職種別:辞める理由・継続して働く理由

  • 業界別求職者動向

一度は選んだ仕事を辞める時、そこにはどのような思いがあるのだろうか。
理想と現実のギャップを感じたか、生活環境の変化があったのか、今回はそのような離職理由を職種ごとに紹介する。また継続の理由もあわせて掲載し、安定した労働力確保のヒントとしたい。

調査概要

■調査方法:インターネットアンケート
■調査対象:北海道・首都圏・東海・関西・九州在住15~34歳男女
現在、「高校生、短大・専門学校生、大学生、大学院生、アルバイト・パート、派遣社員、契約社員、無職の人」且つ「過去1年以内にアルバイト・パート、派遣社員、契約社員の仕事に就いたことがある人」
■調査期間: 2008年3月
■サンプル数:北海道938s・首都圏2888s・東海1879s・関西1904s・九州925s 合計8534s
集計データについて:上記5エリア内においては、人口構成比にあわせるため平成19年度労働力調査のデータによりウエイト補正をおこなった。
そして、これら5エリアを合算した。

1 職種別  継続して働く理由と辞めた理由  TOP5

今月のトレンドデータでは、非正規雇用に従事している人たちが、どのような理由でその仕事をずっと続けているのか、あるいは反対に辞めてしまうのかという理由を、職種別に探っていきたい。まずは、職種別に、それぞれの継続理由・辞めた理由の上位5項目を一覧にしてみた(表1-1・1-2)。詳細は次章以降にまとめてあるのだが、まずは全体の違いを見てみよう。継続理由(表1-1)の1位として、圧倒的に多くランクインしたのは、やはり「イエチカ」。しかしそんななかで、〔医療・福祉〕〔講師・インストラクター〕〔営業〕では、「やりがいのある仕事だから」がトップに躍り出ている。また〔クリエイティブ〕でも、「仕事内容に興味が持てるから」がトップ。これらの職種では、2位以降においても仕事内容に関することや給与に関することが、多くあがっている。一方で、「イエチカ」がトップの〔オフィスワーク〕〔フード〕〔販売〕〔軽作業・ラインスタッフ〕〔配送・物流〕では、仕事内容もさることながら、シフトや勤務時間数・人間関係に関することが目立つ。継続して長く働く理由は、その仕事内容によって違いがありそうだ。

表1-1. その仕事を現在も続けている理由

では、反対にその仕事を辞めた理由は何だろう。表1-2にtop5をまとめてみた。〔オフィスワーク〕〔医療・福祉〕〔フード〕〔販売〕では、「店長・社員の雰囲気が悪いから」と人間関係にかかわることが1位。一方、〔クリエイティブ〕〔講師・インストラクター〕では「給与が低い」がトップ。そして〔軽作業・ラインスタッフ〕では「楽でない・疲れる仕事だから」、〔配送・物流〕では「長い期間働ける仕事ではないから」がそれぞれ1位。仕事内容によって、その仕事を辞める理由もさまざまだ。必ずしも、先にみた“継続して働く理由”の裏返しにはなっていない点も興味深い。それでは、次章からは、もう少しこれらの理由を詳しくみていくことにする。

表1-2. その仕事を辞めた理由

 

2 〔オフィスワーク〕継続して働く理由と辞めた理由

では、早速〔オフィスワーク〕から見ていこう。表2-2が「オフィスワークを続けている理由」(現在オフィスワークに従事している人に聞いた結果)であり、表2-3が「オフィスワークを辞めた理由」(もっとも最近に辞めた仕事がオフィスワークの人に聞いた結果)である。参考までに、表2-1に「現在オフィスワークに従事している人(続けている人)の属性分布」も掲載している。これをみると、オフィスワークを継続する理由トップは「勤務地が自宅から近いから」。以下、「自分でもできる仕事だから」「時間の融通がきくから」と続く。また、2割近くで6位に「楽な・疲れない仕事だから」がランクインしているのも、オフィスワークの特徴と言える。一方、辞めた理由トップは「店長や社員の人の雰囲気が悪いから」そして「仕事内容に興味が持てないから」。また3位に「やりがいのある仕事ではないから」も入っている。人間関係だけでなく、その仕事への興味・やりがいを感じられるかどうかが、辞める・辞めないの基準になっているようだ。

表2-1. その仕事を続けている層の属性分布

表2-2. その仕事を続けている理由top15

表2-3. その仕事を辞めた理由top15

 

3 〔クリエイティブ〕継続して働く理由と辞めた理由

それでは次に〔クリエイティブ〕を見ていこう。クリエイティブの仕事を続ける理由(表3-2)トップはずばり「仕事内容に興味が持てるから」。そして2位には「やりがいのある仕事だから」、4位には「資格・技術が身につく仕事だから」がランクインしていることから、やはりその仕事内容が非常に重要なポイントになっていることが分かる。 一方、クリエイティブを辞めた理由は、トップが「給与」、そして「店長や社員の人の雰囲気が悪いから」「長い期間働ける仕事でないから」と続く。 その仕事内容の特殊性から、自分の興味・やりがいを満たせたり、スキルが習得できることが魅力となっているクリエイティブ。ただ、給与や人間関係への不満は、辞めることにもつながる要素になっているようだ。

表3-1. その仕事を続けている層の属性分布

表3-2. その仕事を続けている理由top15

表3-3. その仕事を辞めた理由top15

4 〔フード〕継続して働く理由と辞めた理由

続いて〔フード〕をみてみよう。フードの仕事に継続して従事している層は、圧倒的に「大学・大学院生」が多いようだが(表4-1)、そんな彼らが続けている理由トップは、やはり「勤務地が自宅から近いから」。つづいて「店長や社員の人の雰囲気がよいから」「時間の融通がきくから」が僅差で追う。仕事を続ける理由として人間関係がこれほど上位にあがってくるのは、この〔フード〕職と、次にみる〔販売〕だけだ。 この人間関係に関することはまた、辞める理由トップにもなっている。どれほど重要なポイントであるかが分かる結果だ。しかも、辞める理由としては他の項目に大きく差をつけている。ちなみに、2位以降は「楽でない・疲れる仕事だから」「給与が低いから」と続く。 “大学生のバイト”のいわば代表格である〔フード〕において、職場の仲間との距離や雰囲気は、その仕事を続ける/辞めるを左右するキーとなっているのだろう。

表4-1. その仕事を続けている層の属性分布

表4-2. その仕事を続けている理由top15

表4-3. その仕事を辞めた理由top15

 

5 〔販売〕 継続して働く理由と辞めた理由

〔販売〕も、先に見た〔フード〕と非常によく似ている。継続層の属性は、〔フード〕に比べて「大学・大学院生」が若干少なく、代わりに「フリーター女性」「フリーター男性」が多いという特徴があるものの、その仕事を継続している理由トップはやはり「イエチカ」、そして「店長や社員の人の雰囲気」、「時間の融通」、「自分にもできる仕事だから」と続く。 そして辞める理由も、〔フード〕同様に「店長や社員の人の雰囲気が悪いから」が突出してトップ。続いて「給与が低い」「楽でない・疲れる仕事だから」と続く。

表5-1. その仕事を続けている層の属性分布

表5-2. その仕事を続けている理由top15

表5-3. その仕事を辞めた理由top15

 

6 〔講師・インストラクター〕 継続して働く理由と辞めた理由

さて次は〔講師・インストラクター〕を見てみよう。継続層の6割が「大学・大学院生」で占められている。継続の理由トップは「やりがいのある仕事だから」。そして「給与が高いから」「仕事内容に興味が持てるから」。4位にやっと「イエチカ」、5位に「時間の融通」が入ってくる。 一方辞める理由は、トップが「給与が低いから」、2位が「もっとよい条件の仕事が見つかったから」、3位が「時間の融通がきかないから」。 〔講師・インストラクター〕という仕事では、続ける場合にも辞める場合にも「給与」が非常に重要なポイントであることが推測される。やりがいや興味を感じられることも、その仕事を続ける上では大きなモチベーションにつながる一方で、ほかにもっと高い給与・より良い条件の仕事が見つかれば、辞めてしまう可能性も高いといえるだろう。

表6-1. その仕事を続けている層の属性分布

表6-2. その仕事を続けている理由top15

表6-3. その仕事を辞めた理由top15

 

7 〔営業〕 継続して働く理由と辞めた理由

続いて〔営業職〕。この職種の継続層は、学生が極端に少なく、代わりにフリーター男女が6割以上を占めている。続ける理由としては、「やりがいのある仕事だから」「仕事内容に興味が持てるから」。一方辞める理由としては「1日に働く時間が長いから」「店長や社員の人の雰囲気が悪いから」、「仕事内容に興味が持てない・失ったから」。 おそらく、正社員に近い形態で働くことの多い〔営業職〕。やりがいや興味が持てれば、その仕事を続ける可能性も高まるのだろう。 ただ一方で、勤務時間数の長さや、職場の人間関係・雰囲気が、離職を招く要因にもなっているようだ。

表7-1. その仕事を続けている層の属性分布

表7-2. その仕事を続けている理由top15

表7-3. その仕事を辞めた理由top15

 

8.〔軽作業・ラインスタッフ〕 継続して働く理由と辞めた理由

次は〔軽作業・ラインスタッフ〕。継続層は「フリーター男性」が目立つ。継続理由のトップはやはり「イエチカ」、そして「自分でもできる仕事だから」と続く。また5位には「ほかにもっとよい条件の仕事がないから」が入っている点も、この〔軽作業・ラインスタッフ〕の特徴。 一方、辞めた理由のトップは、これまた納得のいく「楽でない・疲れる仕事だから」。思った以上に重労働だった・・ということなのだろうか。2位以降は「給与が低い」「長い期間働ける仕事でない」「仕事内容に興味が持てない・失った」と続く。

表8-1. その仕事を続けている層の属性分布

表8-2. その仕事を続けている理由top15

表8-3. その仕事を辞めた理由top15

 

9.〔配送・物流〕 継続して働く理由と辞めた理由

次に〔配送・物流〕を見てみよう。こちらも、先に見た〔軽作業・ラインスタッフ〕同様に「フリーター男性」が多く4割以上にのぼっている。そんな〔配送・物流〕従事者が、いまも継続して働いている理由は、これまたやはり〔軽作業・ラインスタッフ〕とよく似ているのだが、トップが「イエチカ」、ついで「自分でもできる仕事だから」「時間の融通がきくから」。 一方で辞めた理由トップは「長い期間働ける仕事でないから」。続いて、「給与が低いから」「楽でない・疲れる仕事だから」。 イエチカは、その仕事を続けていくうえで非常に重要な要素であり、おそらく、多少いやなこと・不満な点があっても、自宅から近ければ我慢して続けられるということもあるのだろう。だが、長い期間働けなかったり給与が低かったり、肉体的にきつすぎる仕事内容だと、辞めてしまう可能性が高くなってしまう。

表9-1. その仕事を続けている層の属性分布

表9-2. その仕事を続けている理由top15

表9-3. その仕事を辞めた理由top15

 

10 〔医療・福祉〕 継続して働く理由と辞めた理由

最後に、〔医療・福祉〕も見てみよう。 現在も続けている理由のトップは、「やりがいのある仕事だから」「勤務地が自宅から近いから」。この2項目が、ほかの項目に大きく差をつけている。主婦が多いこともあって「イエチカ」は大事なポイントなのだろうが、同時に「やりがい」や、3位の「興味が持てる」も重要な要素のようだ。 一方、この仕事を辞めた理由は、トップが「店長や社員の人の雰囲気が悪いから」で、突出している。 勤務地が自宅から近く、また仕事にやりがいや興味が持てるのであれば続けていくが、職場の雰囲気が悪いと辞めてしまうケースが多いのであろう。

表10-1. その仕事を続けている層の属性分布

表10-2. その仕事を続けている理由top15

表10-3. その仕事を辞めた理由top15

 

今月のまとめ

仕事を続けている理由の上位は「家から近い」か、「やりがいを感じる」か。

ほとんどの職種で、通いやすさや仕事のやりがいが上位に。しかし、継続の理由第1位が同じ職種でも、2位以降の項目にはバラつきが見られる。医療・福祉の仕事を継続している理由の第1位は「やりがいのある仕事だから」で2位は「勤務地が自宅に近いから」。一方で営業は、第1位の理由こそ「やりがいのある仕事だから」で医療・福祉と同じだが、第2位は「仕事内容に興味がもてるから」となっている。離職防止を考える際は1位の項目だけではなく、1から5位の項目を広く押さえることが必要となるかもしれない。

仕事を辞める理由は続けている理由と連動しているとは限らない。 

辞める理由では、多くの職種で人間関係の問題や、仕事が楽ではないから、そして給与が低いからなどがランクインしてくる。これらは必ずしも続ける理由とは連動してはいない。”給与が低かったから辞める”という回答が多い職種であっても、”給与が高いから続けている”という回答が多いわけではない。不満を感じるポイントと、継続の意思を固めさせるポイントは表裏一体ではないようだ。

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