「コーヒーへの情熱がさらなるコーヒーのプロを生む制度-プラックエプロン」 – スターバックス コーヒー ジャパン株式会社

  • お役立ちインタビュー

掲載企業DATA:スターバックス コーヒー ジャパン

事業内容 コーヒーストアの経営/コーヒー及び関連商品の販売
店舗数 833店舗 (12月2日時点)

01 ブラックエプロンとは?

プロダクトマネジメント本部  田原 象二郎氏

スターバックスといえば、緑色のエプロンという印象が強いが、“ブロックエプロン”という、その名の通り黒いエプロンが存在するのをご存知だろうか?

コーヒーに対する深い知識を蓄えたスタッフのみに与えているというブラックエプロンについて、スターバックスコーヒー ジャパン株式会社のコーヒースペシャリストでプロダクトマネジメント本部の田原象二郎さんに概要をうかがってみた。
「すべてのパートナー(スターバックスの従業員の呼称)には、店頭で販売しているコーヒー豆についての知識を学ぶコーヒーマスタープログラムを受けてもらっています。そして、このプログラムを終了したパートナーに対して、さらにコーヒーに詳しくなってもらうために1年に1回試験を開催し、成績優秀者に与えているのがブラックエプロンです」

このブラックエプロンの試験では、コーヒーに対する幅広い知識やコーヒー豆の特徴を伝えるための表現を問う問題が出題されるという。また、社員、アルバイトの雇用形態を問わず、受けたければ誰でも受験することができ、逆に店側から受けるように指示されることもない。
「2001年から始めたのですが、年々、試験を受ける人数が増えていて、昨年の受験者は約8000人。それに対して合格者はわずか450人で、全体をみても現在ブラックエプロンを所持しているのは650人ほどですから、かなりの難関と言えます」

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02 従業員が憧れるブラックエプロン

2008年コーヒーアンバサダー   白沢 ゆり子さん

スターバックスには、“お客様にコーヒーの知識や美味しいいれ方、楽しみ方を伝える”という使命があると考える。これをを達成するために必要な従業員のスキルアップを目指して成立したブラックエプロン制度だが、創生時からスムーズに動き出したわけではない。
「制度が施行された当初は社内での認識も薄く、参加者もわずか。そこで、コーヒーアンバサダーカップという全国大会を開くことで、認知度を上げることにしました。この大会の優勝者は副賞でシアトル研修にも行けたので、本場での研修を目標にするパートナーも増えましたし、それとともにブラックエプロンを敬う土壌もつくられていったと思います」

そして、もうひとつブラックエプロンを目指す従業員を増やすために行っていることがある。
「以前は、ブラックエプロンをもらっても着ける場所や機会がありませんでした。でも、現在は各店舗で有料のコーヒーセミナーを積極的に開催していて、その際、お客様の講師役をするのは必ずブラックエプロンの従業員なんです。このように、活躍の場が増えていることも受験者の増加に役立っているのではないかと思います」

さらに、2008年のコーヒーアンバサダー(全国大会優勝者)である白沢ゆり子さんは本社に異動し、イベントでコーヒーを紹介したり、、アドバイザーとして全国の各店舗を回ったり。そのうえ、ケーキの商品開発プロデュースまでした。
「コーヒーアンバサダーになれば、さらにいろいろな仕事をすることができるので、これをモチベーションに頑張ってくれるパートナーが増えてくれたらと思っているんです」

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03 理想は全員がブラックエプロン

「ブラックエプロン」にはコーポレートロゴと名前が刺繍される。

ブラックエプロン制度の導入とアンバサダーカップ開催によって、かねてからの狙いであった従業員のスキルアップは一定の成果を収めている。
「全国大会では知識だけでなく、接客のロールプレイもするんですが、毎年、全体のレベルが上がってきているなと実感します。もちろん、大会をやって終わり。ブラックエプロンをもらって終わりというのではなくて、その後、それぞれの店舗に戻って実践することが本来の目的ですが、大会では普段のお客様とコミュニケーションを取るなかで培ったものしか現れてこないので、参加者のレベルが上がっているということは、お客様にも良いエクスペリエンスが提供できているのではないかと考えています。また、実際に会場で大会の様子を見て、『自分もコーヒーアンバサダーになりたい』と思ったパートナーも多くいます。そういったモチベーションを上げる部分で裾野を広げる効果もあるようです」

このように、かなり手応えを感じているようだが、スターバックスが目指す地点はもっと高いところにある。
「パートナーのレベルが上がっているのは事実ですが、まだまだ私たちが目標とするレベルには達していないと考えています。だから、この制度をもっと浸透させていって、いずれはパートナー全員がブラックエプロンを着ているようになればいいと思います」

もしかしたら、あと何年かすると、スターバックスのイメージカラーは緑色にプラスして黒色も……ということになっているかもしれない。

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04 全国大会優勝者は様々な仕事を与えられ、様々な世界に触れる

仕事の幅が大きく広がり、フードのプロデュースも担当した。

白沢さんプロデュースの「キャンドルケーキ」はクリスマス限定。

スターバックスでは全国を11エリアに分け、それぞれの地区の代表者による決勝大会、コーヒーアンバサダーカップを毎年開催している。昨年のこの大会で優勝したのは、大分県の店舗でアルバイトをしていた白沢ゆり子さんだった。
「スターバックスで働き始めた頃は、実はあまりコーヒーに詳しくなかったんです。でも、コーヒーの知識を持っていたほうが、お客様や他のパートナーとのコミュニケーションをより深く取ることができるのではないかと思って。それで、ブラックエプロンを目指して勉強をはじめました。私にとっては、アルバイトでも受験できたことが大きかったですね」

そんな白沢さんにとっても、ブラックエプロンは尊敬のまなざしで見つめる存在だった。
「コーヒーの勉強をすればするほど、ブラックエプロンを着けている人のすごさがわかって、カッコいいなと思ってました」

いまや、その立場はガラリと変わったと思うのだが……。
「でも、ブラックエプロンだからといって、緑色のエプロンのパートナーより身分が上というわけではなくて、ただ、コーヒーに対する知識があるってだけなんです。ただ、今年、コーヒーアンバサダーをやらせていただいたことで、これまでは店内だけのコミュニケーションだったのが、外部の方とのコミュニケーションへと数も規模も大きくなりました。ですから、ものすごく世界が広がっているなと感じています」

昨年までは他の従業員と全く変わらなかった彼女の言葉は、モチベーションのアップにつながっていることだろう。

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05 ひとりの優れた人材は数十、数百の優れた人材をつくる足がかりになる

いわば、従業員たちの羨望の対象となるブラックエプロンは他の従業員に対する啓蒙という役割も担っている。
「接客などの業務をするなかで、お客様や他のスタッフにコーヒーに対する知識を伝えたりしています。また、すべてのパートナーにはテイスティングをしてもらっているんですが、やっていくうちに最初は同じように感じていたコーヒーの味の違いがわかるようになってくるんです。そうすると、おもしろくなってくるし、もっと知りたいと思うようになる。そういった、自分で経験したことや感動したことがあればこそ、お客様に同じ感動を伝えることができるんだと思うんです。この最初の感動のきっかけを与えるために、新人と一緒にコーヒーを飲み、その魅力を教えているのがブラックエプロンなんです。当然、この魅力は各パートナーを通じてお客様にも伝わっていくはずです。このように、コーヒーの美味しさと楽しみ方をお客様に提供するために、ブラックエプロンは間接的にも役立てていけると考えています」

ブラックエプロンという制度は優秀な人材を育てる制度であると同時に、優秀な人材を生み出す制度にもなりうる。上昇志向を持ち、勤勉な従業員にチャンスを与え、多くの経験を積ませることで、さらなる成長を図る。そして、その優秀な人材を最前線の店舗に配置し、多くの従業員に触れさせることで各個人のモチベーションアップを促す。そこで刺激を受けた従業員のなかから新たなブラックエプロンが誕生すれば、最良のループのできあがりというわけだ。もちろん、ブラックエプロン保持者のレベルが下がれば、ループはたちどころに崩れてしまう。だからこそ、スターバックスは合格基準を高く設定し、より優れたコーヒーマスターの数を限っているのだろう。

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