「労務管理」ここがポイント! – ブレインコンサルティングオフィス代表 社会保険労務士 北村庄吾

  • 専門家インタビュー(法律編)

長時間労働や残業代不払いなど、増加する労務トラブル。未然に防ぐには、人事担当者として労務コンプライアンス上、最低限の知識を押さえておく必要があります。さらに労務管理の仕方を工夫すればコスト効率を高められるほか、メンバーのモチベーションアップを促すこともできるのです。そこで今回は、知っているようでまだまだ知らない人が多い、労務コンプライアンスの基本と労務管理のポイントについて、社会保険労務士の北村庄吾氏にお話しいただきました。

~明示が義務化されている労働条件は文書で渡す~

労務トラブルは、時間的にも金銭的にも損失が大きいだけに、できるだけ避けたいところです。トラブルを回避するには、どうすればよいのでしょうか。

もちろん労務コンプライアンス対策も大事なのですが、まずはパート・アルバイトを取り巻く関連諸制度を把握しておくことが先決です。

労働基準法では、パート・アルバイトも正社員同様、採用時に労働条件を明示する義務があり、「労働契約期間」「就業場所や業務内容」「労働時間」「賃金」「退職」の5項目を文書で渡すことが義務付けられています。さらに、平成20年4月より改正パートタイム労働法が施行されたことにより、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」も文書で明示することが義務付けられ、規制が強化されました。事前に給与などの項目を盛り込んだ「労働条件通知書」兼「雇用契約書」を用意しておき、就業時に必ず渡すようにすれば、それが労働条件に関するトラブルを回避することにもつながります。

アルバイトレポートでは、「雇用契約書」のテンプレートを公開していますので、こちらも参考にしてください(「雇用契約書」テンプレート)。

 

~パート・アルバイト用の就業規則を作成する~

労務コンプライアンス対策としては、飲食関連、多店舗企業を中心にパート・アルバイト用の就業規則を整備するところが増えています。

例えば、身だしなみ。一昔前は「常識の範囲で」と言えば、共通認識が得られたものですが、今はその基準が多様で非常にあいまいです。明文化しておかないとトラブルのもとになります。特にもめるケースで多いのが髪の色です。そのため、ヘアカラーの色指定を明記している企業もあります。

顧客情報の取り扱いも重要な項目です。パート・アルバイトにも高い意識を持ってもらうため、就業規則として文章化するだけでなく、研修を実施しているところもあるほどです。パート・アルバイトの多い大手量販店では、就業規則をハンドブックにして全員に配布するケースも増えています。

~パート・アルバイトにも評価制度を整備し、戦力化する~

評価制度については、正社員対象には用意している企業が多いのに対して、パート・アルバイトには、あまり考えられていないケースが多いようです。人は評価されてこそ意欲が高まるもの。そのため、パート・アルバイトの評価制度も作ることが重要です。評価制度でモチベーションをアップさせ、定着させることは、新規採用の面接や教育研修に費やす時間やコストの削減にもつながります。

パート・アルバイトの評価制度のポイントは、どんなふうに時給がアップしていくかを明確にすること。ある作業ができるようになれば時給が50円上がる、勤続年数によってこんな具合に上がっていく、ということが、働く側のモチベーションになります。これまで、パート・アルバイトの時給が上がる評価制度を設けている会社がほとんどなかったので、単純に時給の比較で、待遇のよいアルバイト先へと求職者が移っていく流れがありました。しかし、「ここで頑張れば時給も上がっていくんだ」と分かれば、当面の仕事を頑張ってくれるだけでなく、人材としても成長してくれるはず。さらに、アルバイト・パートからも戦略的に人材育成を目指す企業であれば、正社員への登用チャンスも明確にしておくとよいでしょう。このように、パート・アルバイトに定着してもらえるシステムを作ることもまた、上手な労務管理方法といえます。

コラム

パートタイム助成金 ~うまく活用して良い人材の確保を~

パートタイム労働法の改正に併せて、厚生労働省では「パートタイム助成金」制度を作りました。職務に応じた評価制度の導入、正社員への転換制度の導入、その他、教育研修、健康診断の導入のための助成金です。

なかでも力を入れているのが、パート・アルバイトの評価制度と正社員への登用です。こうした制度をうまく活用して、パート・アルバイトのモチベーションを高め、より働きやすい環境への改善、良い人材の安定確保に努めたいものです。

「パートタイマー均衡待遇推進助成金」について(財団法人21世紀職業財団のページへ)

ブレインコンサルティングオフィス代表 社会保険労務士 北村庄吾

北村 庄吾 / Shogo Kitamura

株式会社ブレインコンサルティングオフィスの代表取締役。社会保険労務士、行政書士。中央大学法学部卒。平成5年度より、受験予備校で社労士試験向け専任講師として活躍。平成13年9月よりクレアールアカデミー(東京・水道橋)を中心に活躍中。いまや常識となった「本試験当日解答速報」「過去問題のデータベース化」「分野別答案演習」など、斬新なアイデアで社労士受験界を変えてきた。
他方、弁護士、会計士等300人以上の有資格者が参加するネットワーク型総合事務所BraiNを主宰。平成18年、プロフェッショナル社会保険労務士ネットワーク(PSR)を立ち上げ、全国規模の事業を展開。

ブレインコンサルティングオフィス HP
http://www.e-brain.ne.jp/

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