【働きがいを高める3つの方法】後編:コミュニケーションに「手間」をかけることが「働きがい」向上の鍵 – Great Place to Work(R) Institute Japan 代表 和田 彰

  • お役立ちインタビュー

 前回は「働きがいのある会社」とは、「従業員が、勤務している会社や経営者・管理者を信頼し、自分が行っている仕事に誇りを持ち、一緒に働いている仲間と連帯感が持てる会社」であることをお伝えしました。
では、実際に働きがいを高めるにはどうすればいいのでしょうか?2010年の「働きがいのある会社」に選ばれた会社の事例をもとにポイントを3つご紹介します。

まず、1点目として、「上司が部下の『働きがい』向上について自分の役割として積極的に関わる」ことがあります。単に「働きがい」向上を人事部門任せにしているのではなく、上司自らが「働きがい」について部下にメッセージを発信したり、実際に行動や施策に展開することです。我々の調査で、上司の意識が高い部門ほど「働きがい」が高いことがわかっています。例えば、人事に言われるまでもなく、部下がいい仕事をしたら「サンクスカード」を直筆で書いて送ったりする課長さんなどいらっしゃいます。また、いきなり施策にしなくとも、まずは部下に「皆さんの働きがいが組織運営には大事だと思う」「そのためにできることを一緒に考えていこう」という宣言をしたり、そういう会議を持ったりすることで、部下に上司の意欲が伝わり、そのこと自体が、「働きがい」を高めます。

2点目は上司と部下とのコミュニケーションです。とりわけ「ネガティブな情報の伝達」はとても重要です。金融系のとある企業では、調査が行われた2009年の中ごろは、業績が芳しくない状態でした。そんな中、その企業のトップは社員一人一人と極力コミュニケーションをとり、会社の現状の伝達、一人一人の意見の吸い上げに尽力されました。よく新人研修などで、「悪い報告こそ重要だ」と教えていると思いますが、それは上司から部下への報告も同じです。悪い時こそ、事業が今置かれている真の状況を、極力部下と共有していくことが、部下からの信頼を得て、「働きがい」を高めるポイントと言えるでしょう。

3点目として、「人間味」ある施策や運営があります。私たちが「働きがい」を評価する観点の1つに人間味、英語で言えば「Human Touch」があります。これは、具体的には、
・単にメールやウェブなどで情報を連絡したりするのではなく、思いやりや配慮、尊敬の念をもって、直接部下と接している。
・メンバーの様々な面を他の人が知っている、そしてそれを知る機会がある。
・様々なメンバーと人間味あるコミュニケーションが取れている。
といったようなことを指しています。先ほど挙げた例もそうですし、他には、社内での運動会を復活させた例、部署をまたいだ人たちとフランクに交流し合える懇親会を実施された企業もあります。

最近、色々なITコミュニケーションツールがありますが、それらに頼りすぎると、ともすると「人間味」が薄くなる場合もあります。Face to Faceのコミュニケーションは、短期的には非効率的ですが、顔と顔を合わせることで「働きがい」が高まり、結果的に業務効率や成果が高くなる、という分析もあります。中長期的には効果的なコミュニケーションになると言えましょう。

今回ご紹介した各施策は、それほどコストがかかることなく、実施できると思います。もちろん「手間」はかかるのですが、それを惜しむことなく、「働きがい」向上に取り組んでいる姿勢を見せることこそが、部下の「働きがい」につながりますので、ぜひ参考になさってください。

【働きがいを高める3つの方法】前編はコチラ

Great Place to Work Institute Japan 代表 和田 彰

和田彰 / Akira Wada
一橋大学社会学部卒業後、マツダ株式会社、京セラ株式会社にて人事部門を担当。その後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)や人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)にて一貫して従業員の視点を重視した人事企画およびコンサルテーションを推進。2004年、韓国において、人事コンサルティング事業および企業内研修事業の立ち上げを行った後、Great Place to Work(r) Institute Japanに参画。2009年GPTWジャパン代表に就任(現任)。

著書
2010年:近著に「日本でいちばん働きがいのある会社」(中経出版)

┃ Great Place To Work(R) Instituteについて
毎年世界40カ国以上で「働きがいのある会社」の調査を行い、一定の基準に達している企業を有力メディアを通じて発表。米国では世界最大の発行部数を誇るFORTUNE誌、日本では日経ビジネス誌で紹介されている。

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