アルバイト・パートを「続ける理由」「辞める理由」【2016年版】

  • 市場動向

人手不足の昨今、手間とコストをかけて採用した貴重な人材が離職してしまうのは大きな痛手です。そこで今回は、仕事を「辞めた理由」と「続ける理由」についてアンケートを実施。就業者を「高校生」「大学生」「フリーター」「主婦」「シニア(60歳~)」と分け、アルバイト継続・離職理由のトップ10を見ていきます。是非、このアンケートからアルバイトスタッフの離職を回避するヒントを探ってみてください。

調査概要

【調査地域】全国(インターネットリサーチ)
【調査対象】過去1年以内にアルバイト・パート就業経験があり、今後1年以内にも就業意向がある人
【調査期間】2016年3月31日~4月15日
【有効回答数】5,407サンプル

アルバイト層全体の「続ける理由」「辞めた理由」

<アルバイト継続・離職理由TOP10(全体)/【複数回答】>

※2013年調査と比較して順位が3つ以上上昇したものを赤字で示す

最初にアルバイト層全体の傾向から見ていきましょう。まずアルバイトを「続ける理由」においては、2013年の調査で1位だった「勤務地が自宅(学校)から近い」ことが、2016年でも(どの属性においても)1位という結果となりました。アルバイトを「探す時」に最も重視されるポイントも「勤務地が自宅(学校)から近い」ということが分かっており、アルバイト先に通いやすいかどうかは求職者にとって非常に重要なポイントになっています。

2013年の調査と比較して大きな変化があったのは、「1日に働く時間が短い」こと。前回の8位から4位にランクアップしています。特に主婦・シニアにおいて高い割合となりました。また、「交通費」が支給されることが「続ける理由」(12位→7位)として、支給されないことが「辞めた理由」(13位→7位)として順位を伸ばしています。2013年の調査ではフリーターが交通費支給を重視する傾向が見られましたが、今回の調査では全ての属性で重視されている傾向が見られました。

一方「辞めた理由」の1位は「長い期間働ける仕事ではない」こと。前回の2位から1ランクアップしており、アルバイトを長く続けたい人が増加している表れだと見られます。また、「楽ではない仕事」が前回の3位から2位に、「給与が低い」が、前回5位から3位にランクアップしています。「楽ではない」にもかかわらず「給与が低い」と感じ離職するケースも多いのかもしれません。

それでは次章から、就業者の属性ごとにアルバイト継続・離職原因を詳しく見ていくことにしましょう。

高校生の「続ける理由」「辞めた理由」

<アルバイト継続・離職理由TOP10(高校生)/【複数回答】>

※属性の特徴が表れている項目を赤字で示す

高校生のアルバイトを「続ける理由」における特徴的な項目として、5位の「店長や社員の人の雰囲気がよい」こと、7位の「友人・知人が一緒に働いている」ことが挙げられます。アルバイトレポートにおける「やってみたいアルバイト調査」において、若年層のアルバイト選びには「楽しそう」「好き」という心理が大きく働いていることが分かっており、雰囲気の良い職場で楽しく働けるかどうかは重要なポイントと言えます。「友人・知人が一緒に働いている」ことは高校生のみにランクインした項目ですが、友達と一緒に働くことでさらに「楽しい」または「安心できる」というメリットを感じているのではないでしょうか。

高校生の「辞めた理由」を見てみると、5位の「自分にはできない仕事」が最も特徴的だと言えます。社会経験が少なく、初めてアルバイトを経験する人が多い高校生にとって、仕事は初めて経験することの連続です。過去のアルバイトレポートの「初めてのアルバイトにおける調査」では、初めてのアルバイトで「いきなりたくさんのことを覚えさせられる」(35.5%)「仕事を詳しく教えてもらえなくて何をして良いかわからない」(29.0%)といった点に戸惑った人が多いことが分かっています。高校生の長期雇用のためには、仕事を覚えるまでしっかりと見守り、フォローしていくことがポイントだと言えるでしょう。

大学生の「続ける理由」「辞めた理由」

<アルバイト継続・離職理由TOP10(大学生)/【複数回答】>

※属性の特徴が表れている項目を赤字で示す

大学生の「続ける理由」における特徴的な項目は、2013年時調査と同様「給与が高い」ことで、割合を見ると前回の26.2%から32.6%に上昇しています。大学生は全属性の中で最も「交通費支給」を選んだ人が多く、待遇の良さが継続理由となる傾向が強まっていると言えます。

「辞めた理由」として、2013年時調査と比較して最も変化が大きいのが「交通費が支給されない」ことで、20位から9位へランクアップ。次いで、「勤務地が自宅(学校)から遠い」が7位から2位、「1日に働く時間が長い」が9位から6位へランクアップしています。

総務省統計局の「社会生活基本調査」によると、若者は近年、学業や趣味・娯楽にかける時間が増加して「忙しくなっている」ことが分かっています。アルバイトの時間の取れにくくなった大学生にとって、「時間効率がよい」アルバイト先のニーズが高くなっているようです。

雇用側はこういった条件の改善を計ることが打ち手にはなりますが、それだけ行えばよいということではありません。仕事ぶりをしっかり見て評価・承認し、「働き続けたい」というモチベーションを高めることはもちろん、給与以外の付加価値を感じさせることも重要です。例えばアルバイトを通じて「しっかりとした研修を受けられる」「就活に役立つ」といった価値や「社内割引がある・まかないが出る」というメリットを提供できれば大学生の長期雇用に役立つと考えられます。

フリーターの「続ける理由」「辞めた理由」

<アルバイト継続・離職理由TOP10(フリーター)/【複数回答】>

※属性の特徴が表れている項目を赤字で示す

2013年時調査と比較して、フリーターがアルバイトを「続ける理由」として変化が大きいのが「1日に働く時間が短い」こと(25位→6位)。これは単に1つのアルバイトが短時間というよりも、ダブルワークとして選べるアルバイトとして短時間勤務にも人気が集まっていると考えられます(参考「短時間・掛け持ちバイトに関する調査」)。また、「給与が高い」「交通費が支給される」といった給与にかかわる点も順位が上昇しています。

反対に「仕事内容に興味が持てる」(2位→9位)「店長や社員の人の雰囲気がよい」(3位→10位)はアルバイトを続ける理由として順位が下がっています。「仕事への興味」でアルバイトを選ぶタイプのフリーターが相対的に減少し、特段理由がなくフリーターをしているタイプや、やむを得ずフリーターをしているタイプが多くなっているために、生活の軸となる給与を重視する傾向が出てきているのかもしれません(参考「フリーターの類型調査」)。

一方「辞めた理由」で変化が大きいのは「ほかにもっとよい条件の仕事がある」(10位→5位)で、全属性の中でとりわけ高い割合となっています。近年、一層人手不足が叫ばれ、1人あたりの求人数も増えたことにより、採用側から「重宝される」フリーターが、より好条件のアルバイトに流動しやすくなったものと見られます。

全体としては「生活費を稼ぐ」という目的が強まってきている傾向があると言えますが、現在の雇用形態に満足していない割合が最も高いのがフリーターです(フリーター全体の41.0%)。長期雇用のためには、正社員などへの転換を前向きに検討していく必要があると考えられます。

主婦の「続ける理由」「辞めた理由」

<アルバイト継続・離職理由TOP10(主婦)/【複数回答】>

※属性の特徴が表れている項目を赤字で示す

多くの働く主婦にとって「家事・育児と仕事の両立」は重要なテーマです。主婦がアルバイトを「続ける理由」として、「勤務地が自宅から近い」こと「時間(休日)の融通がきく」ことが1位、2位かつ、高い割合を占めていることは特徴をよく表していると言えます。

3位にランクインした「自分でもできる仕事」について、過去のアルバイトレポートの「主婦の類型調査」によると、仕事のブランクを感じている主婦などがこの点を特に重視していることが分かっています。「続ける理由」の上位3位は2013年時調査と同じ結果なっていることから、主婦において定番のポイントであると言えそうです。

※なお「続ける理由」として2013年時調査結果と最も変化が大きい「交通費が支給される」(13位→7位)では、子供を持たない主婦の割合が高く、家から徒歩などで通っていないケースの人が選んでいると見られます。

「辞めた理由」を見ると「店長や社員の人の雰囲気がよくない」が1位(同率)。子供を持たない40~50代の人の割合が特に高くなっています。アルバイトで生活費稼ぐという目的が比較的低く、かわりに仕事のやりがいや生活のメリハリを求める志向性が強い属性であるため、雰囲気が悪い職場では理想とのずれが大きくなり離職原因となるのでしょう。

主婦は子供の有無や本人年齢によって、志向性が異なります。こちらの記事と合わせてご覧ください。

シニアの「続ける理由」「辞めた理由」


<アルバイト継続・離職理由TOP10(シニア)/【複数回答】>

※属性の特徴が表れている項目を赤字で示す

体力的に無理のない範囲でコツコツ長く仕事をしたい人が多いシニアでは、生活のメリハリや社会との接点を求めてアルバイトをする人が多いことが分かっています。その意味で「自分でもできる仕事」「1日に働く時間が短い」「長い期間働ける仕事」という点が「続ける理由」として上位に挙げられているのがシニアの特徴を表していると言えます。

「辞めた理由」として「長い期間働ける仕事ではない」「楽ではない仕事」が1位、2位にランクインしているのは、体力的な問題で辞めた人が多いと解釈して良いでしょう。過去の「シニアの働きやすい職場調査」では、アルバイト先で体力面にケアしてほしい点として「健康状態の把握」(55%)や「休憩時間・休憩スペースの確保」(26%)などが挙がっています。シニア層を雇用する際は、一人一人の体力面、体調面を常に気にかけておき、仕事がきつくないかマメに声掛けすることがポイントになるでしょう。また、職場の寒さ、暑さは体力面の負荷が大きいことが分かっています。シニア層の労働環境を整備する上では、空調も大事なポイントです。

まとめ

  • 【全体】 2013年調査に続き、「務地が自宅(学校)から近いこと」が継続理由。変化が大きかったのは「1日に働く時間が短い」「交通費支給」。離職原因の1位は「長い期間働ける仕事ではない」ことで、アルバイトを長く続けたい人が増加している表れだと見られる。
  • 【高校生】 初めてアルバイトを経験する人が多い高校生にとって、楽しく働ける雰囲気づくりや仕事を覚えるまでしっかりと見守り、フォローしていくことがポイント。
  • 【大学生】 待遇の良さが継続理由となる傾向が強まっている。給与以外の付加価値を感じさせることも重要。
  • 【フリーター】 生活費を稼ぐ目的が強まってきている傾向。正社員などへの転換を前向きに検討したい。
  • 【主婦】 全体として家事・育児と仕事の両立を重視。
    (子供の有無や年代によって志向性が異なるため、個別に特徴を理解しておきたい)
  • 【シニア】 体力的に無理のない範囲でコツコツ長く仕事をしたい人が多い。「健康状態の把握」や「休憩時間・休憩スペースの確保」などを心掛けたい。

 

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