日本の人材不足はウソ?ドトールコーヒー人事部長がテクノロジーの進化、そして法律の真価について切り込む【いま、あの人に聞きたい!】<ドトールコーヒー様/後編>

  • お役立ちインタビュー

 

人材不足が深刻化するわが国において、人材の確保は企業に課せられた重要な課題。大手派遣会社での豊富な経験を持つ株式会社ドトールコーヒー人事部長の平本氏は、この状況をどう捉えているのか。インタビューの前編では、アルバイトが充足している店舗・していない店舗の違いや、エリア採用について言及。後編では、2020年4月から施行される「同一労働同一賃金」について、そしていま注目を集めるHRテックの可能性などを語っていただきました。

株式会社ドトールコーヒー 人事部長 平本 智也
大学卒業後、大手人材派遣会社に入社し営業として8年間勤務。
2009年にドトールコーヒーに入社し現職。

「同一労働同一賃金」はピンチかチャンスか

──働き方改革の一環として2020年4月から「同一労働同一賃金」が施行されますが、この法律についてどうお考えですか。

私は「同一労働同一賃金」をチャンスと考えています。正社員と非正規社員の間で収入や待遇の格差がなくなるという面を注視しがちですが、言い換えれば雇用形態に関係なく実力を正当に評価するようになるということです。どの業界でも、優秀なアルバイトやパートに社員と同等の役割を与えておきながら、時給はそのままか上げてもせいぜい20円か30円程度というのはよくある話でした。でもこれからは、「できること」と「できないこと」によって給与を区別できるので、業界を問わず優秀な人材を定着させることにつながると考えています。アルバイトもこれまでの経験や能力に応じてスタートの給与を高くしたっていいわけです。こうした考え方は以前からありましたが、「同一労働同一賃金」の施行により改革を進めるきっかけになりました。

──アルバイトも正当な評価を受けられるようになるということは、アルバイトに対しても仕事への責任がより求められることになりそうですね。

そうですね。責任をもって仕事に接し、周りのスタッフにもそう思われるような働き方をしてくれるようになると評価も上がります。「同一労働同一賃金」によってアルバイト一人ひとりの能力がより明確になり、能力に見合った賃金が支払われることになるのでは、と思っています。そのためにも、店長や人事担当者はこれまで以上にアルバイト・パート一人ひとりに対して能力や頑張りをしっかり把握していく必要があると言えます。

「人材不足」は雇用機会の拡大でもある

──先の見通しが立たない人材不足の現状。今後、日本の労働市場はどうなっていくのでしょうか。

確かに日本は「人材不足」に直面していますが、「働きたいけど働けない人」はまだまだたくさんいると思っています。「人材不足」は、別の視点から見れば「色々な人が働けるようになった」とも言える。雇用する側としてはマイナス面ばかりに目が行きがちですが、以前は活躍の場に制限のあったシニアや外国人も働ける環境が日本にはあるのだと考えると、そう暗いばかりの未来ではありません。

──ドトールコーヒーでも、多様な人材の雇用を促進していく方針ですか。

もちろんです。これまではアルバイトの7割以上が学生でしたが、今後はドトールコーヒーとしてはダイバーシティを推進していきたいと考えています。ただ、課題もあります。主婦(夫)層については時間や場所の制約があり、住宅街では余剰で都市部では不足している状況です。また、外国人労働者については近年雇用率が上がってはいるものの、まだ全体の7%に留まっています。今後は、こうした人材を募集するだけではなく、スタッフみんなが快適に働ける環境の整備を同時に進めていく方針です。

──ダイバーシティ促進のためには、企業による環境の整備が必要とのことですが、社会全体としての課題や改善策はありますか。

「103万円の壁」と言われる扶養控除の見直しです。国はダイバーシティ促進を掲げながらも、数十年も前につくられた当時の金額を未だに採用していることに疑問を感じています。

なぜ扶養控除が問題なのか。私たちサービス業の間では「12月の壁」と言っているのですが、12月になると扶養内で働きたいスタッフはみんな収入調整のため働かなくなります。そうすると、主に社員がその穴を埋めるために残業や休日出勤をせざるを得なくなるのですが、それを今度は「働き方改革」に反しているとされるわけです。学生から主婦(夫)、シニアまで多様な人材を活用しようという現代においては、働きたいと思っている人を応援するような制度こそ必要だと思いますね。

HRテックは採用の未来を変えられるか

──アルバイト採用管理・支援システム「HITO-Manager(以後ヒトマネ)」と、求人広告発注システム「x:eee(以後エクシー)」を活用してみた感想を聞かせてください。

前編でも触れましたが、「ヒトマネ」は分析ツールとして便利で、採用プロセスにおける課題が一つひとつ浮き彫りとなるため、採用支援の面でとても役立っています。たとえば、「応募は来ているけど面接後に辞退されている。それなら面接を工夫してみよう」といった具合に、問題点を改善することで採用成功につなげられるようになりました。

効果の高い有料求人媒体を各店舗で簡単に発注できるよう導入した「エクシー」については、テスト段階ということもあってまだこれからといったところ。「エクシー」を各店舗に浸透させるための最大の課題は、店長の意識改革ですね。使い慣れている求人媒体を変えたくない、今までの慣れた方法で発注したいという人が少なくないのです。とは言え、発注に3日以上かかっていたものを3分程度で行えるのですから使わない手はありません。本部としてすでに宣言していることですが、今後は全て「エクシー」じゃないと発注できないようルール化しています。

──今後、HRテックに期待することはありますか。

現在、アルバイト領域では募集から採用までのHRサービスが主流ですが、応募から退職に至るまで一括で管理したり支援するサービスがあったらいいですね。採用してからどの店舗で何年働いたのかといった経歴から、スキルやキャリアアップなどの個人評価、そして退職理由までをデータベース化し、それをまた新たな採用に活かす。データベースでHRテクノロジーの可能性はもっともっと広がっていくと思います。

まとめ

「人材不足」は「誰でも働ける社会」への変化の一つの側面であるということ。見方を変えてポジティブに社会全体でダイバーシティを推進することが大事だと語る平本氏。そのなかで「同一労働同一賃金」は運用次第で企業のプラスになる一方、扶養控除制度が人材不足の要因のひとつになっていると危機感を持っていました。今後ますます加速していく人材不足の改善策の一つとして、時代に合わせて法律を変えていくことも喫緊の課題であると強く感じさせられたインタビューとなりました。

 

サービス紹介

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「HITO-Manager(ヒトマネ)」は自社採用HPの作成や世界最大級の求人まとめサイトとの連携、応募数・採用数の向上と採用コストの削減・最適化を支援する他、採用の求人広告の出稿管理から様々な経路から来た応募者の一元管理まで、アルバイト・パートの採用における業務を一貫して行える、採用管理システムです。

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“アルバイト採用の「わからない」を「わかる」に”をコンセプトに、アルバイト採用の煩雑な業務をスマートフォン一台で簡単に行うことができる、業界初のスマートフォンに特化した採用支援ツールです。採用活動における「やることリスト」の通知機能で採用活動をスムーズに進めることができる他、最速1分で求人媒体への発注が可能になります。また、自社採用ページの制作・掲載ができる機能も搭載しているので、採用活動におけるコスト削減に繋がります。

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