行動指針「ACTUS WILL」 – 株式会社アクタス

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掲載企業DATA:株式会社アクタス

株式会社アクタス

本社所在地 東京都新宿区新宿2-19-1 BYGSビル12F
代表取締役社長 休山 昭
設立年月日 1969年8月
資本金 12億6,800万円
事業内容 丁寧な暮らしを提案するインテリアショップ。海外ブランドの輸入家具からオリジナル家具、小物雑貨、カーテン、システムキッチンまで質の高いライフスタイルをプロデュースする。

01 ライススタイルも“アクタスらしく”

「私は『ACTUS WILL』をシステム手帳に入れているんですよ」と柳沢さん

「私は『ACTUS WILL』をシステム手帳に入れているんですよ」と柳沢さん

 全国15カ所に直営インテリアショップを展開するアクタス。同社の従業員はアルバイトも含め、よく「それ、アクタスらしいよね」と言うのだという。これは、単に品揃えに対してだけでなく、接客態度や振る舞い方、さらにはライフスタイルも指す。日常生活にまで“アクタスらしさ”を求めるほど、従業員がアクタスという企業ブランドに誇りを持っているからである。

アクタスはなぜ、社員からアルバイトに至るすべての従業員に、企業ブランドへの高い意識を浸透させることができたのだろうか。
ヒントは、アルバイトを含む全従業員が携帯している「ACTUS WILL」という小冊子にある。この冊子には同社のミッション、理念のほか、「仕事や生活のシーンの中でアクタスの従業員ならば、こうあってほしい」という行動指針が記されている。
「ACTUS WILL」が誕生した背景、具体的な活用方法について、立ち上げに携わった経営企画部人材開発チームの柳沢真澄さんにうかがった。

「これまでも、『アクタスらしいね』とみんなよく、口にはしていました。ただ、“アクタスらしさ”について何となくわかっていても、それを明確に表現できる人はいませんでした。そこで創業40周年を迎えた2年前、アクタスの強みであるその“らしさ”をちゃんと文言化することにしたのです。アルバイトでも新人でもすぐに『“アクタスらしさ”とはこれか』と感じとれるものを作ろうと。それが『ACTUS WILL』です」
「ACTUS WILL」の制作にあたり、アクタスでは各セクションから横断的に人材を集めて、チーム「DNA OF ACTUS」を発足し、調査から開始した。「リアルな体験から出てくる言葉を拾い集めたくて」(柳沢さん)、勤続年数の長い社員はもちろんのこと、定年退職したOBまで訪問し、計30名以上に「アクタスへの思い」をヒアリングした。そして、聞き取りの結果からいくつかのキーワードを抽出して、5つのカテゴリーに整理・分類。その上で全従業員が“アクタスらしさ”を強みとして効果的に発揮できるよう、わかりやすくシンプルな内容にまとめた。

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02 ACTUS WILLを体現すべき5つの対象

「ACTUS WILL」の5つのカテゴリーは、「自分自身」「お客様」「仲間」「家族」「日本(社会)」と対象者別になっており、各カテゴリーに行動指針が4つずつ記されている。

例えば、「自分自身」の項には『公私ともに人生をまるごと楽しもう。自らの人生を豊かにしようとする力がお客様の人生を豊かにする』、「お客様」には『私の情熱がお客様の心を動かす』、「仲間」には『共に働く仲間が私の誇り』、「家族に」には『私の生き方、暮らし方は、家族に継承できる一番の財産』、「日本(社会)」には『木の家具を扱うからこそ自然や環境への気配りを忘れない』などといった文章が並び、対お客様だけでなく、仲間や家族、社会に対しても、どのように考え、どう行動するのがアクタスの従業員らしいのか、を示唆するものになっている。
「日々のルーチンワークの中で、どう頑張っていいのかわからなくなったり、どちらへ進んでいいのか悩んだりすることってありますよね。そんな時の頑張り方のヒントというか、道しるべとして活用してもらいたいという思いも込めています」

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03 行動指針を作りっぱなしにしない仕掛け

「『WILLレポート』には、アルバイトのエピソードが登場することも多い」と語る柳沢さん

「『WILLレポート』には、アルバイトのエピソードが登場することも多い」と語る柳沢さん

 一般に、行動指針は作成する以上に浸透させていくのが難しい。「ACTUS WILL」も、配布前は「生徒手帳みたいで抵抗がある」と冊子携帯に賛同しない従業員もいたという。
そこで、「DNA OF ACTUS」チームは、「ACTUS WILL」浸透のための仕掛けとして、「WILLレポート」を始めた。「ACTUS WILL」に書かれた言葉を実際に体現した従業員がいたら、各店舗のレポート担当者がそのエピソードを専用ポータルサイトに投稿するというものだ。
専用ポータルサイトを通じて本社に寄せられたエピソードのレポートは、全従業員に公開される。従業員はそれを見て共感したレポートに対して、店舗や部門の枠を超え、自由に投票できる。本社側では月1回投票結果を集計し、支持の多かったレポートを公表している。

「『アルバイトのAさんの対応がよくて、お客様に感謝された』『アルバイトのBさんは小物の梱包が上手でお客様からも好評です』『アルバイトのCさんがキッズイベントで子どもたちに絵を描いてくれた。彼女のお陰で盛り上がった。大活躍でした』など、アルバイトもレポートに頻繁に登場します。『WILLレポート』を始めてから、今まで以上に各店舗のスタッフが、社員、アルバイトの立場を超え、互いの良いところを見つけようとするようになりました。レポートを通して互いの活躍を褒め合う機会も増え、それによってチームワークが高まった気がします」 エピソードもより細かく、深くその時の状況を伝える内容になってきており、読み応えのあるものが増えているそうだ。
なお、年に1度、クリスタルアワードという売上トップの社員などを表彰する場がある。その機会に、年間を通して全従業員の共感性が高く、支持率ナンバー1だった「WILLレポート」も表彰している。こうした取り組みにより、すべてのスタッフに、自分もアクタスの一員だと帰属意識を高めさせることで、モチベーションアップを実現しているのだ。

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04 売上向上も店舗従業員のチームパワーから

柳沢さんは「店舗は、最もチームパワーが発揮できる場所」と考えている。共通の目指すべき姿へ向かって従業員が連携することこそが店舗を活性化し、それが結果的に売上を伸ばすことにもつながっていく。
「売場には、売上を伸ばすのが得意な人も必要ですが、同時にアルバイトも社員も関係なくみんなを巻き込んで場を盛り上げるのが上手な人も大切だと考えています。そういう人が、『アルバイトのDさんはカメラが得意だから、商品を撮ってもらおう』など、アルバイトの得意分野も引き出し、店舗の戦力として活躍できる環境づくりを担ってくれるからです」
各店舗が気持ちをひとつにするための共通認識ツールがまさに『ACTUS WILL』。これをさらに活用し、みんなで“アクタスらしさ”を共有しながら仕事を頑張ることができる、そんな仕組みづくりを推進していきたいと考えているそうだ。
実際、「ACTUS WILL」の携帯を始めてから、社員はアルバイトの行動をよく見て、良いところを見つけ出そうとし、アルバイトは逆に「自分たちを見てくれている」と感じ、アルバイトという意識を超え、頑張ろうとするようになった。互いのやる気向上が相乗効果を生み、「直接的ではないけれど、結果的にそれが実績アップにつながっているのは確かです」(柳沢さん)。

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05 アルバイトにも定期研修を実施

柳沢さんの所属する「人材開発チーム」は、昨年12月に発足した新しい部署だ。「人を大事にする企業であることの意思表明」として誕生した同チームは、定期研修の体系化を行い、アルバイトを含む、入社3カ月、6カ月を迎えたすべてのショップスタッフに向けた基礎研修を実施している。
「これらの基礎研修では、座学だけでなく、同時期に入ったスタッフ同士によるディスカッションも行っています。かなり好評で良い刺激の場になっているようです」
また、「ACTUS WILL」を実際にどのように体験したか、売場での接客体験や自身の役割をどう感じているかなど思いを共有するための場として「シェアリングミーティング」も年1回実施している。このミーティングは、20年以上のキャリアを持つ社員も1年未満のアルバイトも、一緒に語り合う場となっている。
「普段なかなか会うことのない他店舗の、しかも年代もキャリアも異なる者同士が話し合うことで接客ポイントが見えてきたり、業務上で何が大切かといった新たな気づきあるようです」
アルバイト研修も、「シェアリングミーティング」も、まだ始めて間もないが、「研修を実施してから、目に見えて生き生きと働くスタッフが増えている」と柳沢さんは言う。
様々な手法や場の提供によって、すべての従業員にアクタスの一員としての自覚と誇りを持たせ、モチベーションアップを図っているアクタス。「ACTUS WILL」に沿って従業員たちが紡ぎ出す“アクタスらしさ”は、同時に顧客が求めるアクタスのイメージとも重なることで、今日の良好な客足につながっているのだろう。

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