく、できれば社内専用のもの用意して行うのが望ましいでしょう。

店長の「言動」こそが社内広報

……情報共有というところから話を広げて、店舗内での実際のコミュニケーションについても伺います。店長がスタッフに対して行うコミュニケーションとして気をつけるポイントをお聞かせください。

コミュニケーションについて、テクニカルに考えるのではなく、もっと根っこの部分を見つめ直すべきだと思います。気にするべきなのは、信頼されているかどうか、信用されるに値する行動を普段からしているか、です。

何も特別なことではなく、ごく常識的なことができているかどうかで、人間の評価はガラリと変わります。常日頃から嘘をつかないとか、命令ではなく依頼をする、約束を守る、やってほしいことをやる……などの当たり前のことを当たり前にできるようにならなければいけない。スタッフをあだ名で呼んでいないか、言葉遣いは節度あるものか、あらためて確認するべきです。

店長の言動は、みんな見ていますからね。信頼できない店長だと思われてしまうと、スタッフから情報が上がってこなくなり、裸の王様になってしまうこともあります。また、「ウチの店長はダメだ」というレッテルを貼られると、それがそのまま辞める動機になってしまうだけに怖いですよ。

ちなみに、私が店長職だったときは、「お客様は3人いる」と考えるようにしていました。1人目はもちろん、お店に来てくれるお客様。そして、自分の下で働くスタッフの皆さんも「お客様」です。これが2人目。最後の3人目というのは、店舗に出入りする業者の方たちですね。その方々もお客様だと考えていました。店長は立場上、この3者には気を配らなければいけないし、「自分はこう思う」ということもきちんと伝えなければいけない。常に周りの目を気にして、人間を磨き続ける努力をしないと、なかなか人には信用されません。

 

特別に尊敬される必要はないですが、軽んじられているようではまずい。しかし実際に、スタッフの名前すらも覚えないで、反感を持たれている店長もいます。やはり、誰もが多かれ少なかれ承認欲求がありますから、店長から名前も憶えられていないというのではモチベーションも下がります。少なくとも、何歳なのか、大学生なのか、お子さんは何人か……など、それぞれのパーソナリティを知らないと信頼関係を作れないですよね。

店長が裸の王様では、店舗内での情報共有以前の問題。「ウチの本社は、いつも突然言い出すんだよな!」と文句を言いつつ、実は自分もスタッフに対して突然何かを指令して戸惑わせていたりするのでは話になりません。店長の言動そのものが一番の社内広報なのだ……そう意識して欲しいと思っています。

まとめ

インターナルコミュニケーションとは、社内報や社員公聴会などを通じての社内コミュニケーションのことです。外部に向けの広報活動に比べて、インターナルコミュニケーションが弱い会社が散見されますが、社内での伝達事項がうまくいかないとお客様に迷惑がかかり、ひいては会社全体の損失につながりかねません。ですから、店舗内で情報を共有するべく様々な工夫をし、皆が同じベクトルで仕事をするようにしなければなりません。同時に、店長は自身を顧みて、自らの言動がスタッフの信頼に足るかどうかを見つめ直す必要があるでしょう。

■日比谷さんのアルバイト・パート採用に関するコラム一覧はこちら
https://rc.persol-group.co.jp/column-report/tsutomu-hibiya.html

 

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[出典記載例] 出典:求人情報サービス アルバイトレポートより(該当記事URL)

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